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57.主役は遅れてやってくる

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お兄様のご学友から【僕の妹マジ天使】的な話をほぼ毎日一回はしてると聞かされ内心逃げ出したくて仕方なかったが、笑顔で右から左に聞き流してやったわ!
ホント、お兄様勘弁してくれよ。照れるぐらいなら言わんでくれよ。
暴露されたお兄様は頬を赤らめてご学友を止めているが、シアみたいな美少女ならまだしも男が頬染たって気持ち悪いだけだと言いたいが……それでもカッコいいんだからイケメンって得だね。泣きたい。

話すだけ話して言い逃げするように他の人に挨拶するからと去っていった学友を軽く恨めしく睨みながら、助けてもらった恩もあるからか、ため息をついて諦めたようだ。
そんなお兄様を見ながら俺はお兄様には浮いた話がないなと思った。
俺を大事に思ってくれるのはいいが、跡取りなのだからいずれは結婚もするだろうし…なんて考えているとレティーツィアとエミリーがやってきた。お兄様と二人は挨拶し合ってから、お兄様が気を使って席をはずしてくれた。さっきのご学友のところに行くんかな?
レティーツィアは目を輝かせながらお兄様を見ていた。
お前、婚約者居るだろと思ったけど、俺が美少女が目の保養のように面食いの彼女もイケメンが目の保養なんだろう。シアは呆れながらレティーツィアを見た。

「レティは相変わらずですね……」
「エリック様は今日もかっこいんですもの!」
「ご婚約者の方は美形じゃないんですかぁ?」
「マシューは観賞向きじゃないのですわ」

マシューとはレティーツィアの婚約者の名前だ。マシュー自体はレティーツィアを昔から溺愛してるらしいが…俺は年の差を考えるとロリコンに思えて遠い目になってしまうが、貴族では10歳前後の年の差は、よくあることらしい…物心つく前に決められてるのは稀らしいけど。

結婚適齢期が男性は25歳ぐらいで、女性は20までに結婚できないと行き遅れと言われるなんて前世の感覚からすると大分早いと感じる。17歳は俺の中ではまだ未成年って認識が強いけどこの国では成人は17なんだよな。卒業後に開かれる夜会が、日本で言う成人式になるわけだ。変な感じだな。

しかもレティーツィアは学院を卒業したらすぐ結婚らしいから大変だよな。
まあ俺も卒業したら、王妃教育が本格化するらしいので、他人事じゃないけど。

将来のことを考えると少し憂鬱になっていると、シアが偶に周りを気にしていた。
例の気になるお相手を探してるんだろうなー。恋する乙女は最強ですな。
おかげで、ほっこりしてた所で、庭の入り口あたりが騒がしくなったなった。

たぶん主役のご登場だろう。俺達も含め座ってる人たちが一斉に立ち上がり入り口から花道を作るように並ぶ。
こういう時の並び順は上座に近いところから身分の高い順に並ぶのがマナーだ。俺は伯爵と侯爵の間になる。
皆と別れて急いで移動すると、お兄様を見つけて駆け寄る。お兄様はすぐに俺を横に立たせてくれた。目立つ場所取ってくれてるとは流石だ。シアは一番前にいるようだ。まあ王子達と従兄妹だしな。
ライブとかで見るウエーブみたいに入り口から順に頭を下げていく。俺もそれにならって頭を下げた。

人垣の間を数人が歩いてくる足音が徐々に近づいてくる。
俺の前で足跡が少し止まったが、すぐに歩き出して遠のいていった。

「皆、表をあげよ」

品のある声が響き渡り、一様に顔をあげる。前を見ると少し濃い金髪と碧眼の真紅のドレスを着たの美しい女性。その女性の横にジョセフ、反対側に女性と同じ金髪碧眼の少年と少年の横にジョセフと同じ色の金髪と女性と同じ碧眼の少女が立っていた。

真紅のドレスを着てる女性が王妃のヴィクトリア様だろう。その横の少年がレオナルド王子殿下で、あの可愛い幼女がコーデリア王女殿下だな。

「今日は我ら王家主催の茶会へ集まってくれた事、感謝する。第二王子レオナルドと第一王女コーデリアは初の参加となる故、よろしく頼む」

王妃の言葉に皆一斉に礼をする。
そんな俺たちに満足したのか王妃は、「堅くならず楽しむと良い」と声をかけ、専用に用意されていた椅子にコーデリア様とレオナルド様を連れ、腰かけた。
一気に和やかムード……まではいかないが、少し空気が緩んだ人の波をかき分けてジョセフがこっちに向かってきたーーーーーーーが、すぐに挨拶をしに来た人たちに囲まれてしまった。

こういうお茶会は王族に挨拶に行くのもマナーだからな。
まあ仕方ないと落ち着くまで遠目で眺めていようと思ったけど、お兄様に、とってもいい笑顔でジョセフのところまで連れてかれました。チクショウ……。



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