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77.もう一人の転生者

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シアのアメと豊のムチにより無事試験を終え、一週間後に張り出された順位表を見上げる。

ソールクラスは上位20人の狭き門。首位は今回も豊。シアはやっぱり2位。

「今回も勝てませんでしたわ…勉強量増やしましたのに………!」

隣でシアが悔しそうにしてるのを横目に順番に見ていく。
10位にミシェルの名前があり、前回18位だった俺は今回は、なんと15位まで上がっていた。

前回の順位も考えるとソールクラスに上がれるだろうとシアに言われ嬉しかった。
嬉しかったのだが…またしてもそれ以上に驚きが上回って固まってしまった。

7位に…7位にイーノスの名前がある…だと…!?

アイツ勉強できたのか!?ただの非肉屋じゃなかったのか!?
固まってる俺に気付いたシアが視線を辿ってイーノスの順位に気付く。

「あら、イーノス今回だいぶ上位に来てますのね。確か前回も20位ぐらいだったと記憶してますから彼もソールに上がりそうですわね」

マジかよ。本気出したとかそんな感じなのだろうか?
なんで出してなかったんだろ?負けず嫌いな感じはするんだけどな…。だから今回上がってるのか?

首を傾げながらもう一度順位表を見る。
前回はシアとミシェルと俺以外に20位以内で4人ほどあった女性の名前がなくなっている。

これは男性陣が上がったのか、女性陣が下がったのか……
シアが言うには前者の可能性が高いそうだ。

女性は必要最低限頭脳があれば問題ないと言われているのだから、現状に満足し努力を怠った結果、文官を目指しているであろう男性陣が必死に勉強して上がってきたのだろうと推測できるそうだ。

負けず嫌いなら、また必死に勉強して上がってくると言われ、遠回しに俺も怠らず頑張れと言われてる気がしてきたので思わず苦笑いを溢した。






週末、久し振りにジョセフに予定が無いらしく一緒にお茶をしようと王宮に呼ばれた。
久し振りの逢瀬との事でナタリーが腕によりをかけて着飾られ、疲弊した状態で馬車に揺られたから、王宮に着いた時は既にヘトヘトだった。

それでも予定より早く着いてしまったのだから、楽しみにしてたのがバレバレな気がして恥ずかしく感じていると、ジョセフの侍従がやって来て、今は急ぎの仕事をしていて、本来なら予定時間迄に終わらせる予定だったらしく、申し訳無いが待っていて欲しいと伝えられた。

「わかりました。元はと言えば私が早く来すぎた所為ですから、待っております。殿下にはお気になさないでくださいと伝えていただけますか?」

微笑みながら言うと、ジョセフの侍従は恭しく礼をした。

「有難うございます、アンジェリカ様。殿下より、先に温室に御案内するよう仰せつかっておりますので御案内致します」

そう言うと侍従さんは俺を案内するべく歩き出した。
今日は温室でお茶を飲むのか、高貴ぽいなーと考えながら着いていく。

長い廊下を抜け、庭に出る。半年前に王妃が開いたお茶会をした庭を横目に通り過ぎ、大きなガラス張りのドーム型の建物が見えた。
あまりの大きさについ見上げてしまう。シアの家にあった温室も前世の俺の家ぐらいあって、大きいなと思っていたけど、倍以上だ…さすが王宮というべきか。


入り口に着くと自由に歩き回って良いと仰せつかっていると言われたので、ジョセフの侍従と別れ、遠慮なく中を散策し始めた。

色とりどりの鮮やかな花や青々とした葉を着けた生い茂った樹木。

あんまり見慣れない植物などもあって結構楽しいかも!
さっむい寒気期間(冬)とは思えない、暖気期間(春)のような暖かさで眠くなりそうだ。お昼寝したら絶対気持ちいい!

道に沿って歩いていると開けた場所に出た。
右側に小上がりのウッドデッキがあり、デッキの上に立派なテーブルセットがあった。
少し上から見渡せる用になっているのだろう。
多分此処で今日はお茶するんだろうなとウッドデッキに上ると、何処からか歌声が聞こえてきた。

気になった俺は聞こえてくる方向へ向かってみる事にした。
小さく聞こえる歌声を頼りに道を外れ木々の隙間を縫うように歩く。
近づくにつれ、歌詞が聞き取れるようになってきて、その歌声に俺は立ち止まった。

聞いた事はない歌だ。でもその歌は明らかに日本語だった。

ドクンと大きく脈が打つ。
豊以外にも転生してきた奴がいたのか。
早鐘を打つ胸を押さえながら静かにゆっくり近づく。

少し開けた場所が見え木の陰から覗くと、おそらくは水やりの為の溜池だと思わしき場所があった。
こちら側に背を向け水辺に座ってる人影を見つけた。

アイツが元日本人!?小柄だが髪が短いしたぶん男だよな。
後姿で見えないから少し回りこもうと一歩踏み出したら枝を踏んでしまった。
ポキっと思った以上に響いて歌声がやんで歌っていた男が振り向いた。

「誰かいるの?」

目と目が合って、ごくりと鍔を飲み込む。
少し濃い金髪に碧眼。少し幼いけどジョセフによく似た顔。

「……レオナルド殿下…」


そこにいたの第二王子レオナルド・ウィル・リカルド王子殿下だった。





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