上 下
41 / 42
第3章

41話

しおりを挟む
 数時間後、目が覚めたカラミティは、自分が強くなっている事を実感できた。
 こんなことは数ヶ月ぶりであった。
 それもそのはずで、いまや魔の森に住んでいる魔物は、同じAランクであってもカラミティからすれば格下であった。
 今のカラミティはSランクに近いAランクであり、魔の森に住んでいるAランクの魔物はどちらかといえばBランクに近かった。
 そんな魔物の魔石を食らったところで、カラミティからすれば得られる力は微々たるものでしかないのも当然であった。
 それに対し、ここにいるべへモスはカラミティと同等と言えるほどの力を持っている。
 だからこそ、力を増したことが実感で来たことが、本当に久しぶりであった。

 これでようやくセフィロトに対抗できるかもしれない。

 停滞していたカラミティは、壁を乗り越えることができ、そう考えた。
 問題は、ここにいるべへモスを全て食べ尽くした時、どれほどの力を得られるか、だった。
 今は実感できるほどの力を得られるが、このまま強くなっていけば相対的に得られる力が少なく感じる事になるのは間違いない。
 全てを食べ尽くした時、どこまでセフィロトに迫っているだろうか。

 そんな事を考えたが、全てを食べ尽くした時にどれほどの力を得ているかなど予想できるはずがなく早々に考えを放棄した。
 それよりも、他のべへモスを倒すことが重要だと考えを改めた。

 今回の作戦はうまくいった。
 なら、しばらくはこの方法で、他のべへモスも倒していこう。

 そう思い、場所を移動して、同じ仕掛けを施していく。
 この作戦は、なかなか上手くハマり、へべモスを狩る事に成功した。
 たまにだが、同時に2体以上が来た時があったが、その時はその仕掛けを放棄して逃げ出した。
 流石に、べへモスを2体以上を同時に相手にして、勝てるとは思わなかったからだ。
 それでも順調に狩りを成功させていき、力を蓄えていった。

 時間は流れ、1ヶ月が経ちべへモスを狩った数が10体を超えたところで、様子が変わった。
 魔鉱石の仕掛けを作っても、なかなかべへモスがやってくることがなくなり、来たとしても2体以上であった。
 どうやら、べへモスたちは、カラミティが仕掛けた罠に対し、警戒しているようだった。
 それも仕方ない。
 この仕掛けによって、10体以上の仲間がいなくなっているのだ。
 警戒しない方がおかしい。
 どうしていなくなったのかわからずとも、1体だけで餌である魔鉱石を取りに行っていなくなっているのがわかっているのであれば、魔鉱石を取る場合は1体だけでなく、2体以上で取りに行かせればいい、と考えたのだ。
 その考えは正しい。
 今のカラミティは、力を増したとはいえ2体以上のべへモスを相手にするのは難しい。
 実力だけで考えれば、2体同時に相手にしても勝てる確率は5割以上はあるだろう。
 だが、勝てないと判断したべへモスたちが、逃げるか仲間を呼ぶ行動をとった場合、カラミティの勝率は激減する。
 2体同時に逃げ出した場合、1体が残りもう1体が仲間を呼びに行った場合のどちらでも、結果は同じだ。
 1体は倒せても、もう1体は逃してしまう。
 そうなれば、べへモスたちにカラミティの存在がばれる事になる。
 その後べへモスたちがどういう行動をとるかはわからないが、今までのように狩ることはできなくなるのは間違いないだろう。
 故に、カラミティは、この作戦はここまで、と放棄する事を決めた。
 そうなると、これからどうやってべへモスを狩るのかが問題だ。
 真っ正面から向かうとしたら、1体だけならば勝てるが、2体だと5割くらい、3体以上だと1割以下だろう。
 できれば1体の時を狙いたいが、今までの様子でそれは無理だとわかっている。
 ならば、2体の時を狙いたいところだが、1体も逃さないようしなければならない。
 そうなると、難易度が上がる。
 さて、どうしたものか、と考えるが、なかなか思い浮かばない。

 仕方ない。気分転換にワイバーンの様子を見にいくか。

 カラミティは、1ヶ月ぶりにあったワイバーンを見て、軽く驚いた。
 なぜならば、久しぶりに見たワイバーンは1回り以上大きくなり、成体と変わらないほどとなっていた。
 しかも、感じ取った強さも成体に迫るほど、つまりAランクの強さを持っていたのであった。
 それほどの成長をしたにもかかわらず、ワイバーンはカラミティを見つけると、カラミティに近寄り頭をこすりつけていた。
 このわずかひと月で、何があったのかカラミティはわからなかったが、今のワイバーンを見て、べへモスの足止めくらいならばできそうだと感じた。
 問題は、ワイバーンをどう使うかだ。
 下手に使えば、殺されてしまう。
 カラミティは、この懐いているワイバーンをむやみに死なすような真似をしたくはない。
 だから、ワイバーンが死ぬリスクが少ない方法を懸命に考える。
 だが、思いつくものは一つだけだった。
 他にいい方法がないかと考えたが、思いつかない。
 なら、その方法で一番うまくいくように作戦を考えるしかない。
 そのためには。

 カラミティは体を小さくして、ワイバーンの頭に乗ると尻尾でペシペシと叩く。
 そうすると、ワイバーンは羽を動かし、空へと舞った。
 空へと舞うと、カラミティはワイバーンに指示を出し、べへモスの巣を上空から眺めた。
 かなりの高さを飛んでいるはずなのだが、べへモスの中にはカラミティたちに気づき威圧をかけるものがいた。
 すると、ワイバーンは羽ばたきを増し、急いでその場を移動する。
 強くなったとはいえ、まだべへモスは脅威なようだ。
 それでも、以前は近寄ることができなかった事を考えれば、十分に強くなっている。
 しばらくべへモスの巣の上を飛んでいたが、カラミティは満足したのか、元にいた場所へ帰る指示を出し、地上へと降りる。

 地形は大体わかった。
 あとは、うまく2体だけのべへモスを引っ張り込むことができるか、だ。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

傭兵アルバの放浪記

有馬円
ファンタジー
変わり者の傭兵アルバ、誰も詳しくはこの人間のことを知りません。 アルバはずーっと傭兵で生きてきました。 あんまり考えたこともありません。 でも何をしても何をされても生き残ることが人生の目標です。 ただそれだけですがアルバはそれなりに必死に生きています。 そんな人生の一幕

テイムしたトカゲに魔石を与え続けるとドラゴンになりました。

暁 とと
ファンタジー
テイムしたトカゲはドラゴンになる

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

愛しのお姉様(悪役令嬢)を守る為、ぽっちゃり双子は暗躍する

清澄 セイ
ファンタジー
エトワナ公爵家に生を受けたぽっちゃり双子のケイティベルとルシフォードは、八つ歳の離れた姉・リリアンナのことが大嫌い、というよりも怖くて仕方がなかった。悪役令嬢と言われ、両親からも周囲からも愛情をもらえず、彼女は常にひとりぼっち。溢れんばかりの愛情に包まれて育った双子とは、天と地の差があった。 たった十歳でその生を終えることとなった二人は、死の直前リリアンナが自分達を助けようと命を投げ出した瞬間を目にする。 神の気まぐれにより時を逆行した二人は、今度は姉を好きになり協力して三人で生き残ろうと決意する。 悪役令嬢で嫌われ者のリリアンナを人気者にすべく、愛らしいぽっちゃりボディを武器に、二人で力を合わせて暗躍するのだった。

転生?いいえ。天声です!

Ryoha
ファンタジー
天野セイは気がつくと雲の上にいた。 あー、死んだのかな? そう心の中で呟くと、ケイと名乗る少年のような何かが、セイの呟きを肯定するように死んだことを告げる。 ケイいわく、わたしは異世界に転生する事になり、同行者と一緒に旅をすることになるようだ。セイは「なんでも一つ願いを叶える」という報酬に期待をしながら転生する。 ケイが最後に残した 「向こうに行ったら身体はなくなっちゃうけど心配しないでね」 という言葉に不穏を感じながら……。 カクヨム様にて先行掲載しています。続きが気になる方はそちらもどうぞ。

異世界でホワイトな飲食店経営を

視世陽木
ファンタジー
 定食屋チェーン店で雇われ店長をしていた飯田譲治(イイダ ジョウジ)は、気がついたら真っ白な世界に立っていた。  彼の最後の記憶は、連勤に連勤を重ねてふらふらになりながら帰宅し、赤信号に気づかずに道路に飛び出し、トラックに轢かれて亡くなったというもの。  彼が置かれた状況を説明するためにスタンバイしていた女神様を思いっきり無視しながら、1人考察を進める譲治。 しまいには女神様を泣かせてしまい、十分な説明もないままに異世界に転移させられてしまった!  ブラック企業で酷使されながら、それでも料理が大好きでいつかは自分の店を開きたいと夢見ていた彼は、はたして異世界でどんな生活を送るのか!?  異世界物のテンプレと超ご都合主義を盛り沢山に、ちょいちょい社会風刺を入れながらお送りする異世界定食屋経営物語。はたしてジョージはホワイトな飲食店を経営できるのか!? ● 異世界テンプレと超ご都合主義で話が進むので、苦手な方や飽きてきた方には合わないかもしれません。 ● かつて作者もブラック飲食店で店長をしていました。 ● 基本的にはおふざけ多め、たまにシリアス。 ● 残酷な描写や性的な描写はほとんどありませんが、後々死者は出ます。

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

処理中です...