31 / 42
第2章
31話
しおりを挟む
それから月日は流れ3ヶ月近く経とうとしている。
リリィたちは、10日に一度魔の森の調査をし、それ以外の日は従魔たちの強化に勤しんでいた。
コボルトのアイギスとイージスは、報酬のお金で装備を整え、ジェフやアンリが稽古をつけるなどをして。
最初の頃は、まともな稽古にすらならなかったが、魔石を与え力をつけていき、いまではなんとか様にはなるようにはなった。
カラミティも強くなるために魔物を狩っていたが、力がついたと感じるほどの魔物となると、そう簡単には見つからない。
ギリギリBランクならば、カラミティも力がついたと感じるが、それ以下のランクとなると、微々たる程度にしか感じられなくなった。
そのため、積極的にカラミティはAランクを狙っていた。
魔の森に住んでいるAランクの魔物は、グリフォンの他には、一つ目巨人のサイクロプス、空飛ぶトカゲのワイバーン、いくつもの首を持つ大蛇のヒュドラ、動く巨木のエルダートレントあたりだ。
しかし、いくら魔の森といえど、Aランクの魔物の数は多くない。
ほとんどが単独でいる。
たまに群れているのもいるが、そういうのは大概番となっていて、流石にカラミティもAランクの魔物を一度に複数も相手にする気はなく、別れて行動した時を狙って襲っていた。
たまに、途中で気づかれてしまう時があるが、そういう時はさっさと退いてしまう。
そうすると、相手は深追いをしてくることはなく、塒に引き返してしまうからだ。
多分、下手に深追いをすれば、少なくない被害を追うことを理解しているためだろう。
仮に、カラミティを殺そうと深追いをすれば、カラミティは死に物狂いの反撃を行うことは間違いない。
そうなれば両者とも大怪我を負うことになるだろうし、下手をすれば、狙い目だと判断して他の魔物に襲われるかもしれない。
だから、Aランクの魔物たちは互いの縄張りを侵すことはせず、争わずにいた。
それを考えると、カラミティの行動は異常と言える。
普通ならば、他のAランクの魔物ように、争わない領域である縄張りを決めるのに、カラミティは、そんなもの関係ないとばかりに、侵入し襲っている。
それは、ここにはさらなる強者がいるため、対抗するための力を得るためなのだが、そもそもそれがおかしいのである。
他の魔物であれば、自分より強者がいる場合は、従順な態度を示すか、こっそりと住み着くものなのだが、カラミティは端から楯突く事しか頭にないようにしか見えない。
だが、運良くカラミティは、その強者から狙われる事なく着実に力をつけていた。
Aランクの下位程度なら、2匹同時に相手にしても勝てるほどの力を。
それほどの力をつけたカラミティだが、まだ満足できず新たな獲物を探して森の中を歩いていた。
カラミティは、魔の森のほとんどの地形を把握しており、それ故にどこに魔物が住んでいるのかもだいたい把握できるようになっていた。
今日はどいつを獲物にしようかと考え、今日はサイクロプスにしようと決めて、そいつがいる場所めがけて歩き始める。
だが、カラミティの歩みは、まっすぐではない。
上空から見ていればわかるが、弧を描くようにして歩いていた。
それは、危険な場所を避けているように見えた。
事実、カラミティは意識してそういう風に歩いていた。
カラミティが避けているのは、魔の森の中心部分であった。
そこに強者がいる事を本能的に悟っていたためであった。
しばらく進み、もう少しでサイクロプスの住処にたどり着きそうになった時、カラミティは世界が歪んだと感じた。
だが、実際には世界は歪んではおらず、いつも通りであった。
ではなぜ、そのように感じたのかというと、今までに感じたことのないプレッシャーを感じ取り、その影響で意識が揺らぎ、世界が歪んだように見えたのだ。
そのプレッシャーは魔の森の中に止まらず、周辺にまで影響を及ぼした。
その影響は凄まじく、意識を保てたのはAランクの魔物だけであり、Bランクの魔物は気をうしない、Cランク以下の魔物は命を落とす事となった。
ギルドマスターのディアナの命で、魔の森の封鎖、監視をしていたものたちがいたが、そのものたちは魔の森からかなり離れていたため運良く助かったものの、強烈なプレッシャーに耐えきれず気絶するものが続出した。
なんとか意識を保っていたものは、気を失ったものを運び出す者とギルドに報告するものに別れて行動した。
数時間後ディアナは、その報告を聞くと深いため息をついた。
「動いて、しまったのねぇ」
「マスター、どうなさるつもりですか?」
「そうねぇ。まずはぁ、町長と領主様に使いを出してちょうだい」
「はい。わかりました」
「あとはぁ、緊急依頼を出してちょうだいねぇ」
「わかりました。では、失礼します」
報告をしにきた職員は、慌てて部屋を出て行く。
それを見送ると、ディアナは再びため息をついた。
「もしかしたら、とは思っていたけどぉ、本当に主が動くなんてねぇ。緊急依頼を出したけど、無駄よねぇ。軍を動かしたとしても意味はないしぃ、こうなったら、カラミティがどうにしかしてくれるのを祈るしかないわぁ」
そういうと、ディアナは考え込む。
「ん~、一応、あの子には伝えた方がいいのかしらぁ。名前はなんといったからしらぁ?確かぁ、リリィ、だったかしら?そうなると、灼熱の剣にも伝える必要も出てくるわねぇ。まあ、大して変わらないわねぇ」
リリィたちは、10日に一度魔の森の調査をし、それ以外の日は従魔たちの強化に勤しんでいた。
コボルトのアイギスとイージスは、報酬のお金で装備を整え、ジェフやアンリが稽古をつけるなどをして。
最初の頃は、まともな稽古にすらならなかったが、魔石を与え力をつけていき、いまではなんとか様にはなるようにはなった。
カラミティも強くなるために魔物を狩っていたが、力がついたと感じるほどの魔物となると、そう簡単には見つからない。
ギリギリBランクならば、カラミティも力がついたと感じるが、それ以下のランクとなると、微々たる程度にしか感じられなくなった。
そのため、積極的にカラミティはAランクを狙っていた。
魔の森に住んでいるAランクの魔物は、グリフォンの他には、一つ目巨人のサイクロプス、空飛ぶトカゲのワイバーン、いくつもの首を持つ大蛇のヒュドラ、動く巨木のエルダートレントあたりだ。
しかし、いくら魔の森といえど、Aランクの魔物の数は多くない。
ほとんどが単独でいる。
たまに群れているのもいるが、そういうのは大概番となっていて、流石にカラミティもAランクの魔物を一度に複数も相手にする気はなく、別れて行動した時を狙って襲っていた。
たまに、途中で気づかれてしまう時があるが、そういう時はさっさと退いてしまう。
そうすると、相手は深追いをしてくることはなく、塒に引き返してしまうからだ。
多分、下手に深追いをすれば、少なくない被害を追うことを理解しているためだろう。
仮に、カラミティを殺そうと深追いをすれば、カラミティは死に物狂いの反撃を行うことは間違いない。
そうなれば両者とも大怪我を負うことになるだろうし、下手をすれば、狙い目だと判断して他の魔物に襲われるかもしれない。
だから、Aランクの魔物たちは互いの縄張りを侵すことはせず、争わずにいた。
それを考えると、カラミティの行動は異常と言える。
普通ならば、他のAランクの魔物ように、争わない領域である縄張りを決めるのに、カラミティは、そんなもの関係ないとばかりに、侵入し襲っている。
それは、ここにはさらなる強者がいるため、対抗するための力を得るためなのだが、そもそもそれがおかしいのである。
他の魔物であれば、自分より強者がいる場合は、従順な態度を示すか、こっそりと住み着くものなのだが、カラミティは端から楯突く事しか頭にないようにしか見えない。
だが、運良くカラミティは、その強者から狙われる事なく着実に力をつけていた。
Aランクの下位程度なら、2匹同時に相手にしても勝てるほどの力を。
それほどの力をつけたカラミティだが、まだ満足できず新たな獲物を探して森の中を歩いていた。
カラミティは、魔の森のほとんどの地形を把握しており、それ故にどこに魔物が住んでいるのかもだいたい把握できるようになっていた。
今日はどいつを獲物にしようかと考え、今日はサイクロプスにしようと決めて、そいつがいる場所めがけて歩き始める。
だが、カラミティの歩みは、まっすぐではない。
上空から見ていればわかるが、弧を描くようにして歩いていた。
それは、危険な場所を避けているように見えた。
事実、カラミティは意識してそういう風に歩いていた。
カラミティが避けているのは、魔の森の中心部分であった。
そこに強者がいる事を本能的に悟っていたためであった。
しばらく進み、もう少しでサイクロプスの住処にたどり着きそうになった時、カラミティは世界が歪んだと感じた。
だが、実際には世界は歪んではおらず、いつも通りであった。
ではなぜ、そのように感じたのかというと、今までに感じたことのないプレッシャーを感じ取り、その影響で意識が揺らぎ、世界が歪んだように見えたのだ。
そのプレッシャーは魔の森の中に止まらず、周辺にまで影響を及ぼした。
その影響は凄まじく、意識を保てたのはAランクの魔物だけであり、Bランクの魔物は気をうしない、Cランク以下の魔物は命を落とす事となった。
ギルドマスターのディアナの命で、魔の森の封鎖、監視をしていたものたちがいたが、そのものたちは魔の森からかなり離れていたため運良く助かったものの、強烈なプレッシャーに耐えきれず気絶するものが続出した。
なんとか意識を保っていたものは、気を失ったものを運び出す者とギルドに報告するものに別れて行動した。
数時間後ディアナは、その報告を聞くと深いため息をついた。
「動いて、しまったのねぇ」
「マスター、どうなさるつもりですか?」
「そうねぇ。まずはぁ、町長と領主様に使いを出してちょうだい」
「はい。わかりました」
「あとはぁ、緊急依頼を出してちょうだいねぇ」
「わかりました。では、失礼します」
報告をしにきた職員は、慌てて部屋を出て行く。
それを見送ると、ディアナは再びため息をついた。
「もしかしたら、とは思っていたけどぉ、本当に主が動くなんてねぇ。緊急依頼を出したけど、無駄よねぇ。軍を動かしたとしても意味はないしぃ、こうなったら、カラミティがどうにしかしてくれるのを祈るしかないわぁ」
そういうと、ディアナは考え込む。
「ん~、一応、あの子には伝えた方がいいのかしらぁ。名前はなんといったからしらぁ?確かぁ、リリィ、だったかしら?そうなると、灼熱の剣にも伝える必要も出てくるわねぇ。まあ、大して変わらないわねぇ」
0
お気に入りに追加
1,608
あなたにおすすめの小説
ボッチはハズレスキル『状態異常倍加』の使い手
Outlook!
ファンタジー
経緯は朝活動始まる一分前、それは突然起こった。床が突如、眩い光が輝き始め、輝きが膨大になった瞬間、俺を含めて30人のクラスメイト達がどこか知らない所に寝かされていた。
俺達はその後、いかにも王様っぽいひとに出会い、「七つの剣を探してほしい」と言われた。皆最初は否定してたが、俺はこの世界に残りたいがために今まで閉じていた口を開いた。
そしてステータスを確認するときに、俺は驚愕する他なかった。
理由は簡単、皆の授かった固有スキルには強スキルがあるのに対して、俺が授かったのはバットスキルにも程がある、状態異常倍加だったからだ。
※不定期更新です。ゆっくりと投稿していこうと思いますので、どうかよろしくお願いします。
カクヨム、小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる