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第1章

2話

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 あれから日が経ち、トカゲは50cmを超える大きさへとなっていた。
 今では、スライムは完全にトカゲの捕食対象でしかなくなっていて、1日に1匹から2匹食すようになっていた。
 ここまで成長したトカゲは、この草原の覇者かというとそうでもない。
 この草原には他の生物もおり、油断すれば自分が捕食される側へとなることがわかっていた。
 現に今、トカゲの前には2m近い蛇がいて、その蛇はトカゲと同じかそれよりも大きいと思われるアリを飲み込んでいた。
 さらに、その蛇をめがけて空から鳥が降下している。
 トカゲは草陰に隠れているため、鳥から見つかってはいないが、もし狙われていれば、なす術なく餌食とされていたことだろう。
 トカゲはゆっくりと後ずさりをし、その場から離れていく。

 トカゲは実感した。
 もっと強くならなければ、と。
 そのために出来ることは、強者から離れ、弱者を喰らっていくこと。
 まずは、その弱者たるスライムを喰らおうと、歩き出す。
 どれ程歩いただろうか。
 探し求めていたスライムを見つけ、喰らおうと走り出した瞬間、危険を察知し、動きを止める。
 すると、スライムのいた方から巨大なものが現れる。
 トカゲは知らなかったが、それは人と呼ばれる生き物で、剣や鎧をまとっていた。
 現れた人は、スライムを踏み潰し、トカゲが逃げ出した蛇に対し、剣を振るい首を撥ねる。
 それを見たトカゲは、絶対に勝てない圧倒的強者に見えた。
 しかも、一人ではなく四人もいたのだから、トカゲにとってどれほどの絶望的な状況だったか。
 トカゲはすぐさま、尻尾を巻いてなりふり構わずその場から離れていく。
 その際音を立ててしまったが、どうやら追ってくる気配はない。
 安堵したトカゲは、この生物がどこへ向かうのか気になり、離れて後を追うことにした。





「全く、メンドくせえな。せめて獣道くらいあればもう少し楽に歩けるのによ」

 そんなことを言っているのは、先程トカゲが見た4人の内、先頭に立っていた者だ。
 その人物は男で、革の鎧に鉄製の盾、そして剣を持った戦士職と思われる。
 その後ろにいるのは同じく革の鎧を身につけ、手にしているのは槍の女で、こちらも戦士職だろう。
 残る二人は、ローブを纏い杖を手にしている者と、布の服に胸当てをつけて弓を持った者だ。
 前者は魔法職、後者は弓使いと言ったところだろう。
 先頭に立っていた戦士に答えたのはローブを纏っていた者だ。

「仕方がありませんよ。ここは滅多に人はこないようですし、大型の魔物もいないみたいですからね」

「今んところ出会ったのはスライムに、蛇。それを狙う鳥くらいか。こんなもん倒しても、子供の小遣いにすらならんな」

「ですね。だから、人も滅多にこないのでしょう」

「ホンットに、貧乏くじを引いちまったかもな。こんな様子だと、この先にある森も大したことないかもな」

「一応、分かる範囲で調べましたが、鹿や猪といった動物に、スライムやゴブリンといった弱い魔物しかいないようですよ」

「マジかよ!? これは本当についてないな。あ~あ、やる気がでねぇな」

「まあ、依頼料が高めだったことが唯一の救いですね」

「全くだ。これで依頼料も低かったら誰も受けなかっただろうよ」

「全くです」

 そこで会話が終わり、しばらく無言で進んでいく。
 が、一番後ろにいた弓使いが後ろを振り返る。

「どうしたんですか?」

 そのことに気づいたローブのものが声をかける。

「何かが後をつけている」

 弓使いがそう答えると、他の3人が戦闘態勢になる。
 しかし、弓使いは手を振ってやめさせる。

「問題ない。気配からすると、小型の生き物が1匹だけだ。大した脅威ではない。それに、距離も離れている。仮に襲ってきても、十分に間に合う」

「そうか。なら大丈夫そうだな。しかし、なんで後をつけてきているんだ?」

「偶々同じ場所に向かっているだけだろう。他に仲間もいないようだなしな」

「なるほどなぁ。しかし、そいつ頭悪いな。俺だったら他の場所に向かうぞ」

「だからだ。その程度の相手なら、問題にならない」

「確かにな。とはいえ、一応注意してくれよ」

「わかっている。向かってくるようならすぐに言う」

「ならいいさ」

 再び彼等は歩き出す。




 一度立ち止まった時は、襲ってくるのかと不安になったが、再び歩き出したので安心した。
 そのまま追って日がだいぶ傾いた頃、人族たちが草原を抜けたのを見届けるとトカゲは身を翻す。

 どうやら、アレらはここに住み着くわけではなさそうだ。
 それならば、問題はない。
 しかし、もう少しで暗くなる。
 今日はもう寝てしまおう。

 そう思い、トカゲは近くで身を隠す場所を探し出し、そこに身を潜めて眠りにつく。
 翌日、目を覚ますと、トカゲはすぐさま移動を始め、獲物のスライムを探し始める。

 昨日は獲物にありつけなかったから、その分今日はたくさん食べるぞ。

 そんな思いが、叶ったのか、すぐさまスライムを見つけることができた。
 どうやら幸先の良い日、となりそうだ。
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