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アフタヌーンティーな日々
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けたたましいベル音で目覚めれば、いつも通り、ひとりきりだった。
無職となってからも、なるべく生活リズムを崩さないため、アラームは七時にセットしている。
昨夜の出来事が「夢」ではないということは、少し怠さが残る身体と、テーブルの上に積み上げられたお土産が示している。
化粧も落とさず、シャワーも浴びずに行為に至った事は、直視しないよう頭の片隅に追いやった。
彼については、彼自身が語った以上のことはわからない。
年齢も職業も、名前さえも本当かどうかわからない。
それでも、昨夜のことを後悔する気持ちにはならなかった。
お互い、愛情なんて大層なものは抱いていない。
ちょっとした好意とタイミングが合って、そういう流れになっただけのこと。
この先付き合うとか、付き合わないとか、そんなことを考えるまでもない関係だ。
(甘い夢からは、もう醒めないと……)
事実を都合よく捻じ曲げてしまわないよう自分に言い聞かせ、ポストに入れられていた部屋の鍵を取り上げる。
ミネラルウォーターを一本飲み干してから、シャワーを浴びた。
身体じゅうに散っている昨夜の名残には赤面してしまったが、濡れた髪を拭いながら見た鏡に映る顔は、ちょっと瞼が腫れているくらいで思ったほど悲惨なことにはなっていない。
ゆっくりと時間をかけて朝食を取り、掃除、洗濯を終えて、ふとテーブルの上、オレンジ色の小さなカバのぬいぐるみの下に、小さなメモ用紙を見つけた。
『都合のいい時間に来い』
そう書かれたメモには、住所と店名らしきものだけが記されていた。
街の中心部からは少し外れているが、住宅街ではない。
(もしや……事務所?)
サングラスに黒スーツの男たちが出入りする様子が脳裏に浮かんだが、たとえカモフラージュだとしても、『Salon de U.K』なんて横文字の名前は似つかわしくない気がする。
(ま、どうせ暇なんだから、行ってみても……)
一番大きなリスクを冒してしまったいま、見知らぬ場所を訪ねるのはちょっとした好奇心を満たす程度の冒険でしかなかった。
さほど多くはないワードローブの中から、ベージュのセットアップを選ぶ。
ノースリーブのブラウスにフレアのロングスカート。バランスを考え、髪を上げかけて、首筋にあるものに気づき慌てて下ろした。
(見える場所につけないでよっ!)
キスマークは、所有欲や独占欲の表れらしいが、無邪気に喜べるような関係ではないし、二度目があると約束された関係でもない。
でも、と思う。
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