心の穴を埋めようとする高校生の話(仮)

端入 ちさこ

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HR終わりの隙間時間2

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佐々木は自分の席に戻ると、さっきの不穏な様子はなんだったのかと思うぐらい普段の佐々木に戻って女子とワイワイしている。

佐々木に話しかけている立華はクラス男子一番人気の女子で、チョコレートのような茶髪を背中中央まで伸ばし、ふっくらとした胸が——いかにも主張したげに——盛り上がっている。
ソフトボール部に所属していて、引き締まった体つきはスポーツ少女らしくたくましさがあり、日ごろの練習で焼けた麦色の肌と真っ白な夏用セーラー服との眩しいコントラストが眼にやきつく。

性格も活動的で、自信がみなぎっていることが伝わる元気いっぱいの溌溂系美少女といった感じだろうか。

今も佐々木の机に無造作に尻を乗っけて、能天気にダラダラ笑っている。

————なるほど。これはたしかにモテる。

実際立華は一年生のころから学年の評判で、あの美貌に惚れ込んだ男子は数少なくなかった。

あまり色恋沙汰に詳しくないから知らないが、聞いた話では告白してきた何人かと付き合っていたようである。
だがこれも聞いた話では、どれも長続きしなかったようだ。

告白した男子が飽きたのか、立華が相手に魅力を感じられなかったのかはわからないけれども、仮に好きでもない人と何度も恋人になるというのなら、モテる人間もそれはそれで大変だなと僕は勝手に納得した。


——キーンコーンカーンコーン

ガラガラガラ。

「ほーい、はじめるよー」

禿面の綿貫が、ポッコリ肥えた腹をぶよぶよ揺らして入ってきた。

静岡があからさまに嫌そうな顔をする。

綿貫の一言が聞こえても、多くの生徒はまだ喋りやめずにキャッキャしている。
これは生徒たちが「ナメていい」教師と「ナメてはいけない」教師を無意識に区別して、その区別ごとに対応の仕方を変えるからであり、残念ながら綿貫は「ナメていい」ほうのカテゴリーに含まれている。

「はい、はい、授業するぞ!はよ座れっ!」

だから綿貫は——自分ではそれに気づくことができずに——他の教師が一言で済ませられるようなことを、何度も大声を張り上げて大げさに手をバンバン叩いて、やっとかっと成し遂げるはめになるのだ。

それでも言うことを聞かない生徒はいるもので、たとえば例の溌溂系美少女は佐々木の机に居座ったまま文句を垂れる。

「えーせんせー、来るの早すぎー」

「早くないだろ。チャイム鳴ってんだから。お前もはよ座れっ」

綿貫が教科書を丸めて溌溂系美少女の頭をポコんとはたく。

「いやあ~~暴力はんたい~」
「あ~Twitterにあげられるやつ~」

周りの女子も美少女の肩を持つ。

「さあ、あと何回たたけば自分の席に戻ってくれるかな!」
「虐待きょうし―!」

「……まあまあ、立華もそろそろ戻って授業しよ。理科好きじゃん、ねっ?」

机を占領されていた佐々木が苦そうに微笑んで、立華に諭す。

「うーん、じゃあまた後で続きね」

そう言って溌溂系美少女はすたすた自分の席に戻っていった。

すごい。
たった一言であのかまって猫ちゃんを手なずけてしまうのだから、佐々木の女子捌きは流石というしかない。高校でも何度も告白されたようだが、中学までにもたくさんの女子を相手にしてきたのだろうな。

まあスポーツができて勉強もそれなりにできて活動的な性格で、しかも顔もけっこうイケてるほうだから、それで女子から好かれないわけないか。

立華にしろ佐々木にしろ自分に自信を持っているような人たちは、ちょうどいい押し引き加減が感覚的にわかるのだろう————
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