【改訂版】ダンジョンと株式会社 ~目指せビリオネイヤー(1千億円長者)私たちはこの会社で世界を取る~

早坂明

文字の大きさ
上 下
1 / 23

1.プロローグ

しおりを挟む
●5月2日 自宅 水沢健司

 昨日、全世界に『門』が出現した。
 『門』は3次元的にはありえない存在であり、そこには地下、ダンジョンへと続く通路があった。
 水沢健司は、友人の伊吹吾郎、橋口清美とともに自宅に現れたダンジョンに潜り、その秘密の一端を見つけることができた。
 今日は朝から3人で集まり、ダンジョンの秘密をどう扱うかを相談するのであった。


「それで、お前さんらはダンジョンの秘密のことを、どうするつもりじゃ?」
「やっぱり、人に知られないよう隠すしかないのかしら?」
 伊吹の質問に、清美も首をかしげながらつぶやく。

 その二人に対して、水沢ははっきりと反論する。
「いえ、私は逆に積極的に開示すべきだと思います」

「でも、開示するといってもどうやってするつもりなの? 下手に発表すると大騒ぎになると思うけど……」

 清美の質問にうなずきながら、水沢が答える。
「会社を作りましょう。ダンジョンを利用したサービスを提供するための会社です」

 伊吹は、水沢の意見に同意する。
「なるほど、会社が出来てからなら、騒ぎになるのはむしろ望むところという訳か。なにしろ、無料で会社の宣伝をしてもらえる訳じゃからな」

 水沢も、伊吹の意見を補足するように話を続ける。
「ええ、それに受け皿となる会社が存在すれば、騒ぎにはなっても暴動にはならないでしょうしね」

「でも、開示すれば利益を独占することはできないわよ」
 清美の指摘に、伊吹も同意する。
「うむ、情報を開示した時点で、他社も参入してくるのは間違いない」

 水沢は二人の指摘に対して、情報を開示した方がよいと考える理由を説明した。
「まあ、それは当然でしょうね。ただ、知識を独占しても、小さなパイを独占するだけで大儲けできる訳ではありません。どれほど頑張ってっても、せいぜい数億円程度でしょう。なにしろ、情報を漏らさないようにするため、顧客を大々的に集めることができないのですからね」

「一方、開示した場合、全世界が対象です。市場規模がどれだけになるのか、想像もつきません。最低でも数兆円、いえそれ以上の桁になるでしょう」

 水沢の説明に納得したという風に清美と伊吹がつぶやく。
「せいぜい数億円の小銭を相手にするのか、それとも数兆円規模の大海原に乗り出すのか……結論は考えるまでもないわね」
「まあ、失敗しても先行者利益もある。最悪会社を売り払えば、数億円程度の小銭は手に入るじゃろうしな」

 ゲームの情報に詳しい清美が、同好の水沢と2人で、ゲームのダンジョンとの比較で盛り上がる。
 ちなみに、伊吹はゲームやネット小説の知識は全くないため完全に置いてきぼりである。
「それにしても、ダンジョンに潜るのに会社を作るとは思わなかったわ。ゲームだと、パーティとかギルドとかの集まりでダンジョンの攻略を進めるのにね」

 そう言う清美の意見に、水沢は現実の面から説明を行った。
「ゲームならともかく現実ではお金がないと生きてはいけませんし、中世ならともかく現代ではお金には税金が必ず絡んできます。そういう意味では、パーティを現代風に言えば、個人事業主の集まりか小規模な会社でしょう。会社と個人事業主の集まりの違いは、怪我などの負担を個人に任せるのか、チーム全体でサポートするのかでしょうね」

「そういう言い方でいけは、ギルドは小規模から中規模な会社になるのか……。確かに、ゲーム内でも冒険者ギルドともなれば人材派遣会社そのものけれど、何かロマンがないわね」
 清美の感想に、水沢は肩をすくめながら答える。
「ダンジョンに潜るのは趣味、お金が掛かることはあっても儲かることはないと割り切れるなら、ゲームのようなパーティ制でも問題はありませんよ。だた、ダンジョンで一攫千金を夢見たり、成り上がりを夢見る人には向いてないでしょうね」

「まあ、リアルでパーティを組むとなると、お金の管理はしっかりしないと揉める元だしね」
 
「それにゲームではダンジョンに潜るだけでお金になることになっています。ですが、現実ではそうではない。そうなると、誰かがダンジョンに潜ることを、お金に変える仕組みを作らなければなりません。そして、一番儲けを得ることができるのは、その仕組みを作った者たちですよ」

「ヨフーオークションでせどりをするよりも、ヨフーを経営したほうが儲かるようなものよね。少し意味は違うけれども、ゴールドラッシュで一番儲けたのはつるはしを売った人だなんて言葉もあるしね」

「ネット小説なんかでは、ダンジョンに潜ることをお金にできる冒険者ギルドができたから、大冒険者時代が始まり、だから冒険者になって成り上がりを目指すというストーリーが多いですよね。でも、それでは順序が遅すぎます。可能ならば、自分たちが行動したから、大冒険者時代と後世呼ばれるようになったと言われるようになりたいじゃありませんか」

 水沢の意見に、清美は半分賛成で半分反対と異論を述べる。
「大冒険者時代については賛成。でも、冒険者については言い過ぎかもね。彼らにとっては、プロスポーツリーグがあるから、そのプロ選手を目指すようなものよ。彼らの挑戦の価値は決して、そのスポーツのプロ化に挑戦した者たちの価値に劣ることはないわ」
「確かにそうですね。言い過ぎました」

 いい加減話がそれていることにじれてきた伊吹が、話に割り込んだ。
「そんなことより、そろそろ具体的な会社設立の話に入らんか」
「それもそうですね。だた、その前に昨日のことについてまとめておきましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした

鈴木竜一
ファンタジー
 健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。  しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。  魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ! 【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】  ※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。

【完結】元ドラゴンは竜騎士をめざす ~無能と呼ばれた男が国で唯一無二になるまでの話

樹結理(きゆり)
ファンタジー
ドラゴンが治める国「ドラヴァルア」はドラゴンも人間も強さが全てだった。 日本人とドラゴンが前世という、ちょっと変わった記憶を持ち生まれたリュシュ。 しかしそんな前世がありながら、何の力も持たずに生まれたリュシュは周りの人々から馬鹿にされていた。 リュシュは必死に強くなろうと努力したが、しかし努力も虚しく何の力にも恵まれなかったリュシュに十八歳のとき転機が訪れる。 許嫁から弱さを理由に婚約破棄を言い渡されたリュシュは、一念発起し王都を目指す。 家族に心配されながらも、周囲には馬鹿にされながらも、子供のころから憧れた竜騎士になるためにリュシュは旅立つのだった! 王都で竜騎士になるための試験を受けるリュシュ。しかし配属された先はなんと!? 竜騎士を目指していたはずなのに思ってもいなかった部署への配属。さらには国の争いに巻き込まれたり、精霊に気に入られたり!? 挫折を経験したリュシュに待ち受ける己が無能である理由。その理由を知ったときリュシュは……!? 無能と馬鹿にされてきたリュシュが努力し、挫折し、恋や友情を経験しながら成長し、必死に竜騎士を目指す物語。 リュシュは竜騎士になれるのか!?国で唯一無二の存在となれるのか!? ※この作品は小説家になろうにも掲載中です。 ※この作品は作者の世界観から成り立っております。 ※努力しながら成長していく物語です。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...