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1.プロローグ
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●5月2日 自宅 水沢健司
昨日、全世界に『門』が出現した。
『門』は3次元的にはありえない存在であり、そこには地下、ダンジョンへと続く通路があった。
水沢健司は、友人の伊吹吾郎、橋口清美とともに自宅に現れたダンジョンに潜り、その秘密の一端を見つけることができた。
今日は朝から3人で集まり、ダンジョンの秘密をどう扱うかを相談するのであった。
「それで、お前さんらはダンジョンの秘密のことを、どうするつもりじゃ?」
「やっぱり、人に知られないよう隠すしかないのかしら?」
伊吹の質問に、清美も首をかしげながらつぶやく。
その二人に対して、水沢ははっきりと反論する。
「いえ、私は逆に積極的に開示すべきだと思います」
「でも、開示するといってもどうやってするつもりなの? 下手に発表すると大騒ぎになると思うけど……」
清美の質問にうなずきながら、水沢が答える。
「会社を作りましょう。ダンジョンを利用したサービスを提供するための会社です」
伊吹は、水沢の意見に同意する。
「なるほど、会社が出来てからなら、騒ぎになるのはむしろ望むところという訳か。なにしろ、無料で会社の宣伝をしてもらえる訳じゃからな」
水沢も、伊吹の意見を補足するように話を続ける。
「ええ、それに受け皿となる会社が存在すれば、騒ぎにはなっても暴動にはならないでしょうしね」
「でも、開示すれば利益を独占することはできないわよ」
清美の指摘に、伊吹も同意する。
「うむ、情報を開示した時点で、他社も参入してくるのは間違いない」
水沢は二人の指摘に対して、情報を開示した方がよいと考える理由を説明した。
「まあ、それは当然でしょうね。ただ、知識を独占しても、小さなパイを独占するだけで大儲けできる訳ではありません。どれほど頑張ってっても、せいぜい数億円程度でしょう。なにしろ、情報を漏らさないようにするため、顧客を大々的に集めることができないのですからね」
「一方、開示した場合、全世界が対象です。市場規模がどれだけになるのか、想像もつきません。最低でも数兆円、いえそれ以上の桁になるでしょう」
水沢の説明に納得したという風に清美と伊吹がつぶやく。
「せいぜい数億円の小銭を相手にするのか、それとも数兆円規模の大海原に乗り出すのか……結論は考えるまでもないわね」
「まあ、失敗しても先行者利益もある。最悪会社を売り払えば、数億円程度の小銭は手に入るじゃろうしな」
ゲームの情報に詳しい清美が、同好の水沢と2人で、ゲームのダンジョンとの比較で盛り上がる。
ちなみに、伊吹はゲームやネット小説の知識は全くないため完全に置いてきぼりである。
「それにしても、ダンジョンに潜るのに会社を作るとは思わなかったわ。ゲームだと、パーティとかギルドとかの集まりでダンジョンの攻略を進めるのにね」
そう言う清美の意見に、水沢は現実の面から説明を行った。
「ゲームならともかく現実ではお金がないと生きてはいけませんし、中世ならともかく現代ではお金には税金が必ず絡んできます。そういう意味では、パーティを現代風に言えば、個人事業主の集まりか小規模な会社でしょう。会社と個人事業主の集まりの違いは、怪我などの負担を個人に任せるのか、チーム全体でサポートするのかでしょうね」
「そういう言い方でいけは、ギルドは小規模から中規模な会社になるのか……。確かに、ゲーム内でも冒険者ギルドともなれば人材派遣会社そのものけれど、何かロマンがないわね」
清美の感想に、水沢は肩をすくめながら答える。
「ダンジョンに潜るのは趣味、お金が掛かることはあっても儲かることはないと割り切れるなら、ゲームのようなパーティ制でも問題はありませんよ。だた、ダンジョンで一攫千金を夢見たり、成り上がりを夢見る人には向いてないでしょうね」
「まあ、リアルでパーティを組むとなると、お金の管理はしっかりしないと揉める元だしね」
「それにゲームではダンジョンに潜るだけでお金になることになっています。ですが、現実ではそうではない。そうなると、誰かがダンジョンに潜ることを、お金に変える仕組みを作らなければなりません。そして、一番儲けを得ることができるのは、その仕組みを作った者たちですよ」
「ヨフーオークションでせどりをするよりも、ヨフーを経営したほうが儲かるようなものよね。少し意味は違うけれども、ゴールドラッシュで一番儲けたのはつるはしを売った人だなんて言葉もあるしね」
「ネット小説なんかでは、ダンジョンに潜ることをお金にできる冒険者ギルドができたから、大冒険者時代が始まり、だから冒険者になって成り上がりを目指すというストーリーが多いですよね。でも、それでは順序が遅すぎます。可能ならば、自分たちが行動したから、大冒険者時代と後世呼ばれるようになったと言われるようになりたいじゃありませんか」
水沢の意見に、清美は半分賛成で半分反対と異論を述べる。
「大冒険者時代については賛成。でも、冒険者については言い過ぎかもね。彼らにとっては、プロスポーツリーグがあるから、そのプロ選手を目指すようなものよ。彼らの挑戦の価値は決して、そのスポーツのプロ化に挑戦した者たちの価値に劣ることはないわ」
「確かにそうですね。言い過ぎました」
いい加減話がそれていることにじれてきた伊吹が、話に割り込んだ。
「そんなことより、そろそろ具体的な会社設立の話に入らんか」
「それもそうですね。だた、その前に昨日のことについてまとめておきましょう」
昨日、全世界に『門』が出現した。
『門』は3次元的にはありえない存在であり、そこには地下、ダンジョンへと続く通路があった。
水沢健司は、友人の伊吹吾郎、橋口清美とともに自宅に現れたダンジョンに潜り、その秘密の一端を見つけることができた。
今日は朝から3人で集まり、ダンジョンの秘密をどう扱うかを相談するのであった。
「それで、お前さんらはダンジョンの秘密のことを、どうするつもりじゃ?」
「やっぱり、人に知られないよう隠すしかないのかしら?」
伊吹の質問に、清美も首をかしげながらつぶやく。
その二人に対して、水沢ははっきりと反論する。
「いえ、私は逆に積極的に開示すべきだと思います」
「でも、開示するといってもどうやってするつもりなの? 下手に発表すると大騒ぎになると思うけど……」
清美の質問にうなずきながら、水沢が答える。
「会社を作りましょう。ダンジョンを利用したサービスを提供するための会社です」
伊吹は、水沢の意見に同意する。
「なるほど、会社が出来てからなら、騒ぎになるのはむしろ望むところという訳か。なにしろ、無料で会社の宣伝をしてもらえる訳じゃからな」
水沢も、伊吹の意見を補足するように話を続ける。
「ええ、それに受け皿となる会社が存在すれば、騒ぎにはなっても暴動にはならないでしょうしね」
「でも、開示すれば利益を独占することはできないわよ」
清美の指摘に、伊吹も同意する。
「うむ、情報を開示した時点で、他社も参入してくるのは間違いない」
水沢は二人の指摘に対して、情報を開示した方がよいと考える理由を説明した。
「まあ、それは当然でしょうね。ただ、知識を独占しても、小さなパイを独占するだけで大儲けできる訳ではありません。どれほど頑張ってっても、せいぜい数億円程度でしょう。なにしろ、情報を漏らさないようにするため、顧客を大々的に集めることができないのですからね」
「一方、開示した場合、全世界が対象です。市場規模がどれだけになるのか、想像もつきません。最低でも数兆円、いえそれ以上の桁になるでしょう」
水沢の説明に納得したという風に清美と伊吹がつぶやく。
「せいぜい数億円の小銭を相手にするのか、それとも数兆円規模の大海原に乗り出すのか……結論は考えるまでもないわね」
「まあ、失敗しても先行者利益もある。最悪会社を売り払えば、数億円程度の小銭は手に入るじゃろうしな」
ゲームの情報に詳しい清美が、同好の水沢と2人で、ゲームのダンジョンとの比較で盛り上がる。
ちなみに、伊吹はゲームやネット小説の知識は全くないため完全に置いてきぼりである。
「それにしても、ダンジョンに潜るのに会社を作るとは思わなかったわ。ゲームだと、パーティとかギルドとかの集まりでダンジョンの攻略を進めるのにね」
そう言う清美の意見に、水沢は現実の面から説明を行った。
「ゲームならともかく現実ではお金がないと生きてはいけませんし、中世ならともかく現代ではお金には税金が必ず絡んできます。そういう意味では、パーティを現代風に言えば、個人事業主の集まりか小規模な会社でしょう。会社と個人事業主の集まりの違いは、怪我などの負担を個人に任せるのか、チーム全体でサポートするのかでしょうね」
「そういう言い方でいけは、ギルドは小規模から中規模な会社になるのか……。確かに、ゲーム内でも冒険者ギルドともなれば人材派遣会社そのものけれど、何かロマンがないわね」
清美の感想に、水沢は肩をすくめながら答える。
「ダンジョンに潜るのは趣味、お金が掛かることはあっても儲かることはないと割り切れるなら、ゲームのようなパーティ制でも問題はありませんよ。だた、ダンジョンで一攫千金を夢見たり、成り上がりを夢見る人には向いてないでしょうね」
「まあ、リアルでパーティを組むとなると、お金の管理はしっかりしないと揉める元だしね」
「それにゲームではダンジョンに潜るだけでお金になることになっています。ですが、現実ではそうではない。そうなると、誰かがダンジョンに潜ることを、お金に変える仕組みを作らなければなりません。そして、一番儲けを得ることができるのは、その仕組みを作った者たちですよ」
「ヨフーオークションでせどりをするよりも、ヨフーを経営したほうが儲かるようなものよね。少し意味は違うけれども、ゴールドラッシュで一番儲けたのはつるはしを売った人だなんて言葉もあるしね」
「ネット小説なんかでは、ダンジョンに潜ることをお金にできる冒険者ギルドができたから、大冒険者時代が始まり、だから冒険者になって成り上がりを目指すというストーリーが多いですよね。でも、それでは順序が遅すぎます。可能ならば、自分たちが行動したから、大冒険者時代と後世呼ばれるようになったと言われるようになりたいじゃありませんか」
水沢の意見に、清美は半分賛成で半分反対と異論を述べる。
「大冒険者時代については賛成。でも、冒険者については言い過ぎかもね。彼らにとっては、プロスポーツリーグがあるから、そのプロ選手を目指すようなものよ。彼らの挑戦の価値は決して、そのスポーツのプロ化に挑戦した者たちの価値に劣ることはないわ」
「確かにそうですね。言い過ぎました」
いい加減話がそれていることにじれてきた伊吹が、話に割り込んだ。
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