ダンジョンと株式会社とノーベル賞と ~目指せビリオネイヤー(1千億円長者)私たちはこの会社で世界を取る~

早坂明

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TV出演

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 可能な限り早く行いたいという双方の意見が一致した結果、取材は翌日には行われることになった。
 清美と伊吹は、事務所で取材の対応を行い、水沢がTV局でのインタビューを受けることとなった。
 ネットTV局の控室に入った水沢のところに、壮年の男が入ってきて、気安い様子で話しかけてくる。
「やあ、私がインタビューの相手をさせてもらうネットTVの社長の川崎だ。あなたが、ダンジョンズギルドの社長さんかな?」

「はい、私がダンジョンズギルド社長の水沢と申します。TV局の社長自らの出迎えとは驚きました」
「なに、お互いに社長なんだ気を使うことはないさ。しかし、思ったよりも若いんだね」
「これでも、65歳ですよ」
「ほう、それが今日インタビューするする若返りの成果というわけか……。大したものだね」

「幸運にもダンジョンが自宅にできたおかげですよ。この幸運を社会全体に広めるのが、私たちの使命というわけです」
「なるほど。会社というものは、自社の利益だけでなく、社会貢献を考えることも重要だからね」


 インタビュー番組では、川崎氏自らが司会を務めていた。
「みなさんもご存じのように、今月の初めに世界各地に門とよばれる建築物が突如現れました。また、門の内部には三次元的には存在不可能なダンジョンと呼ばれる空間が広がっています」

「門およびダンジョンは、我々人類の科学力を超える技術によって、何者かがもたらしたとの説があります」

「今回、その超科学の性質の一端を解明し、その知識をもって社会に貢献するため会社を設立した方がいます」
「ご紹介します。ダンジョンズ ギルド株式会社の社長の水沢健司さんです」

 その言葉を合図として、水沢が入場してきた。
「初めまして、社長を務めております水沢と申します」
 着席した水沢に、司会の川崎が話しかける。
「それで、水沢さんたちが発見した知識とはどのようなものでしょうか?」

「はい、ダンジョンの内部にいる小動物、私たちはモンスターと呼んでしますが、これを倒すことであたかもゲームのように経験値を得ることができます」
「経験値を一定量貯めると、レベルが上がりステータスを上げることができます」

「それも、ゲームそのものですね」
「ええ、まさしくその通りです」

「どのくらいの数のモンスターを倒す必要があるのでしょうか」
「私たちのダンジョンの場合、レベル1になるには一人当たり1匹を倒す必要があります。それ以降のレベルに上げるのに必要な数は、倍々ゲームで増えてゆきいます」

「ネットなどでは、レベルを上げても大して強くならないという情報が出回っていますが、その点はどうなのでしょう」
「確かに、超人的な能力を得るのは不可能です。相当レベルを上げてもオリンピック級がせいぜいです」
「ただし、逆に成人の平均的な能力まで上げるのは、比較的簡単になっています」

「ほう、しかし、平均的な能力では意味がないのではありませんか?」
「確かに若い人にとっては、その通りでしょうね。ですが、体の衰えた老人にとっては意味が異なります」

「老人とって最も苦しいのは何か、それは日常生活を自分独りで行えなくなることです」
「筋力が衰え、自分一人では満足に歩くこともできなくなる」
「体力が衰え、毎日を病院で過ごさなければならなくなる」
「体の動きが衰え、日常生活もままならなくなる」
「それが、平均的な若者と同じように、日常生活が行えるまで回復できるとしたらどうですか」

「ちょっと待ってください。それでは、老化を止める、いや逆転して若返ることができると言っているように聞こえますが」
「その通りです。私の年齢はいくつか分かりますか?」
「20代ですよね。まさか……」
「ええ、今あなたが予想した通りです。私は65歳。本来初老と言っていい歳です」

「いや、驚きました。念のために言っておきますが、これはジョークニュースではありません。正真正銘本物の若返りです」

「それでは、実際の若返り処置を受けた方の感想をお聞きして見たいと思います」

 その声と同時に画面が切り替わり、事務所とそこに集まる顧客たちの様子が映し出される。
 レポーターが、一人の老婆にマイクを向け感想を聞く。
「若返りの効果はどうですか」
「最高。腰の痛みがすっかり良くなった」
「腰の痛み以外はどうですか」
「まあ、この年になると化粧もなにもないもんだけど、若くなれるならまたしてみるかねえ」

 レポーターが、清美にマイクを向ける。
「外見が若返るには、どのくらい時間がかかるのでしょうか」
「人にもよりますが、1日から2日ほどかかるようです。なお、体力など外見以外については処置後すぐに効果が出ます」
 ちなみに、そう答える清美の外見は10代に見えた。

 ふたたび、画面がスタジオに切り替わり、川崎が水沢に質問をする。
「それで、水沢さんはどうして、若返りの情報をこの場で発表しようと考えたのですか? 自分たちで独占しておいても良いと思うのですが、情報を公開すると他社が参入してくるとは考えなかったのですか?」
「参入してきても構わないと考えています」
「これまで人間は老化という不治の病に悩まされてきました。ダンジョンはその不治の病の治療法なのです」
「しかし、治療法が発見されたとはいえ、私たちだけで病に苦しむ高齢者全員を救うことはできません。若返りの技術は全世界で取り組むべき、人類共通の病の治療法なのです」

「大変結構な話ですが、御社は技術を広めるために何ができますか?」
「若返り業務に取り組もうと考えている方には、フランチャイズという形で私たちの持つノウハウを提供することができます」
「また、自分の所有地内にダンジョンが発生したが、自分では事業を行う余裕がない場合には、我々がダンジョンを借り受けて若返り業務を代行することが可能です」

「よく分かりました。自分の所有地内にダンジョンが発生した方で興味を持たれた方は、ダンジョンズギルドまでご連絡をお願いします」


 インタビューの収録後、川崎が水沢に話しかける。
「やあ、お疲れさん。……それで、これからのことなんだが、この若返り事業は、単に成長の見込みがあるだけでなく、社会的意義のある事業だと思う。それで、もしよろしければ、私も一口加えさせてもらえないかね」
「我が社には、大企業の経営をした経験のある者がいません。川崎さんのような方が加わってくれると心強いですよ。もし、よろしければ社外取締役として協力いただけませんか?」
「決まりだな。これからよろしく頼むよ」
 そう言って二人は握手をするのであった。
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