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事業拡大と問題点
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会社設立当初、周囲は半信半疑であった。
しかし、それも実際に若返った元老人たちの姿を見ることで、反応が変わってきた。
また、若返った者たちも、水沢たちのサービスの効果を、積極的に自分たちの周囲に自慢して回ったことによる、口コミの効果も少なくなかった。
会社設立後、1週間もたつ頃には、決して安いとは言えないサービスにもかかわらず、水沢たち3人では予約を捌ききれなくなっていた。
幸い、伊吹たちの人脈で当座の人員は確保できた。
「さて、人員は確保できたが、武器などの装備はどうする」
「各自に得意な武器を選ばせるのかしら」
「いえ、各自にまかせていると、将来のさらなる事業拡大のためのノウハウが溜まりません。装備は統一すべきでしょう」
「何がいいかしら?」
「将来的には、武術の達人以外の方も雇うことになるでしょうから、簡単な訓練で扱える装備がいいですね」
「それだと、お前さんと同じように、盾はどうじゃ。大盾だと武器が扱いにくいから中盾はどうじゃ?」
「いいですね。ポリカーボネイトの加工を請け負ってくれる会社を探して、まとめて発注しておきましょう」
「そうすると、武器は手槍かしら?」
「当面の相手はトビトカゲか、それと同じくらいの相手と思われますから、命中率重視でトライデントはどうでしょう」
「なるほど、それも悪くないわね。じゃあ、装備は中盾とトライデントで統一と」
「むろん、防刃ベストとネックガードは必須じゃな」
「足元も安全靴でそろえた方がいいわね」
「ですが、人員の増加だけで対応するのにも限界があります」
「どういうことじゃ?」
「口コミの範囲は、まだ地元の地域内でしかありません。それでこの状況です」
「遠からずこのダンジョンだけでは、希望者を捌ききれなくなると思います」
「それなら、これからどうするつもりじゃ?」
「事業を拡大するしかないでしょうね」
「私たちの都合で、老人たちに不自由な生活を強いるのは本意ではありません。少しでも早く、そして、多くの人たちの役に立つためには、早急に事業の拡大が必要です」
「事業の拡大か……。そのためには、ダンジョンの確保が必要だと思うけれどあてはあるの?」
「とりあえず、掲示板で尋ねてみたのですが……ほとんどがジョークばかりで、本物は1件だけでした」
「いずれにしろ、本格的なに事業を拡大しようとすると、私たちが他のダンジョンがどこにあるか、十分な情報を持っていないことがネックになります」
「警察や消防署なら、ダンジョンの位置を把握しているでしょう。しかし、警察や消防署が個人情報を漏らしてくれるとも思えません」
伊吹も、水沢の意見に同意する。
「さすがに、個人的に知り合いの警官に、情報の横流しを頼むなどの犯罪行為は論外だしな」
「次にダンジョンの位置が判明したとして、それを購入あるは借り受けられるだけの信用があるかが不確定です」
「実際、情報の寄せられた1件も、胡散臭い奴と思われて交渉が上手く行っていません」
「あれは、相手にも問題があったと思うけど」
「地元なら、少しは事業に対する理解が広まってきていますので、適正な交渉が可能かもしれません。ただ、地元では私のもの以外のダンジョンの情報は入ってきていません」
「そうは言っても悩んどるだけでは進まん」
「幸い、業績の方は好調なんじゃ。地元の信用金庫あたりと、既に口座を持っとる銀行に、融資が受けられんか相談したらどうだ。銀行がバックについているというだけでも、交渉の難易度は下がるだろう?」
「そうですね、今すぐ資金が必要というわけではありませんが、信用を買うと言う意味で、銀行に相談してみましょう」
「とは言っても、ダンジョンの持ち主の方から接触があるぐらいの知名度がないと、本格的な事業拡大は困難でしょう」
「芝公園のダンジョンにしても、東京都が私たちに貸し出してくれるとは思えないものね」
「少なくとも現状では、そうですね」
「現状ではということは、将来的には何とかなるあてがあるの?」
清美の質問に、水沢は頷く。
「我々の事業に対する世間の認知度が上がれば、状況が変わると思います。もう一度、ニュースリリースを出してみましょう」
「そういえば、ムーチューブとかは使わんのか? 名前だけなら、わしでも聞いたことがあるぞ」
「ムーチューブは、若者が中心で、私たちが想定顧客としている老人は、あまり使っていませんから、効果が薄いんですよ」
「伊吹さんだって、名前は聞いたことがあっても、実際に使うことはほとんどないでしょう」
「また、ムーチューブには、信用性の低い情報も多いので、ニュースリリースを流すのには適していません」
「特に私たちの事業のような、常識はずれのニュースを流した場合、ジョークニュースと思われる可能性が高いと思います」
そこまで話したところで、水沢のパソコンにメール受信が通知される。
メールの内容を確認した水沢は、笑みを浮かべる。
「噂をすれば影というやつですね。マスコミの方から私たちの事業について、問い合わせがありました」
「あるネットTVから、私たちの事業について取材を行いたいとの申し込みです」
「ムーチューバーじゃなくて?」
「それなりに名の知られた会社ですから、心配はいらないと思いますよ」
「取材は受けるのよね?」
「もちろんです」
しかし、それも実際に若返った元老人たちの姿を見ることで、反応が変わってきた。
また、若返った者たちも、水沢たちのサービスの効果を、積極的に自分たちの周囲に自慢して回ったことによる、口コミの効果も少なくなかった。
会社設立後、1週間もたつ頃には、決して安いとは言えないサービスにもかかわらず、水沢たち3人では予約を捌ききれなくなっていた。
幸い、伊吹たちの人脈で当座の人員は確保できた。
「さて、人員は確保できたが、武器などの装備はどうする」
「各自に得意な武器を選ばせるのかしら」
「いえ、各自にまかせていると、将来のさらなる事業拡大のためのノウハウが溜まりません。装備は統一すべきでしょう」
「何がいいかしら?」
「将来的には、武術の達人以外の方も雇うことになるでしょうから、簡単な訓練で扱える装備がいいですね」
「それだと、お前さんと同じように、盾はどうじゃ。大盾だと武器が扱いにくいから中盾はどうじゃ?」
「いいですね。ポリカーボネイトの加工を請け負ってくれる会社を探して、まとめて発注しておきましょう」
「そうすると、武器は手槍かしら?」
「当面の相手はトビトカゲか、それと同じくらいの相手と思われますから、命中率重視でトライデントはどうでしょう」
「なるほど、それも悪くないわね。じゃあ、装備は中盾とトライデントで統一と」
「むろん、防刃ベストとネックガードは必須じゃな」
「足元も安全靴でそろえた方がいいわね」
「ですが、人員の増加だけで対応するのにも限界があります」
「どういうことじゃ?」
「口コミの範囲は、まだ地元の地域内でしかありません。それでこの状況です」
「遠からずこのダンジョンだけでは、希望者を捌ききれなくなると思います」
「それなら、これからどうするつもりじゃ?」
「事業を拡大するしかないでしょうね」
「私たちの都合で、老人たちに不自由な生活を強いるのは本意ではありません。少しでも早く、そして、多くの人たちの役に立つためには、早急に事業の拡大が必要です」
「事業の拡大か……。そのためには、ダンジョンの確保が必要だと思うけれどあてはあるの?」
「とりあえず、掲示板で尋ねてみたのですが……ほとんどがジョークばかりで、本物は1件だけでした」
「いずれにしろ、本格的なに事業を拡大しようとすると、私たちが他のダンジョンがどこにあるか、十分な情報を持っていないことがネックになります」
「警察や消防署なら、ダンジョンの位置を把握しているでしょう。しかし、警察や消防署が個人情報を漏らしてくれるとも思えません」
伊吹も、水沢の意見に同意する。
「さすがに、個人的に知り合いの警官に、情報の横流しを頼むなどの犯罪行為は論外だしな」
「次にダンジョンの位置が判明したとして、それを購入あるは借り受けられるだけの信用があるかが不確定です」
「実際、情報の寄せられた1件も、胡散臭い奴と思われて交渉が上手く行っていません」
「あれは、相手にも問題があったと思うけど」
「地元なら、少しは事業に対する理解が広まってきていますので、適正な交渉が可能かもしれません。ただ、地元では私のもの以外のダンジョンの情報は入ってきていません」
「そうは言っても悩んどるだけでは進まん」
「幸い、業績の方は好調なんじゃ。地元の信用金庫あたりと、既に口座を持っとる銀行に、融資が受けられんか相談したらどうだ。銀行がバックについているというだけでも、交渉の難易度は下がるだろう?」
「そうですね、今すぐ資金が必要というわけではありませんが、信用を買うと言う意味で、銀行に相談してみましょう」
「とは言っても、ダンジョンの持ち主の方から接触があるぐらいの知名度がないと、本格的な事業拡大は困難でしょう」
「芝公園のダンジョンにしても、東京都が私たちに貸し出してくれるとは思えないものね」
「少なくとも現状では、そうですね」
「現状ではということは、将来的には何とかなるあてがあるの?」
清美の質問に、水沢は頷く。
「我々の事業に対する世間の認知度が上がれば、状況が変わると思います。もう一度、ニュースリリースを出してみましょう」
「そういえば、ムーチューブとかは使わんのか? 名前だけなら、わしでも聞いたことがあるぞ」
「ムーチューブは、若者が中心で、私たちが想定顧客としている老人は、あまり使っていませんから、効果が薄いんですよ」
「伊吹さんだって、名前は聞いたことがあっても、実際に使うことはほとんどないでしょう」
「また、ムーチューブには、信用性の低い情報も多いので、ニュースリリースを流すのには適していません」
「特に私たちの事業のような、常識はずれのニュースを流した場合、ジョークニュースと思われる可能性が高いと思います」
そこまで話したところで、水沢のパソコンにメール受信が通知される。
メールの内容を確認した水沢は、笑みを浮かべる。
「噂をすれば影というやつですね。マスコミの方から私たちの事業について、問い合わせがありました」
「あるネットTVから、私たちの事業について取材を行いたいとの申し込みです」
「ムーチューバーじゃなくて?」
「それなりに名の知られた会社ですから、心配はいらないと思いますよ」
「取材は受けるのよね?」
「もちろんです」
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