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探索の準備
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清美と伊吹の二人が、装備を取りに帰った後、水沢は使えそうな品がないか探してみることにした。
まずは、荷物を持ち運ぶためのリュックサックと水筒。
明かりとして、LEDのカンテラと懐中電灯に予備の電池。
使えるかどうか不安は残るが、連絡用他さまざまな用途に役立つ可能性があるため、スマートフォンも持ち込むことにする。
万一の血止めのための包帯や手ぬぐいに消毒薬。
遭難した場合など何らかの理由で、探索が予定よりも長時間になった場合に備えて、チョコレートバーなどの非常食もあった方がいいだろう。
それに、火を興すための使い捨てのライター。
獲物の解体などに使えるかもしれないので、さや付きの果物ナイフも持っていく。
本当はサバイバルナイフか剣鉈があればよいのだが、そんな物は持っていない。
果物ナイフでは頼りないが、仕方がない。
獲物を持ち運ぶとなれば、ボリ袋も必要だろう。
大型のごみ袋を何枚か用意しておく。
マッピングのための筆記用具にメモ帳。
順路を通路に記入するための極太のマーカーペン。
それから、ふと思いついた実験のために、庭からこぶし大の石を10個ほど取ってきた。
武器としては、金槌をツールホルダーに入れて腰に下げることにする。
清美か伊吹かのどちらかが、もっと良い武器を準備している可能性もあるが、自分でも準備しておいても問題はあるまい。
とりあえず必要と思われるものをまとめた後、二人が帰ってくるまでテレビを見て時間をつぶすことにした。
しかし、テレビの朝の情報番組では、女性リポーターが、まさにダンジョンのことを語っており、思わず見入ることとなった。
◇◇◇
女性リポーターが、東京タワーを背景にした公園に立っている。
「こちらは、東京の芝公園です」
女性は、背後を示しながら説明を続ける。背後には警察の規制線と、どこか見覚えのある建造物が映っている。
「あちらにある凱旋門のような建築物が見えますでしょうか。かなり大きな建造物ですが、今朝になって突然現れたとのことです」
「一体誰が何のために、どうやって設置したものか、現時点では不明です」
「また、門の中には地下へ続く通路があるとのことです。はたして、通路の先には何があるのでしょうか」
「今、防護服を装備した消防隊員がやってきました。これから、地下の様子を調査するようです」
「なお、警察の発表によりますと、周辺は安全が確認されるまで、立ち入りが規制されるとのことです」
画面がスタジオに切り替わる。
スーツ姿のキャスターが、地図を示しながら、ニュースの続きを読み上げる。
「現時点で、本テレビ局が確認できた情報では、同様の建造物が、札幌と宮崎で見つかっています」
「また、未確認ですが、それ場所以外でも、同様の建造物が見つかったとの情報が、寄せられています」
「次にこちらの映像をご覧ください」
キャスターの背後に表示された映像が、また切り替わる。
「こちらは、アメリカ合衆国内で撮影された映像です」
画像が切り替わり、ドライブレコーダーのものらしき映像が映し出される。
そこには、草原の真ん中に門状の建造物が、何もない空中から突如現れるシーンが映し出されていた。
「これは、CGによる合成ではありません。東京で発見されたのと同様の建造物が、世界各国で発見されているとの情報が入ってきています」
「視聴者のみなさんにおきましては、同様の建造物を発見されましても、安全のため、不用意に立ち入らないようお願いします」
◇◇◇
水沢の家に戻ってきた清美と伊吹の二人に、テレビニュースの話をした。
伊吹は、ため息をつきながら、他の二人に問いかける。
「警察や消防が乗り出していると知っても、やめる気はないんじゃな?」
「もちろんよ。むしろ逆に、警察に先を越されないように急がなくちゃ」
「同感ですね」
「分かった。それじゃあ、防具だけでもしっかり身に着けておいてくれ」
そう言って、水沢と清美の二人に防具を渡す。
「これは、防刃ベストじゃ。少々の切り傷や刺し傷なら防ぐ効果がある。まあ、過信は禁物じゃが無いよりはよかろう」
「日本刀で思い切り着けてたら、どうなるの?」
「致命傷は防げるかもしれんが、完全に防ぐのは無理じゃな。それに衝撃も完全には防げんから、切り傷の他に骨折もすることになるな」
「こっちのヘルメットは、防弾ヘルメットってやつなの?」
ヘッドライトの付いたヘルメットをいじりながら、清美が問いかける。
「そんな訳があるかい。普通の警備会社に何を期待しとるんじゃ」
伊吹の言葉に、水沢が苦笑しながらがら説明を加える。
「まあ、日本では、相手が銃で武装している前提で防御すること自体がないですからね」
「そうなの?」
「そうじゃ。だから、防弾ベストではなく、防刃ベストだと言っとるだろうが」
「こっちのは何ですか?」
「それは、ネックガードじゃ。首に巻いて、首を守るものじゃ」
「ああ、それから水沢にはこれを持ってきた」
そう言いながら、伊吹は透明な大盾を渡す。
「ポリカーボネイト製の盾じゃ。軽いが金属の盾よりも頑丈にできておる」
「武道の経験のない素人に刃物を持たせても、使いこなせないだけで、逆に危険だからの。これで身を守ることを第一に考えてくれ」
「分かりました。それと、武器の代わりに金槌を準備しておいたのですが、これはどうしましょうか?」
「それぐらいなら問題はなかろう。とは言っても、むやみに振り回さんようにな」
清美が、待ちきれないとばかりに、みんなに号令をかける。
「それじゃあ、準備もできたようだし、ダンジョン探検に出発しましょう」
まずは、荷物を持ち運ぶためのリュックサックと水筒。
明かりとして、LEDのカンテラと懐中電灯に予備の電池。
使えるかどうか不安は残るが、連絡用他さまざまな用途に役立つ可能性があるため、スマートフォンも持ち込むことにする。
万一の血止めのための包帯や手ぬぐいに消毒薬。
遭難した場合など何らかの理由で、探索が予定よりも長時間になった場合に備えて、チョコレートバーなどの非常食もあった方がいいだろう。
それに、火を興すための使い捨てのライター。
獲物の解体などに使えるかもしれないので、さや付きの果物ナイフも持っていく。
本当はサバイバルナイフか剣鉈があればよいのだが、そんな物は持っていない。
果物ナイフでは頼りないが、仕方がない。
獲物を持ち運ぶとなれば、ボリ袋も必要だろう。
大型のごみ袋を何枚か用意しておく。
マッピングのための筆記用具にメモ帳。
順路を通路に記入するための極太のマーカーペン。
それから、ふと思いついた実験のために、庭からこぶし大の石を10個ほど取ってきた。
武器としては、金槌をツールホルダーに入れて腰に下げることにする。
清美か伊吹かのどちらかが、もっと良い武器を準備している可能性もあるが、自分でも準備しておいても問題はあるまい。
とりあえず必要と思われるものをまとめた後、二人が帰ってくるまでテレビを見て時間をつぶすことにした。
しかし、テレビの朝の情報番組では、女性リポーターが、まさにダンジョンのことを語っており、思わず見入ることとなった。
◇◇◇
女性リポーターが、東京タワーを背景にした公園に立っている。
「こちらは、東京の芝公園です」
女性は、背後を示しながら説明を続ける。背後には警察の規制線と、どこか見覚えのある建造物が映っている。
「あちらにある凱旋門のような建築物が見えますでしょうか。かなり大きな建造物ですが、今朝になって突然現れたとのことです」
「一体誰が何のために、どうやって設置したものか、現時点では不明です」
「また、門の中には地下へ続く通路があるとのことです。はたして、通路の先には何があるのでしょうか」
「今、防護服を装備した消防隊員がやってきました。これから、地下の様子を調査するようです」
「なお、警察の発表によりますと、周辺は安全が確認されるまで、立ち入りが規制されるとのことです」
画面がスタジオに切り替わる。
スーツ姿のキャスターが、地図を示しながら、ニュースの続きを読み上げる。
「現時点で、本テレビ局が確認できた情報では、同様の建造物が、札幌と宮崎で見つかっています」
「また、未確認ですが、それ場所以外でも、同様の建造物が見つかったとの情報が、寄せられています」
「次にこちらの映像をご覧ください」
キャスターの背後に表示された映像が、また切り替わる。
「こちらは、アメリカ合衆国内で撮影された映像です」
画像が切り替わり、ドライブレコーダーのものらしき映像が映し出される。
そこには、草原の真ん中に門状の建造物が、何もない空中から突如現れるシーンが映し出されていた。
「これは、CGによる合成ではありません。東京で発見されたのと同様の建造物が、世界各国で発見されているとの情報が入ってきています」
「視聴者のみなさんにおきましては、同様の建造物を発見されましても、安全のため、不用意に立ち入らないようお願いします」
◇◇◇
水沢の家に戻ってきた清美と伊吹の二人に、テレビニュースの話をした。
伊吹は、ため息をつきながら、他の二人に問いかける。
「警察や消防が乗り出していると知っても、やめる気はないんじゃな?」
「もちろんよ。むしろ逆に、警察に先を越されないように急がなくちゃ」
「同感ですね」
「分かった。それじゃあ、防具だけでもしっかり身に着けておいてくれ」
そう言って、水沢と清美の二人に防具を渡す。
「これは、防刃ベストじゃ。少々の切り傷や刺し傷なら防ぐ効果がある。まあ、過信は禁物じゃが無いよりはよかろう」
「日本刀で思い切り着けてたら、どうなるの?」
「致命傷は防げるかもしれんが、完全に防ぐのは無理じゃな。それに衝撃も完全には防げんから、切り傷の他に骨折もすることになるな」
「こっちのヘルメットは、防弾ヘルメットってやつなの?」
ヘッドライトの付いたヘルメットをいじりながら、清美が問いかける。
「そんな訳があるかい。普通の警備会社に何を期待しとるんじゃ」
伊吹の言葉に、水沢が苦笑しながらがら説明を加える。
「まあ、日本では、相手が銃で武装している前提で防御すること自体がないですからね」
「そうなの?」
「そうじゃ。だから、防弾ベストではなく、防刃ベストだと言っとるだろうが」
「こっちのは何ですか?」
「それは、ネックガードじゃ。首に巻いて、首を守るものじゃ」
「ああ、それから水沢にはこれを持ってきた」
そう言いながら、伊吹は透明な大盾を渡す。
「ポリカーボネイト製の盾じゃ。軽いが金属の盾よりも頑丈にできておる」
「武道の経験のない素人に刃物を持たせても、使いこなせないだけで、逆に危険だからの。これで身を守ることを第一に考えてくれ」
「分かりました。それと、武器の代わりに金槌を準備しておいたのですが、これはどうしましょうか?」
「それぐらいなら問題はなかろう。とは言っても、むやみに振り回さんようにな」
清美が、待ちきれないとばかりに、みんなに号令をかける。
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