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桜井リョウスケの場合
side:桜井リョウスケ 撮影の日②
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今日は寒い。月が見えている澄んだ空気。
冬を感じながら歩いた。
考えてやれよ、か。そんなこと言われても…
彼女が向けてくれている好意は、そういうのじゃない気がしている。
いや、自分がそう思いたいだけなのか?
コンビニの灯りが近づいてくる。
顔を上げるとコンビニの前に柏木さんと水無月の姿が見えた。
俺は咄嗟に隠れてしまった。隠れる必要なくね…?
彼女のことを考えていたからだろう。それにしてもこんなタイミングで出てくるなよ。
ふぅ、と息を整えてコンビニに入ることを決めた。
「お兄ちゃん…?」
「うわっ!」
彼女が横にいた。
「ごめんなさい!そんな角に人がいると思わなくて…しかもお兄ちゃんだし」
「こっちこそ、大きな声出してごめん」
「お、お兄ちゃんってこの辺の人だっけ?」
「隣町だよ。今日はうっちゃんの家に泊まり」
「そうだったんだ。さっき水無月くんにも会ったんだけど、水無月くんは塾の帰りだって」
なんだ。そっか、とホッとする。
ホッとする意味はわからん…わからんぞ。
「…柏木さんは?家、近いの?」
「ううん。バスに乗って帰るよ。本屋さん行ってたので。ちょっと遅くなっちゃった」
「ちょっとじゃないと思うけど?…………………………駅のバス停だろ。送るよ」
おい、何言ってんだよ俺。
「え。いいの?お兄ちゃん、ありがとう」
彼女は満面の笑みだ。
さすがに少し照れるわ………
せっかくなので彼女のことを知ろうと思った。
きょうだいはいるのか?とかどんな本が好きなのか?とか。まあ、何でもよかった。
「お兄ちゃんはどんな音楽が好きなの?」
「え」
「私は意外とジャパンロックが好きだよ。あとはクラシックかな。ピアノ習ってるし」
「柏木さん、結構音楽聴くの?」
「ラジオ聞くのが好きだから聴いてる方だと思う」
「……クラシックは?」
「リストの曲が好きかな。あとはジムノペディとかトロイメライとか好きで聴いてる」
「ショパンは?」
「子犬のワルツ?」
「そこなの?w」
意外だった。絶対本の話すると思っていたのに。
音楽の話になるなんて思ってもみなかった。
……ちょっと嬉しいかも。
「お兄ちゃんのオススメはショパンなの?」
「………聴くなら貸すけど。CD」
「うん!聴く」
「気が向いたら持ってくる」
「ありがとう。楽しみ!あ、そうだ。お兄ちゃん、連絡先教えてよ」
「面倒くさい」
「ケチ!」
バス停に着くがまだバスは来ていない。
もう少し彼女と話ができるな、と思い、ベンチに座った。彼女も俺の隣に座る。
「柏木さんさ、B型じゃない?」
「ええ!?なんでわかったの?結構O型って言われるよ?」
「O型はないでしょ」
「がーん…ショック…」
「俺の妹に強引な所が似てるからB型かなって思った」
「え、ガチのお兄ちゃん!?」
「……そうだね」
「と言うことは私の妹という…「なりません」と食い気味に突っ込む。
意味変わってくるから!言ってることわかってるのか?
危なっかしいから放っておけなくなるわ。
「……………………あー」
「ん?どうしたの、お兄ちゃん?」
「いやなんでもない」
あー………こういうところが兄っぽいのか。
「バス来ちゃったね」
「気をつけて。転ばないように」
「はい!お兄ちゃん」
彼女はバスに乗り込んで、俺が見える席に座った。
俺が見えなくなるまで彼女は手を振ってくれた。
恥ずかしいけど、俺も最後まで見送った。
彼女はあんまり喋るタイプじゃないのかと思っていたが、意外とおしゃべりなんだな。
教室にいる時の彼女とは違う一面が見れたことに満足感を感じていた。
時計を見て、思ったより時間が経っていることに気づき、うっちゃんの怒った顔がよぎる。
スマホを見ると『まだ?』という連絡が来ている。
俺は急いでコンビニに向かった。
冬を感じながら歩いた。
考えてやれよ、か。そんなこと言われても…
彼女が向けてくれている好意は、そういうのじゃない気がしている。
いや、自分がそう思いたいだけなのか?
コンビニの灯りが近づいてくる。
顔を上げるとコンビニの前に柏木さんと水無月の姿が見えた。
俺は咄嗟に隠れてしまった。隠れる必要なくね…?
彼女のことを考えていたからだろう。それにしてもこんなタイミングで出てくるなよ。
ふぅ、と息を整えてコンビニに入ることを決めた。
「お兄ちゃん…?」
「うわっ!」
彼女が横にいた。
「ごめんなさい!そんな角に人がいると思わなくて…しかもお兄ちゃんだし」
「こっちこそ、大きな声出してごめん」
「お、お兄ちゃんってこの辺の人だっけ?」
「隣町だよ。今日はうっちゃんの家に泊まり」
「そうだったんだ。さっき水無月くんにも会ったんだけど、水無月くんは塾の帰りだって」
なんだ。そっか、とホッとする。
ホッとする意味はわからん…わからんぞ。
「…柏木さんは?家、近いの?」
「ううん。バスに乗って帰るよ。本屋さん行ってたので。ちょっと遅くなっちゃった」
「ちょっとじゃないと思うけど?…………………………駅のバス停だろ。送るよ」
おい、何言ってんだよ俺。
「え。いいの?お兄ちゃん、ありがとう」
彼女は満面の笑みだ。
さすがに少し照れるわ………
せっかくなので彼女のことを知ろうと思った。
きょうだいはいるのか?とかどんな本が好きなのか?とか。まあ、何でもよかった。
「お兄ちゃんはどんな音楽が好きなの?」
「え」
「私は意外とジャパンロックが好きだよ。あとはクラシックかな。ピアノ習ってるし」
「柏木さん、結構音楽聴くの?」
「ラジオ聞くのが好きだから聴いてる方だと思う」
「……クラシックは?」
「リストの曲が好きかな。あとはジムノペディとかトロイメライとか好きで聴いてる」
「ショパンは?」
「子犬のワルツ?」
「そこなの?w」
意外だった。絶対本の話すると思っていたのに。
音楽の話になるなんて思ってもみなかった。
……ちょっと嬉しいかも。
「お兄ちゃんのオススメはショパンなの?」
「………聴くなら貸すけど。CD」
「うん!聴く」
「気が向いたら持ってくる」
「ありがとう。楽しみ!あ、そうだ。お兄ちゃん、連絡先教えてよ」
「面倒くさい」
「ケチ!」
バス停に着くがまだバスは来ていない。
もう少し彼女と話ができるな、と思い、ベンチに座った。彼女も俺の隣に座る。
「柏木さんさ、B型じゃない?」
「ええ!?なんでわかったの?結構O型って言われるよ?」
「O型はないでしょ」
「がーん…ショック…」
「俺の妹に強引な所が似てるからB型かなって思った」
「え、ガチのお兄ちゃん!?」
「……そうだね」
「と言うことは私の妹という…「なりません」と食い気味に突っ込む。
意味変わってくるから!言ってることわかってるのか?
危なっかしいから放っておけなくなるわ。
「……………………あー」
「ん?どうしたの、お兄ちゃん?」
「いやなんでもない」
あー………こういうところが兄っぽいのか。
「バス来ちゃったね」
「気をつけて。転ばないように」
「はい!お兄ちゃん」
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時計を見て、思ったより時間が経っていることに気づき、うっちゃんの怒った顔がよぎる。
スマホを見ると『まだ?』という連絡が来ている。
俺は急いでコンビニに向かった。
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