1 / 1
通し見る想い
しおりを挟む
「凛導(リンドウ)は雪花(セッカ)に会いたくないのか?」
「あいたく・・・・ない」
少し考え込むような動作をしてから力なく頷く。
店の外に詰まれた木箱に腰掛ける少年と青年、目の前には古びた隣の店の壁だけ。
「いつも雪花のことばかり訊いてくるのに会いたくないのか」
その一言で何かに気づいたように驚いたような困ったような顔をした。
「あっ・・・ごめんなさいっ!ボク、とっても失礼なことを・・・・・
水仙(スイセン)のことより雪花のことばかり訊ねて・・・・
何回も来てくれてるのに、いつもいつも・・・・・」
「なんだ、そんなこと気にしなくていい。凛導に雪花のこと訊ねてもらえるのは、とても嬉い。」
「・・・・・・・水仙、雪花をきちんと守ってくれているんだね。」
じーっと見た後、上目使いでの笑顔。あいつと似ている顔。
それを見るだけでおもわず緩む目元、口元。
オレは今、とてつもなく優しい、切ない、・・・・普段し無いような表情してるんだろうな・・・・。
あいつの前では見せるわけにはいかない、オレのこんな顔なんか・・・・
見せてしまったら、最後。
守ることが出来なくなる。
砦であるオレがあいつを守らず誰が守るんだ。
「水仙は雪花のこと大好きなんだ、・・・・ありがとう」
さっき以上にニコニコしながらオレを見る凛導。
完全にバレてる。凛導に雪花を映していること、雪花への想い。
それでもいいと、むしろそれくらいの方がいいと云ってくれる。
凛導を通して雪花を見るオレ。
オレを通して雪花を想う凛導。
「・・・じゃあ、また来る。今度は客として来るから部屋でゆっくり話そう。
雪花の土産話を沢山持ってくるから」
裏口の狭い道、今日も手を振ってくれている。オレが見えなくなるまで、雪花をよろしく、と
店同士に挟まれた長い道、やっと現れた角を曲がると凛導が見えなくなる。
必ず、曲がる前に手を上げる。まかせろ、と
凛導とオレと雪花の関係はとても特殊なものなのだろう。
それでも凛導とオレはこれを選んだ。
・・・・・雪花は、雪花はどう思うだろうか。一番大切なお前に選択権がないなんて、
あの時もオレの手を取る以外は道がなかった、そうさせてしまった。
あれは、あの時はまだ選べたかもしれないのに・・・・・
「・・・・・・・・・オレのエゴだよな」
冷たい風が首筋をすり抜けていく、こんなオレの呟きは掻き消えてしまう。
冬に向かい冷たさを増す木枯らしが身体を冷やす、・・・・・・・・それでいいんだ。
胸に秘めた熱さを伝えてはいけない。
冷やして冷やしてやっと常温を保てる。
平静を、理性を、あいつの前で保ち続けるために、冷静でいたい。冷たくいたい。
オレが・・・・守るべき、守りたい者。
どんなにつらくても、守れないことよりつらいことは存在しないから、あいつの傍にいる。
約束したとおり、一生。
「いつもより遅くなったな、・・・・急ぐか。」
一番いとおしい人が待っているから。
「遅い、遅い、おそい、おそい・・・・・おそ・・・い・・・・・」
船を漕いでいたのがとうとうとう沈没した。
突っ伏した横には海老や貝を使った料理が並べられていた。
自分の分と、この家の主人の分。
ご主人様がご帰宅しないので待っていたら眠気に襲われ、負けた。
「・・・・・・はやく・・・かえって・・・・きて・・・」
バタン。
寝言とほぼ同時に待ち人は帰ってきた。
が、
「ん・・・・・すい・・せん・・・はやく・・・・」
寝ていてまったく気づく様子は無い。寝言を云うほど待ち望んでいた人物がやっと帰宅したというのに爆睡。
「・・・・・待たせすぎたか」
眠気だけではなく空腹感もあっただろうに今まで待っていてくれた。
・・・本当にこいつは・・・・・・・・
「雪花、帰ったぞ」
白銀に近い薄い、水色の髪を撫でる。
サラサラとした雪のようにオレの手から零れ落ちる、髪の毛の一本一本。・・・・やっぱり綺麗だな。
「・・・・ん・・・・・・・あ・・・おかえり、すいせん」
ゆっくりとした動作で寝ぼけ顔を机から離してオレを見上げる。
「あぁ、遅くなって悪かったな、料理が冷めちまったか。」
「そうだよ、せ~っかく美味しいの作ったのにー。冷たくても文句言わせないからっ!」
不貞腐れながらも、帰ってきたのが嬉しくて、雪花はちょっとだけはしゃぎ気味になっていた。
怒ってはいない雪花を見て内心安堵したオレは、
「今日もまずそーだな」
と、心にも思ってないことを言いながら冷めた心温かい料理に舌鼓を打った。
「あいたく・・・・ない」
少し考え込むような動作をしてから力なく頷く。
店の外に詰まれた木箱に腰掛ける少年と青年、目の前には古びた隣の店の壁だけ。
「いつも雪花のことばかり訊いてくるのに会いたくないのか」
その一言で何かに気づいたように驚いたような困ったような顔をした。
「あっ・・・ごめんなさいっ!ボク、とっても失礼なことを・・・・・
水仙(スイセン)のことより雪花のことばかり訊ねて・・・・
何回も来てくれてるのに、いつもいつも・・・・・」
「なんだ、そんなこと気にしなくていい。凛導に雪花のこと訊ねてもらえるのは、とても嬉い。」
「・・・・・・・水仙、雪花をきちんと守ってくれているんだね。」
じーっと見た後、上目使いでの笑顔。あいつと似ている顔。
それを見るだけでおもわず緩む目元、口元。
オレは今、とてつもなく優しい、切ない、・・・・普段し無いような表情してるんだろうな・・・・。
あいつの前では見せるわけにはいかない、オレのこんな顔なんか・・・・
見せてしまったら、最後。
守ることが出来なくなる。
砦であるオレがあいつを守らず誰が守るんだ。
「水仙は雪花のこと大好きなんだ、・・・・ありがとう」
さっき以上にニコニコしながらオレを見る凛導。
完全にバレてる。凛導に雪花を映していること、雪花への想い。
それでもいいと、むしろそれくらいの方がいいと云ってくれる。
凛導を通して雪花を見るオレ。
オレを通して雪花を想う凛導。
「・・・じゃあ、また来る。今度は客として来るから部屋でゆっくり話そう。
雪花の土産話を沢山持ってくるから」
裏口の狭い道、今日も手を振ってくれている。オレが見えなくなるまで、雪花をよろしく、と
店同士に挟まれた長い道、やっと現れた角を曲がると凛導が見えなくなる。
必ず、曲がる前に手を上げる。まかせろ、と
凛導とオレと雪花の関係はとても特殊なものなのだろう。
それでも凛導とオレはこれを選んだ。
・・・・・雪花は、雪花はどう思うだろうか。一番大切なお前に選択権がないなんて、
あの時もオレの手を取る以外は道がなかった、そうさせてしまった。
あれは、あの時はまだ選べたかもしれないのに・・・・・
「・・・・・・・・・オレのエゴだよな」
冷たい風が首筋をすり抜けていく、こんなオレの呟きは掻き消えてしまう。
冬に向かい冷たさを増す木枯らしが身体を冷やす、・・・・・・・・それでいいんだ。
胸に秘めた熱さを伝えてはいけない。
冷やして冷やしてやっと常温を保てる。
平静を、理性を、あいつの前で保ち続けるために、冷静でいたい。冷たくいたい。
オレが・・・・守るべき、守りたい者。
どんなにつらくても、守れないことよりつらいことは存在しないから、あいつの傍にいる。
約束したとおり、一生。
「いつもより遅くなったな、・・・・急ぐか。」
一番いとおしい人が待っているから。
「遅い、遅い、おそい、おそい・・・・・おそ・・・い・・・・・」
船を漕いでいたのがとうとうとう沈没した。
突っ伏した横には海老や貝を使った料理が並べられていた。
自分の分と、この家の主人の分。
ご主人様がご帰宅しないので待っていたら眠気に襲われ、負けた。
「・・・・・・はやく・・・かえって・・・・きて・・・」
バタン。
寝言とほぼ同時に待ち人は帰ってきた。
が、
「ん・・・・・すい・・せん・・・はやく・・・・」
寝ていてまったく気づく様子は無い。寝言を云うほど待ち望んでいた人物がやっと帰宅したというのに爆睡。
「・・・・・待たせすぎたか」
眠気だけではなく空腹感もあっただろうに今まで待っていてくれた。
・・・本当にこいつは・・・・・・・・
「雪花、帰ったぞ」
白銀に近い薄い、水色の髪を撫でる。
サラサラとした雪のようにオレの手から零れ落ちる、髪の毛の一本一本。・・・・やっぱり綺麗だな。
「・・・・ん・・・・・・・あ・・・おかえり、すいせん」
ゆっくりとした動作で寝ぼけ顔を机から離してオレを見上げる。
「あぁ、遅くなって悪かったな、料理が冷めちまったか。」
「そうだよ、せ~っかく美味しいの作ったのにー。冷たくても文句言わせないからっ!」
不貞腐れながらも、帰ってきたのが嬉しくて、雪花はちょっとだけはしゃぎ気味になっていた。
怒ってはいない雪花を見て内心安堵したオレは、
「今日もまずそーだな」
と、心にも思ってないことを言いながら冷めた心温かい料理に舌鼓を打った。
0
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
overdose
水姫
BL
「ほら、今日の分だよ」
いつも通りの私と喜んで受けとる君。
この関係が歪みきっていることなんてとうに分かってたんだ。それでも私は…
5/14、1時間に1話公開します。
6時間後に完結します。
安心してお読みください。
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる