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涙
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「本当だよ。どっちがというか、私、そういう感情自体が分かんないの」
ひろかは思いがけない返答に首を傾げた。
『もちろん凌に決まってるじゃない』などと返ってくると思っていたのだ。
ひろかの目には、凌はもちろん、姫乃の方にも気持ちがあるように見えていたから。
「うーん、特別に『好き』っていう感情が分からないってこと?」
「だって、その『好き』って、家族の『好き』より上なんだよね?
知り合いにもいたけど、その人のためなら死ねるっていうほど好きだったはずなのに、つきあい始めたらすぐ別れたり。
私にはよくわからない」
「う~ん、まぁそういう人もいるけど…」
ひろかは納得できないようで難しい顔をしている。
「凌のことは好きだし、本当に大切よ。
もう家族のようなものだもん。
だからわざわざ別れの可能性のあるそんな位置につけたくない」
「…本当に好きなら、家族じゃいられないよ」
「え?」
小さく呟いたひろかの言葉は風に消されてしまって、姫乃の耳には届かなかった。
「ん~ん、なんでもない。
じゃあリョウくんともなんでもないのかぁ」
「もちろんよ。
確かに強いのは認めるけど、あんな軽いの問題外だわ!」
姫乃はフンと鼻をならす。
ひろかは思いがけない返答に首を傾げた。
『もちろん凌に決まってるじゃない』などと返ってくると思っていたのだ。
ひろかの目には、凌はもちろん、姫乃の方にも気持ちがあるように見えていたから。
「うーん、特別に『好き』っていう感情が分からないってこと?」
「だって、その『好き』って、家族の『好き』より上なんだよね?
知り合いにもいたけど、その人のためなら死ねるっていうほど好きだったはずなのに、つきあい始めたらすぐ別れたり。
私にはよくわからない」
「う~ん、まぁそういう人もいるけど…」
ひろかは納得できないようで難しい顔をしている。
「凌のことは好きだし、本当に大切よ。
もう家族のようなものだもん。
だからわざわざ別れの可能性のあるそんな位置につけたくない」
「…本当に好きなら、家族じゃいられないよ」
「え?」
小さく呟いたひろかの言葉は風に消されてしまって、姫乃の耳には届かなかった。
「ん~ん、なんでもない。
じゃあリョウくんともなんでもないのかぁ」
「もちろんよ。
確かに強いのは認めるけど、あんな軽いの問題外だわ!」
姫乃はフンと鼻をならす。
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