肝試し

夜2時、学校で

弘樹の話はなんてことはなかった。

この学校には友達がいなくて自殺してしまった生徒の幽霊が出て、夜にその幽霊に会うとあの世に連れて行かれてしまうというものだ。


「つまんねー…お前、この話のどこがそんなに怖いんだよ」

ありきたりすぎるし、と付け加えて将生は弘樹に軽蔑の眼差しを向けた。


「怖だろぉ!?実際にあった話なんだって！数年前に卒業生が行方不明になった事件あったじゃん！肝試し中にその幽霊に連れて行かれたんだって。」

「自殺した生徒がいるなんて話聞いたことないよ…」

その話が本当なら、こんな小さな村にはあっという間に広まっていて知らないはずがない。
俺は半ば呆れながらそう言って弘樹を見た。
なんでもすぐ素直に信じる奴なのだ。


「いじめで自殺者が出たなんて村の評判が落ちるから箝口令が敷かれて誰も当時のことを話そうとしないらしいぜ」

弘樹は反論するようにそう言った。


「じゃあ、やる？」

「え？」

将生の言葉に、俺たちは一斉にそちらに視線を向けた。

「だから、肝試し。最近刺激なくて退屈だったし。それとも何、怖い？幽霊が？それとも作り話だってバレるのが？」

将生はニヤニヤと笑いながら弘樹を挑発するように言った。
直情型の弘樹には効果抜群だ。


「バッカ！怖くねーし！作り話でもねぇ！いいぜ、やろう。今日2時、学校な！」

「オッケー。俺も暇だしな」

興味がまったくないといえば嘘になる。
俺も軽く返事をした。

「じゃあ夜2時、学校で！」
「遅れんなよ！」

俺たちはそう言って別れた。




これから起こることも、知らずにーーー。