1 / 5
声を裏返さない様に…
しおりを挟む
「ふ、降ってきたねぇ…雨」
前席の制服の背中に、私は話し掛けます。
「ねえ。持ってきた? 雨具とか…」
窓から教室の外を見ながら、山下君は頷きました。
何とか声を裏返さない様に、言葉を続けます。
「わ、私…忘れちゃって。。。」
山下君は、鞄から探し出した何かを差し出しました。
「はい」
「…何これ」
「2人分あるから。」
手渡されたのは、分厚いA5版サイズのポーチ。
「あ、雨合羽?」
頷いた山下君に、私は頭の中で抗議の声を上げます。
(そこは『傘持って来てるから、入ってく?』でしょ?!)
----------
「今日は…持ってきてないんだ? 雨具…」
教室の窓から外を眺める山下君の後ろに、私は立ちました。
「だったら…」
声を上ずらせない様に気を付けながら、ゆっくりと近づきます。
「今日 私、か、傘持ってるから、一緒に。。。」
振り返った山下君と私の間に、畳まれた傘が割り込みました。
「…竹内?」
「これ、お前の かーちゃんに頼まれた。」
手を伸ばした山下君が、傘を受け取ります。
満足気に、その場から離れようとする竹内。
反射的に立ちはだかった私は、耳の近くで囁きましたました。
「…呪うからね。」
----------
「須藤弥生!」
雨音が漏れ聞こえる廊下で、私は振り返ります。
「…フルネームを、大声で呼ぶな!」
竹内は、ゆっくりと近づいて来ました。
「おまえ…今日持ってるよな?」
「な、何を?」
「傘だよ。か・さ!」
ムッとする私。
「朝から雨が降ってる日に、持ってない訳ないでしょう!」
前に立った竹内は、右手を上げて、耳打する動作をしました。
「…協力してやる」
「?」
「相合傘…したいんだろ? 山下と。」
「ど…どうして、それを。。。」
狼狽える私に、竹内が顔を近づけます。
「─ だから…俺を呪うなよ?」
----------
「頼みがある」
下校時刻に教室に入って来た竹内は、私の前の山下君の席の横に立ちました。
「雨降ってるから…傘、貸して。」
座ったままの山下君が、隣に立った竹内を見上げます。
「どうやって、登校したんだ?」
「朝は、傘が健在だったんだ!」
「?」
「休み時間に…振り回して遊んでたら 壊れた」
こちらから見える山下君の右目は、半分閉じました。
「で…僕には、どうやって帰れと?」
竹内が、私の顔を見ます。
「須藤の傘に…入れてもらえば?」
上半身を捻って、後ろを見る山下君。
目が合った私は、ちぎれんばかりに、何回も頭を前後に振ります。。。
----------
「須藤、須藤。」
翌朝、廊下を歩いていた私の背中を竹内の指が突きました。
「どうだった? 念願の相合傘は?」
ニヤニヤ笑いから、私は目を反らします。
「お礼は言っとく。…ありがと」
「おう。」
竹内は、表情を引き締めました。
「これでもう…俺を呪う理由は、無いよな?」
右手の人差指で顎を押し、私は視線を天井に移動します。
「今後…色々と、手伝って くれる?」
「…はあ?」
「じゃないと…呪う♪」
前席の制服の背中に、私は話し掛けます。
「ねえ。持ってきた? 雨具とか…」
窓から教室の外を見ながら、山下君は頷きました。
何とか声を裏返さない様に、言葉を続けます。
「わ、私…忘れちゃって。。。」
山下君は、鞄から探し出した何かを差し出しました。
「はい」
「…何これ」
「2人分あるから。」
手渡されたのは、分厚いA5版サイズのポーチ。
「あ、雨合羽?」
頷いた山下君に、私は頭の中で抗議の声を上げます。
(そこは『傘持って来てるから、入ってく?』でしょ?!)
----------
「今日は…持ってきてないんだ? 雨具…」
教室の窓から外を眺める山下君の後ろに、私は立ちました。
「だったら…」
声を上ずらせない様に気を付けながら、ゆっくりと近づきます。
「今日 私、か、傘持ってるから、一緒に。。。」
振り返った山下君と私の間に、畳まれた傘が割り込みました。
「…竹内?」
「これ、お前の かーちゃんに頼まれた。」
手を伸ばした山下君が、傘を受け取ります。
満足気に、その場から離れようとする竹内。
反射的に立ちはだかった私は、耳の近くで囁きましたました。
「…呪うからね。」
----------
「須藤弥生!」
雨音が漏れ聞こえる廊下で、私は振り返ります。
「…フルネームを、大声で呼ぶな!」
竹内は、ゆっくりと近づいて来ました。
「おまえ…今日持ってるよな?」
「な、何を?」
「傘だよ。か・さ!」
ムッとする私。
「朝から雨が降ってる日に、持ってない訳ないでしょう!」
前に立った竹内は、右手を上げて、耳打する動作をしました。
「…協力してやる」
「?」
「相合傘…したいんだろ? 山下と。」
「ど…どうして、それを。。。」
狼狽える私に、竹内が顔を近づけます。
「─ だから…俺を呪うなよ?」
----------
「頼みがある」
下校時刻に教室に入って来た竹内は、私の前の山下君の席の横に立ちました。
「雨降ってるから…傘、貸して。」
座ったままの山下君が、隣に立った竹内を見上げます。
「どうやって、登校したんだ?」
「朝は、傘が健在だったんだ!」
「?」
「休み時間に…振り回して遊んでたら 壊れた」
こちらから見える山下君の右目は、半分閉じました。
「で…僕には、どうやって帰れと?」
竹内が、私の顔を見ます。
「須藤の傘に…入れてもらえば?」
上半身を捻って、後ろを見る山下君。
目が合った私は、ちぎれんばかりに、何回も頭を前後に振ります。。。
----------
「須藤、須藤。」
翌朝、廊下を歩いていた私の背中を竹内の指が突きました。
「どうだった? 念願の相合傘は?」
ニヤニヤ笑いから、私は目を反らします。
「お礼は言っとく。…ありがと」
「おう。」
竹内は、表情を引き締めました。
「これでもう…俺を呪う理由は、無いよな?」
右手の人差指で顎を押し、私は視線を天井に移動します。
「今後…色々と、手伝って くれる?」
「…はあ?」
「じゃないと…呪う♪」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
喫茶店奇話
紀之介
ライト文芸
喫茶店での出来事
1.2人連れの客…
2人連れの客に店主は?
2.裏通りの喫茶店。
1人で入った店で…
3.行きつけの喫茶店…
1人のテーブルに置かれた、2人分の水とおしぼり
4.カップ半分だけ…
初見の客が注文したのは、カップ半分のコーヒー
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
真銀さんとラブレター
紀之介
ライト文芸
ラブレターを出したら…
(真銀さんと野上君のお話)
*始まりのお話
秘密の。。。
放課後に野上君が、下駄箱付近をウロウロしていた訳
*パラレルな後日談
その1:大きな花丸
- 行くの?行かないの? -
その2 :赤いスタンプ
- 一緒に、何処に行く? -
その3:どうかした?
- 人生初ラブレターだから、大事に仕舞っておく♡ -
手帳!
紀之介
ライト文芸
手帳の予定に関するお話
1.週末空いてる?
スケジュール管理は手帳で?
(二葉さんと美卯さんのお話)
2.何かあるの?
植木市に行く理由
(文月さんと睦月さんのお話)
3.スケジュール。
予定されてない行動は一切取らない
じいちゃんの秘蔵品
紀之介
キャラ文芸
霜月さんが如月さんに、<じいちゃんの秘蔵品>を披露するだけのお話
1.面白いもの
2つの呪いの時計?
2.儀式書?
正しい雪乞いの仕方?
3.どういう理屈なの!?
非常識な、じいちゃんの秘蔵品
月見月は紅染月
紀之介
キャラ文芸
葉月さんのお話
1.物好き…
- 幽霊が出る場所、教えてあげる! -
(葉月さんと謎の女性のお話)
2.日付が変わった瞬間に
- とにかく、初詣に行こうか -
(葉月さんと如月さんと霜月さんのお話)
3.私だけ。
- 2人で撮った写真なのに、私だけしか写ってません -
(葉月さんと都さんのお話)
4.お願いした?
神頼みの作法?
(葉月さんと栞さんのお話)
*クッキー断ちのお話
5.気配。
画期的な願掛け?
(葉月さんと芽生子さんのお話)
6.クッキー断ち。。。
願掛けが叶う理由?
(葉月さんと如月さんのお話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる