<あの件>について

紀之介

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もしかして…

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「え…?!」

 朝、登校した僕は 下駄箱を開けて固まった。

 何故なら、中に可愛らしい封筒が入っていたから。

(も、もしかして…ラブレター?)

 慌てて周りの様子を伺う。

 近くには誰もいない。

 中の封書を、急いで上着のポケットに押し込んだ。

 乱暴に下駄箱の蓋を閉じ、歩きだそうとしたした瞬間、同じクラスの上田に声を掛けられる。

「─ おい、靴。」

「は?!」

 僕はまだ、上履きに履き替えてない事に気が付く。

 慌てて自分の下駄箱に戻り蓋を開こうとするが、何故か上手く開けない。

「西城…何をしてるんだ?」

 不審がる上田に、僕は声を上擦らせる。

「べ、別に!?」

 どうにか蓋を開き、上履きを取り出す。

 もどかしげに履き替えた後、今度は一発で蓋が開いた下駄箱に 脱いだ靴を放り込む。

「ちょ、ちょっと トイレに行ってくる!」

 鞄を放り出したまま、廊下の奥に向かって走り出す僕。

「何だ、我慢してたのかぁ」

 背中に、上田が声を投げ掛ける。

「鞄は教室に運んでおいてやるから安心しろ。漏らすなよー」

----------

 トイレに駆け混んだ僕。

 個室の扉を閉めるや否や、上着のポケットに手を突っ込む。

 取り出した封筒は、クシャクシャの一歩手前の状態だった。

 丁寧に伸ばし、深呼吸してから、軽く震える手で封を切る。

 中から出てきたのは、ピンクの便箋。

 そこには、こう書かれていた。

<あの件をバラされたくなければ、放課後に体育館の裏まで来て下さい♡>

----------

 放課後、体育館の裏。

「あ、西城く~ん~」

 そこには、見慣れない女の子が立っていた。

「私、笠原です。3組の」

「えーとぉ…」

「此処に来てくれたという事は…見てくれたんですよ? あの手紙」

 頷いた僕に、笠原さんは微笑んだ。

「それでは <あの件> について、私だけに教えて下さい♡」

----------

「えーとぉ──」

 一歩退く僕。

「い、一体、何の事?」

 その分だけ、笠原さんは前に踏み出して来る。

「だからー <あの件> についてです!」

「─ いや…」

「しらばっくれるつもりですか?」

「お、思い当たる事が、僕には ないんだけど?!」

 笠原さんはいつの間にか、僕の目前まで迫っていた。

「じゃあ、こうしましょう」

「へ…?」

「頑張って思い出してください。」

「な、何を?!」

「<あの件> に決まってます!」

 いつの間にか、体育館の壁まで追い詰められていたので、もう後ろには下がれない。

 僕の胸に、笠原さんが人差し指が突きつけられる。

「話してもらうまで、逃しませんから!!」

 ─ それがきっかけで、2人は付き合い開い始めたのだった。。。
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