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複雑な心境
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「クコピロン様、お目を お覚まし下さい」
どこかにあるスピーカーから、流れてくる声。
静かに目を開ける僕。
外から、装置の中を覗き込む女性と視線が合う。
「僕が目覚めたということは…オリジナルが?」
「はい。事故に巻き込まれて、死亡された様です」
特段 表情を変える事なく、ヒューマン・バックアップ社の担当者は続けた。
「然るべき機関から、その様な通知がありました」
「─ そうですか。」
「契約の規定に基づき、我社は、迅速に処理を行った次第です」
「実際に、準備しておいたコピー体を使う事態を迎えると言うのは…中々複雑な心境ですね。。。」
----------
「ところで、クコピロン様」
装置から出た僕に、担当者が歩み寄る。
「お体については、完全なクローンコピーですので 特に支障は ないのですが──」
「え?!」
「お客様が ご利用のコースですと…脳情報に少々問題が」
「─」
「直近にバックアップされたのが、先週の金曜日で ございますから…」
「ああ」
どうやら僕が オリジナルから引き継ぐべき記憶が、3日分程 失われてしまったらしい。
まあ それぐらいは許容するしかない。
クラウドシステムを使い、脳情報を随時バックアップ出来るサービス使用していたら、避けられた事態ではある。
が、悲しいかな僕には そんな財力はない。
最寄の施設に出向いて、週1回のバックアップを取るエコノミーコースを利用するのが 精々なのだ。
だから、多少の記憶情報が欠落は、許容するしかない。
引き継げる脳情報は完全ではないにしても、自分の存在がこの世界から消えてしまう、最悪な事態だけは 避けられたのだから。
「まあ…仕方ないですよね」
「ご理解頂け 何よりです」
担当者は、書類を差し出した。
「では この確認書に、サインを頂けますでしょうか」
----------
「─ 意識が お戻りですか」
瞼を開いた僕の耳に、どこかにあるスピーカーからの声が届く。
それは 聞き覚えがある、ヒューマン・バックアップ社の担当者の声だった。
「何で僕は…こんな所に……」
「契約書の緊急事態条項に基づき、コピー体を回収した結果です」
「状況が、良く解らないんですけど──」
「…4時間程前に、クコピロン様の死亡が誤りである事が確認されました」
「え?!」
装置の中に入れられている事が、不安を掻き立てる。
「…僕を どうするつもりですか?」
「誤って覚醒したコピー体は、規定に基づき 速やかに処分されなければいけません」
僕の頭が、真っ白になる。
「新しいコピー体は、我社の負担で作成いたしますので、ご安心下さい」
「な、何故僕が 消されないといけないんですか!」
「こう言うトラブルが発生した際には、オリジナル体を残し コピー体を処分すると、契約書に明示しております」
「僕は、消されたくない!」
「コピー体が消えても、オリジナル体が健在ですので、<クコピロン>と言う人間は 引き続きこの世界に存在し続けます」
「今ここに…こうしてある 僕の人格は、消えてしまうじゃないですか!!」
スピーカーから流れる声は、淡々としていた。
「あなた固有の<感情や思い>などに、たいした意味はありません。<クコピロン>と言う個体が持つ 記憶や思考形態と言う脳情報を、この世界に保持しする事こそが重要なのです」
「それは、ただの理屈だ!」
「人間のバックアップとは、そう言う思想に基づくサービスです。そもそも、<コピー体のあなた>が今ここに存在するのは、<オリジナル体のあなた>が、それを承知の上で 我社と契約を結ばれたからなのですよ?」
二の句が告げずにいる僕に、担当者は事務的に言った。
「─ 準備が整いましたので、処理を開始させて頂きます」
「ひ、人殺し!!」
「オリジナル体が健在な場合、コピー体は法的には人間として扱われませんから、決して殺人ではありません──」
どこかにあるスピーカーから、流れてくる声。
静かに目を開ける僕。
外から、装置の中を覗き込む女性と視線が合う。
「僕が目覚めたということは…オリジナルが?」
「はい。事故に巻き込まれて、死亡された様です」
特段 表情を変える事なく、ヒューマン・バックアップ社の担当者は続けた。
「然るべき機関から、その様な通知がありました」
「─ そうですか。」
「契約の規定に基づき、我社は、迅速に処理を行った次第です」
「実際に、準備しておいたコピー体を使う事態を迎えると言うのは…中々複雑な心境ですね。。。」
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「ところで、クコピロン様」
装置から出た僕に、担当者が歩み寄る。
「お体については、完全なクローンコピーですので 特に支障は ないのですが──」
「え?!」
「お客様が ご利用のコースですと…脳情報に少々問題が」
「─」
「直近にバックアップされたのが、先週の金曜日で ございますから…」
「ああ」
どうやら僕が オリジナルから引き継ぐべき記憶が、3日分程 失われてしまったらしい。
まあ それぐらいは許容するしかない。
クラウドシステムを使い、脳情報を随時バックアップ出来るサービス使用していたら、避けられた事態ではある。
が、悲しいかな僕には そんな財力はない。
最寄の施設に出向いて、週1回のバックアップを取るエコノミーコースを利用するのが 精々なのだ。
だから、多少の記憶情報が欠落は、許容するしかない。
引き継げる脳情報は完全ではないにしても、自分の存在がこの世界から消えてしまう、最悪な事態だけは 避けられたのだから。
「まあ…仕方ないですよね」
「ご理解頂け 何よりです」
担当者は、書類を差し出した。
「では この確認書に、サインを頂けますでしょうか」
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「─ 意識が お戻りですか」
瞼を開いた僕の耳に、どこかにあるスピーカーからの声が届く。
それは 聞き覚えがある、ヒューマン・バックアップ社の担当者の声だった。
「何で僕は…こんな所に……」
「契約書の緊急事態条項に基づき、コピー体を回収した結果です」
「状況が、良く解らないんですけど──」
「…4時間程前に、クコピロン様の死亡が誤りである事が確認されました」
「え?!」
装置の中に入れられている事が、不安を掻き立てる。
「…僕を どうするつもりですか?」
「誤って覚醒したコピー体は、規定に基づき 速やかに処分されなければいけません」
僕の頭が、真っ白になる。
「新しいコピー体は、我社の負担で作成いたしますので、ご安心下さい」
「な、何故僕が 消されないといけないんですか!」
「こう言うトラブルが発生した際には、オリジナル体を残し コピー体を処分すると、契約書に明示しております」
「僕は、消されたくない!」
「コピー体が消えても、オリジナル体が健在ですので、<クコピロン>と言う人間は 引き続きこの世界に存在し続けます」
「今ここに…こうしてある 僕の人格は、消えてしまうじゃないですか!!」
スピーカーから流れる声は、淡々としていた。
「あなた固有の<感情や思い>などに、たいした意味はありません。<クコピロン>と言う個体が持つ 記憶や思考形態と言う脳情報を、この世界に保持しする事こそが重要なのです」
「それは、ただの理屈だ!」
「人間のバックアップとは、そう言う思想に基づくサービスです。そもそも、<コピー体のあなた>が今ここに存在するのは、<オリジナル体のあなた>が、それを承知の上で 我社と契約を結ばれたからなのですよ?」
二の句が告げずにいる僕に、担当者は事務的に言った。
「─ 準備が整いましたので、処理を開始させて頂きます」
「ひ、人殺し!!」
「オリジナル体が健在な場合、コピー体は法的には人間として扱われませんから、決して殺人ではありません──」
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