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第19章 がんばれ! 新人くん!

10 仲間入り

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 紙のめくれる音。この緊張感——。自分の書類を精査されているみたいで怖い。隣に立っている十文字はもっと緊張しているようだ。

 時計の針は午後五時を回ったところ。定時ギリギリだった。

 保住の最初の一言が怖い。田口ですらそう思った。

 プライベートではなんでも話せるのに、職場では、やはり上司で先輩なのだ。隣にいる十文字は倒れそうだ。顔色も悪いし本当に限界である。

「しっかり」

「頑張れ」

 心の中でそう繰り返し言葉をかけていると、保住が書類を机に置いた。

「まあギリギリだけど、よしとしよう」

「ほ、本当ですか?」

 十文字は目を瞬かせた。

「頑張ったな。十文字。最初の物から比べると遥かにいい」

 保住の笑顔は眩しい。谷口が口を挟む。

「因みに何点ですか?」

 保住は「そうですね」と考え込んでから悪びれもなく言い放つ。

「そうですね。55点ですかね」

「田口より低っ!」

「いや、どちらもどちらだな」

 渡辺は腕組みをして、ニヤニヤしていた。

「佐久間局長は出張だ。明日、朝一に企画書のプレゼンして、オッケーもらったら話を進めよう」

「は、はい!!」

 十文字は田口を見上げた。

「田口さん、本当に本当にありがとうございます!」

「おれはなにも。十文字が頑張ったんじゃない。今日は、ゆっくり休んで」

「はい!」

「十文字の歓迎会は今週末にしましょうか」

 渡辺の提案に保住は頷く。

「大分遅れたが、企画書が出来たら仲間入りの儀式が通例だ。歓迎会だな」

「ありがとうございます!」

 ヘロヘロな十文字は笑顔だ。これで彼も仲間入り。

 ——そう。これで。



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