1 / 1
婚約者が豚すぎてマジで無理。五感全部で無理キモイ。 やっと婚約破棄を告げてくれたので決闘で殺します。 長かったわ。でも強い所は好きでした。
しおりを挟む魔人が襲撃してくる目標が巫女だった場合と、獣人達だった場合では対処が全然変わってくることになる。
「只人のはるひ様が襲われたと言うことは……っ今すぐこの村人の避難をさせなさい。戻れないことも念頭に、すみやかに!」
さっと後ろに控える護衛兵士達に叫ぶスティオンに、慌てて首を振ってみせた。
「あのっ待ってください! 違う かも、なんです……もしかしたらですけど…………」
スティオンを遮ったオレに、かすが兄さんは困惑した瞳を向けてから首を振る。
「スティオン、指示は他に任せて先にはるひの治療を」
「わかりました。どうぞ中に、道具を持ってきますのでその間に浄化をお願いします」
さっと宿に駆け込んでいったのを見ると、この宿がかすが兄さん達の拠点なんだろう。
「とにもかくにも、傷の手当だ、怖かったろう? すぐに浄化してあげるから……」
オレの右手に手をかざそうとしたのを遮って首を振ると、かすが兄さんは困ったように柳眉をほんの少し寄せてどうした? と言う表情を作ってみせる。
「その黒いシミを消してしまうだけだから、痛かったり苦しかったりするものじゃないよ? いつも浄化の光を当てているだろう? あれと一緒だ、だから安心して……」
にこにこと再び手を伸ばそうとしてくるのを止め、オレは右手を胸の前まで持ち上げた。
右手は小さな子供が黒いマジックで落書きしたかのような黒いシミの筋が、幾本も幾本も絡まるように肘近くまで這っている。
それが、あの魔人の這った後なのだと思うと……
本能が引き起こす嫌悪からくる吐き気に、ぐっと喉が鳴った。
「怪我が痛むんだろう? 早く治療しよう!」
「見ててください。きっと、魔人がオレを襲った原因だと思うんです」
「な に 」
神の寵愛が厚いと言われるかすが兄さんの前で力を使うことに抵抗がなかったわけじゃない。
なんでオレが? とか、只人なのに? とかいろいろな葛藤が胸をチクチクと刺激したけれど、魔人が巫女以外を襲うのか襲わないのかの判断を誤ってしまうのはまずいと思った。
「 ──── 」
すぅっと息を吸い込む瞬間、いつもより清浄な空気が肺に入った気がした。
明確なこれだと説明できることはなかったのだけれど、それでもオレは自分の体内にかすが兄さんとよく似たものがあるんだってことがどうしてだか感じ取ることができて……
それをすくい上げるように気持ちを込めてやれば、クラドに見せた時のように銀色の雫をころころと掌で躍らせてみせる。
美しい銀色の球は水のようにぐにぐにと形を変えながらかすが兄さんの顔を映し込んだ。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。
夢草 蝶
恋愛
子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。
しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。
心がすり減っていくエレインは、ある日思った。
──もう、いいのではないでしょうか。
とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

悪役令嬢は蚊帳の外です。
豆狸
ファンタジー
「グローリア。ここにいるシャンデは隣国ツヴァイリングの王女だ。隣国国王の愛妾殿の娘として生まれたが、王妃によって攫われ我がシュティーア王国の貧民街に捨てられた。侯爵令嬢でなくなった貴様には、これまでのシャンデに対する暴言への不敬罪が……」
「いえ、違います」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる