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佐野龍二との待ち合わせ
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「トルルルル!トルルルル!」
美幸の携帯に連絡を入れた勧だった。
「もしもし…」
携帯から男の声が聞こえた。
ヤバイ!と思ったが、もはやどうにでもなれの心境だった。
「柊と申しますが、美幸さんおられますか?」
正面からいくしかなかった勧だったが、
「私は美幸の父親で佐野龍二と申します。娘から少し話は聞いています。
明日仕事が終わってからお話がしたいのですが、ご都合はつけていただけますね…!」
会わないとは言えるはずもない!
だがその前に美幸とどうしても話がしたかった…。
美幸さんと話をさせてください。と喉までその言葉が出たが、父親の話し方ではまず話をさせてくれるとは思えなかった。
勧にしてみればもしも身篭っていたとしたらなば、一緒になっても構わないとさえ考えていたのである。
ただ、美幸にその意思はあるのかを聞きたかったのである。
勧には美幸と話をする前に父親と話をしなくてはいけなくなった。
病院の仕事を終えてすぐに美幸と行ったラウンジに今度は美幸の父親と会う約束でホテルに着いた。
六時半に約束をしていたが、勧は十分ほど前についた。
ラウンジに入ると美幸と一緒に座った席に五十過ぎと思われる渋いグレーのスーツを着た紳士が座っていた。
おそらくその人が美幸の父親であろう…。
一目見たときにそう感じた自分がいた。
目の前に行き深々と頭を下げてから席に座った。
その紳士は目があった瞬間に「あなたが柊さんですか?」
とすぐに聞いてきた。
やはりこの人か…!
「私が柊勧です」
まず自分の名を名乗った。
紳士は席を立つことなくすかさず胸元のポケットから名刺入れを取り出して名刺を一枚差し出した。
?弁護士…?
差し出された名刺には弁護士佐野龍二と表示があった。
佐野という名は美幸と同じだ。
ということは…。
「佐野美幸の父親の佐野龍二と申します」
やはり父親か…。
「柊勧と申します」
自分も身分を偽る事など出来るはずもなく上着のポケットから名刺を取り出して病院の名刺を渡した。
「やはり柊さんは大学病院の医師でしたか?」
佐野龍二は二度ほど頷きながらそう答えた。
「美幸と午前中に産婦人科に行ってきました」
龍二の口から恐れていた言葉が発せられた。
「妊娠三ヶ月目に入ったと言われました」
テーブルの上に差し出されたのは井原産婦人科の妊娠を知らせる診断書であった。
井原産婦人科とは勧の勤める大学病院から車で二時間ほどかかる場所にあった。
「近くの病院では人の目がありますから離れた病院で診察を受けたのです」
産婦人科ゆえ、近くでは診察など受けれるはずもない。
それは勧には十分に理解できた。
「美幸さんは何と…?」
勧は美幸の気持ちを聞いた。
「良く考えてみてください…。
美幸は高校三年生ですよ…。
私たちのたった一人の娘なんです。
普通の親なら高校くらいは普通に卒業してほしいと願うのが当たり前と違いますか…?」
耳に痛い言葉であった。
手塩にかけた娘が高校生の時に妊娠したのである。
逆の立場ならば殺しかねない場面だろう。
勧は言葉を失っていた。
いくら理性を失っていたとはいえ、そんなことは言い訳になるわけがない。
勧は黙ってこうべを垂れているしかなかった。
「美幸はあなたのことが好きらしい…。
でも私の気持ちも考えてみてください。
子供を産むということは学校は辞めろと言うことなんですよ!」
言われるとおりである。
お腹のおっきいままに学校に通う事など出来るはずはない。
高校は辞めなければならなくなる。
絶対絶命であった。
しかしその中で少し勧が嬉しかったのは美幸が好いてくれていると龍二が言ってくれた事であった。
だが次の言葉を聞いた時に勧は人生の最大の危機であることを実感した。
美幸の携帯に連絡を入れた勧だった。
「もしもし…」
携帯から男の声が聞こえた。
ヤバイ!と思ったが、もはやどうにでもなれの心境だった。
「柊と申しますが、美幸さんおられますか?」
正面からいくしかなかった勧だったが、
「私は美幸の父親で佐野龍二と申します。娘から少し話は聞いています。
明日仕事が終わってからお話がしたいのですが、ご都合はつけていただけますね…!」
会わないとは言えるはずもない!
だがその前に美幸とどうしても話がしたかった…。
美幸さんと話をさせてください。と喉までその言葉が出たが、父親の話し方ではまず話をさせてくれるとは思えなかった。
勧にしてみればもしも身篭っていたとしたらなば、一緒になっても構わないとさえ考えていたのである。
ただ、美幸にその意思はあるのかを聞きたかったのである。
勧には美幸と話をする前に父親と話をしなくてはいけなくなった。
病院の仕事を終えてすぐに美幸と行ったラウンジに今度は美幸の父親と会う約束でホテルに着いた。
六時半に約束をしていたが、勧は十分ほど前についた。
ラウンジに入ると美幸と一緒に座った席に五十過ぎと思われる渋いグレーのスーツを着た紳士が座っていた。
おそらくその人が美幸の父親であろう…。
一目見たときにそう感じた自分がいた。
目の前に行き深々と頭を下げてから席に座った。
その紳士は目があった瞬間に「あなたが柊さんですか?」
とすぐに聞いてきた。
やはりこの人か…!
「私が柊勧です」
まず自分の名を名乗った。
紳士は席を立つことなくすかさず胸元のポケットから名刺入れを取り出して名刺を一枚差し出した。
?弁護士…?
差し出された名刺には弁護士佐野龍二と表示があった。
佐野という名は美幸と同じだ。
ということは…。
「佐野美幸の父親の佐野龍二と申します」
やはり父親か…。
「柊勧と申します」
自分も身分を偽る事など出来るはずもなく上着のポケットから名刺を取り出して病院の名刺を渡した。
「やはり柊さんは大学病院の医師でしたか?」
佐野龍二は二度ほど頷きながらそう答えた。
「美幸と午前中に産婦人科に行ってきました」
龍二の口から恐れていた言葉が発せられた。
「妊娠三ヶ月目に入ったと言われました」
テーブルの上に差し出されたのは井原産婦人科の妊娠を知らせる診断書であった。
井原産婦人科とは勧の勤める大学病院から車で二時間ほどかかる場所にあった。
「近くの病院では人の目がありますから離れた病院で診察を受けたのです」
産婦人科ゆえ、近くでは診察など受けれるはずもない。
それは勧には十分に理解できた。
「美幸さんは何と…?」
勧は美幸の気持ちを聞いた。
「良く考えてみてください…。
美幸は高校三年生ですよ…。
私たちのたった一人の娘なんです。
普通の親なら高校くらいは普通に卒業してほしいと願うのが当たり前と違いますか…?」
耳に痛い言葉であった。
手塩にかけた娘が高校生の時に妊娠したのである。
逆の立場ならば殺しかねない場面だろう。
勧は言葉を失っていた。
いくら理性を失っていたとはいえ、そんなことは言い訳になるわけがない。
勧は黙ってこうべを垂れているしかなかった。
「美幸はあなたのことが好きらしい…。
でも私の気持ちも考えてみてください。
子供を産むということは学校は辞めろと言うことなんですよ!」
言われるとおりである。
お腹のおっきいままに学校に通う事など出来るはずはない。
高校は辞めなければならなくなる。
絶対絶命であった。
しかしその中で少し勧が嬉しかったのは美幸が好いてくれていると龍二が言ってくれた事であった。
だが次の言葉を聞いた時に勧は人生の最大の危機であることを実感した。
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