罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

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システム崩壊?

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こんな事が長く続いたのが不思議なくらいだ。
毎日のように飲み歩く日々は続き、自分の店でも飲み続けていたツケはきた。
先ずは入院だ。
今回の入院は精神病院ではなく総合病院だった。
安静だけではなくMRIでいろんなところを見てもらわなくてはならない。
精神病院にはそんな設備はない。
雑居部屋だったが、一人部屋がやはり気楽なので個室を頼む。
精神病院のように安くはない。
一日一万円の別料金である。
しかし全く雑居部屋とは違う。
他の人に気兼ねの必要がないのだ。
高い金を出してまで個室をとる必要はないのだが、少しでも快適に入院生活を送りたいが為だけの事だった。
総合病院に入院して一週間が経った頃、メンバーの一人から携帯に連絡が入った。
病院内で揉め事を起こしたらしい。
メンバー同士の喧嘩が勃発したとのことだった。
本人らに連絡を取って事情を聞いたが、何でも病院内で暴れた為、一人は強制退院になってしまったらしい。
強制退院になったメンバーは最初のメンバーの知り合いで見るからにチンピラ風の男だった。
その男は今回二度目の入院だったのだが、前回もメンバーと揉めた前科があったが目をつぶっていたのだ。
入院してわずか一週間の退院で金は渡せないと話すと、「じゃあ警察に行って全部話す!」
と脅してきたのだ。
当然自分も捕まるのだが、
私は主犯格の為、罪はそいつの比にならないほど重い。
それをわかって脅してきたのだ。
こんなチンピラの脅しに屈する理由にはいかない。
が、万が一でも警察に行かれたら…?
その思いが私の脳裏をかすめた…!
冷静になって考えた。
その男と言い争っても何にもいい事はない。
私は確か入院して退院した時に百五十万円渡すと約束をした。
だが、それは二ヶ月間入院した場合の事だ。
八日しか入院していなくて、しかも強制退院させられてるのだからもしかしたら八日分の保険金も支払われない可能性がある。
私は向こうの言い分を聞いた。
確かに喧嘩をして強制退院にはなった。
だが、自分は言われた通りにちゃんと入院はした。
喧嘩は向こうが仕掛けてきたものだから買っただけだ…、と言い放った。
私はこの話を聞いた時に(こいつとは何を話しても無駄だ!)と感じたのだ。
私は私一人で決められることではないので明日まで返答は待ってくれ…と答えた。
私の上にヤクザが絡んでいる的な言い方をしたのである。
そいつは一日答えを待つと言った。
私はどうするのが一番の得策かを考えなくてはならなかった。
次の日に私は帯のついた百万円を持ってその男と会った。
会ったと言っても私が入院している部屋に呼んだのだ。
そしてこう話した。
「これでもうなしにしよう。
こっちも何も言わないし、あんたにも非があったのかもしれん。
こっちも何も言わないからこれで終わりにしないか…」
少し間が開いたが、二、三度頷いて金を受け取った。
「二度がみは無しだぞ!」
私は帰ろうとする男に呟いた。
今度は一度だけ頷いて部屋を出た。
それが衰退の始まりだとはその時は気付く術もなかった。
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