罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

文字の大きさ
上 下
18 / 23

メンバー

しおりを挟む
私は人を集めて入院させる事にした。
自分でも後、半年経てばまた同じ病名で入院することはできる。
だが、半年間待たなくてはならない。
ならば人数を集めて入院させる方が手っ取り早いと思ったのだ。
それにはシステムを考えなくてはならなかった。
システムと言ってもたくさんある。
どこと何処の保険会社に入るか?
何社入るか?
その人の保険料ば誰が払うのか?
入院して、退院した時にその人にいくら払うのか?
どうやってそのメンバーを集めるのか?
他に決めなくてはいけないことは山ほどあった。
捕まる可能性は私的にはゼロに近いと思っていたが、所詮は保険金詐欺である。
やり方を間違えるとすぐに捕まる可能性はあるのだ。
だが、捕まる可能性があるのは保険会社に給付金を請求する事だけである。
他の行為は、本人にしかわからないわけだから、私にしてみれば捕まる可能性の低い犯罪だと思っていたのだ。
金がほしいメンバーはすぐに何人かの目星はついた。
後はシステムさえ作り上げれば良い。
金がほしいわけだからそれに見合う金額を提示する必要があった。
何社の保険会社に入るかで渡せる金額は変わる。
そこをよく考える必要があった。
私は四社の保険会社だったが、もう少し増やしてもいいのではないかと考えた。
六社から7社の保険会社に資料の請求を出したのだった。
とにかく7社の保険に入ることにした。
保険料は年代によって異なる。
もちろん若い方が安い。
出来るだけ若い年代を選びたかったが、まずは一人目は四十の男性にした。
生活保護を受ける寸前のギャンブル依存症で総額百三十万円の支払いの約束をして入院時に前金で二十万円渡すことで合意した。
7社の保険料は月々三万五千円だった。
七社も入るとそのくらいはかかる。だが二ヶ月後の給付金の総額は四百万円は下らない。
その男に渡す金と入院代、保険料を差し引いても私の手元には二百万円は残る計算だった。
ただし保険に入ってやはり半年くらい経たないと入院は危険だと判断して半年間は待つことにした。
そして私はその半年の間に後五人の男性を保険に入れたのであった。
その間のお金はやりくりはしんどかったが、半年後からの私は一気に懐が暖かくなっていったのである。
私が退院して金が入ってから場外馬券売り場で松本に会った。
私は約束の金十万円を渡した。
こいつの話がなければ私は何時迄も乞食の様な生活を続けなければならなかったであろう。
本来ならもっと渡すべきだろうがそんなバカなことは止めた。
そしてこのシステムで他の人間を入院させることなど松本に話す理由はない。
別に自分が自分なりに決めたシステムなのだから誰に遠慮する事はなかった。
そして私は自分でも半年後にまた病院に入院して約一年後には自分の金で飲み屋をやるまでになっていたのである。
入院するメンバーは少し増えて十人くらいになっていた。
しかも半年以上過ぎればまた同じ病名での入院は可能で、私は有頂天になっていたのである。
そんな犯罪で掴んだ金で潤う時期が続くわけはない。
まだ捕まることなどなかったが、私はまたしてもドジな行動を取ってしまったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一行日記 五月

犬束
エッセイ・ノンフィクション
米麹ダイエット続行中!(一ヵ月以上続けたけど、効果がなく、挫折しちゃったよ) 見たテレビ番組や映画、読んだ本の記録。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

七絃──キンのコト雑記

国香
エッセイ・ノンフィクション
琴をキンと読めないあなた! コトとごっちゃにしているあなた! 小説『七絃灌頂血脉』シリーズを読んで、意味不明だったという方も、こちらへどうぞ。 本編『七絃灌頂血脉──琴の琴ものがたり』の虎の巻です。 小説中の難解な楽器や音楽等について、解説しています。 これを読めば、本編の???が少しは解消するかもしれません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

先日、恋人が好きじゃなくなりました。

さとう たなか
エッセイ・ノンフィクション
同性の恋人にふられた作者が、相手に振られた直後PCやノートに打ち殴り書いた文章です。 なぜだか語り口調です。 記憶がないので理由が説明できません(笑) 最近、我を取り戻し見直してみた所、相当病んでいたのか、大量に文章があったので、これはもったいないなと、思ったのでメモとして残すことにしました。 相手の名前は伏せて、その時書いたものをそのままにしております。 情緒不安定でイタい仕上がりになっておりますがご了承ください。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

ポケっこの独り言

ポケっこ
エッセイ・ノンフィクション
ポケっこです。 ここでは日常の不満とかを書くだけのものです。しょーもないですね。 俺の思ってることをそのまま書いたものです。 気まぐれ更新ですが、是非どうぞ。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

処理中です...