罪人(つみびと)

黒崎伸一郎

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やってはいけない事…。
それはノミ行為と野球賭博だった。
昔の麻雀屋といえば、競馬や競輪のノミ行為と野球賭博をする店が沢山あった。
ヤクザを通して金を賭ける行為である。
パチンコや競馬程度(?)なら文は許してくれていたが、野球賭博までいくとそうはいかない。
現実に競馬のノミ行為では毎週何万もの金を賭けていたし、野球賭博に至っては一試合十万以上かける事はザラにあった。
プロ野球な試合は一日六試合ある。
野球賭博の支払いは毎週月曜日となっていたので現金を持っていなくても賭けはできる。
当たり前のことだが、負ければ月曜日に支払わなくてはならない。
最初の頃は小さくかけていたが(小さくと言っても一試合三万円から五万円くらい)、最後の方になると一試合三十万円以上かける事があった。
勝つ事もたまにはあったが、負ける方が圧倒的に多い。
一試合に何十万も賭けているので当然お好み焼きを焼いていてもテレビに夢中になる。
そこまで野球ファンではない私が毎回テレビに釘付けになれば、誰でもおかしい?と気づく。
挙げ句の果てには野球賭博をやっていた紙を文に見られてしまったのである。
最初のうちは野球賭博のことは否定していたが、やがてはバレて麻雀屋にも行くのを禁止される。
だが隠れていく様になる。
最後には支払いも出来なくなり親に頭を下げて借りるという始末だった。
金輪際野球賭博はやらないと誓って何とか許してもらうが、他のギャンブルへと移行するだけの情けない男だった。
そうするうちに文が妊娠をしたのである。
杏が五歳になる時だった。
家族が増えようとしていたのに悲しいかな私のギャンブル癖は一向に治ることはなかった。
程なく次女春が産まれた。
杏と比べると少し小さな二千八百グラムの赤ちゃんだった。
顔が小さく美人だ…!
本当は男の子が欲しかったが元気ならいい!
この時にはまだ文の心には何とかしてやり直してほしい…という思いがあったのは今はの私には痛いほどわかる。
何故この時に心を入れ替える事ができなかったのだろう…?
それは私の歩んだ人生の身勝手さを考えればすぐにわかる。
人の気持ちがわからず、自分の事だけを考えているエゴの塊なのだ。
好きな事を好きなようにやってきた。
その人生観はすぐには変わらない。
春が産まれた後も私のギャンブルはやめる事なく続いていた。
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