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ユイは俊樹に好意を持った感じで接してきた。
初めて会ったのに、何度も話をしてきた感覚に陥った俊樹は、自分が来月結婚式をあげることを話してしまう。
それは俊樹が自分自身の無意識な行動に、ブレーキをかけるためでもあった。
「そうなんだ…。だったらもう一度乾杯しなくちゃ…。結婚に乾杯!」
三度目の乾杯をするためにグラスを傾けるユイに、俊樹は内心ほっとしながらグラスに並々と注がれた赤ワインを飲み干した。
ほっとしたと言うのは、ユイと飲んだ後に勢いでセックスまで至るということは、結婚というワードを出したことで、ユイとの今夜のセックスはなしであると俊樹は思い込んだ。
その思い込みは俊樹の一方的なものではあったが、俊樹とってそう思い込む事で少し肩の荷が降りた感じがしたのだった。
「嘘…、付き合って三ヶ月間セックスをさせてもらってないの…?
それって、男の人にとって拷問じゃない?」
信じられないという顔をしながらユイが俊樹のワイングラスにワインを注いだ。
俊樹と典英は、昔からいい女といる時、つまり勝負できる女性の場合は必ずと言っていいほど、赤ワインを開ける。
そこまでワインにこだわってはいないが、赤の方が白とかロゼよりも体にいい感じがしていて、なによりも、赤ワインという言葉がゴージャスなイメージを俊樹に与えてくれた。
二本目の赤も半分くらい飲んだ時に、「俊樹…、俺たちちょっと外に行って風にあたってくるから…」
そう言うと、典英は美人系の女性の肩を抱き、ドアを開けて二人で外に出て行った。
「おい、典英…」
だが、俊樹が呼び止めるのが聞こえなかったように、ドアは早々と閉まった。
「あ~あ…、行っちゃった。
彼、咲さんの好みだったみたい。
もう今夜は帰ってこないわね。」
「えっ、帰って来ないって…。何時もこんななの?その咲さんって人?」
首を少し傾けながら、「いつもってわけじゃないけど、自分の好みの人がいたら、そんな感じかしら…。
あっ、私は違うわよ。だって私はガード硬いもん。」
そう言って俊樹を見つめる目は、そんなにガードが固そうな感じには見えなかった。
「いいじゃない。私たちは私たちで飲みましょう…。まだ夜は長いんだし、愚痴も聞いてあげるわよ!」
なんて優しいんだ。
友達が一夜限りのランデブーに出かけたというのに、自分は置いてきぼりの僕の愚痴を夜な夜な聞いてくれるという。
ユイの手を握り、一人で何度も頷きながらワインを飲み干した。

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