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為せば成る
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阪神第7レースが始まった時にメールが鳴った。
ダート千四百メートルで十六頭の競馬だった。
直線に入って私の買っている馬券の二頭がデットヒートを繰り広げていた。
「そのままー、そのままー」私は声を上げた。
そのままの状態でゴールすれば三着に何が来ても三連単の当たりである。
三番手には人気薄が来てたので十万円はつく。
それを特券(今はあまり言わないが千円券のこと)で買っていたので百万円は軽く超えるので「よし、取った!」と思わず叫ぼうとした。
だが、そのところに大外から十五番人気のブービー人気の馬が矢の如く飛んできて写真判定になった。
(頼む!外から来た馬は三着であってくれ!)
長い長い写真判定の結果その馬が二着になり私の馬券は外れてしまった。
(せめて写真判定で同着なら六万円の配当だから六十万円にはなっていたのに…。結局その後もいいところなしで負けてしまったのだった。
私は直美からメールがきたのを忘れていたわけではない。
五時に駅前のデパートでの待ち合わせのメールをちゃんと見て五時前にタクシーで着くつもりだった。
(え!)私は熱くなってたつもりはなかったが、それからの直美からのメールに気付いていなかった。
(早く終わったから四時から待ってるから!)
大変だ。(一時間近く待たすことになる)私はタクシーに乗り直美にごめん。
「仕事中でメールを今見た!」と言ってごまかすしかなかった。
駅前も混んでいて結局待ち合わせの場所に着いたのは五時を少し回っていた。
「ごめん!メール来てたのわかんなかったんだ」
「いいの!私が勝手に待ってただけだから気にしないで!」
とは言ったが直美は必ず約束の時間より早く来て相手を待つ女性だ。
一時間半くらいは待っていたに違いない。
「ごめん。この通りだ!」と道端で土下座をした。
自分でもなんでこんなことをするのかわからなかった。
ただ、こんな可愛い女性を待たして下らん競馬なんかをやっていた自分が情けなく、直美に本当にすまないと思ったのだ。
突然土下座をする私に驚いて
「何?何?、恥ずかしいから早く立ち上がってよ!」と私の腕を持ち上げ起こそうとした。
立ち上がった私は「本当にごめんな!」と誤った。
土下座して謝る意味が全くわからない。直美は何度も首を振ったが、少し経つと笑顔で「お腹すいた!なんか食べにいこ!」と私の左腕に直美の右腕を差し込み何時もみたいにグイグイと歩き出した。
直美のリクエストでおいしいハンバーグを食べにレストランに入った。
いつものように赤ワインにグラス二つ、オレンジジュースを注文してからハンバーグを頼んだ。
ハンバーグが来るまでハムとチーズを頼みグラスにワインを入れ偉大な直美に乾杯した。
直美は前回の全国大会の話を始めた。
準決勝まで全てストレートで勝ち進み、準決勝も一ゲームは落としたものの勝ち上がった。
決勝は第一シードの鳴り物入りの選手と対戦だったらしい。
途中までは直美はリードしていたんだけど何せ一年間練習もしてなく、たった一ヶ月の練習でしかも一日何試合もした最後の試合で握力がなくなり、最後はラケットすら持てなくなって負けたとのことだった。
なんでそこまで頑張れたのかを直美は教えてくれた。
それは入院費と手術費用は大学が出してくれると言った手前、大学からの誘いがなければ絶対に両親はどうやってお金を捻出したのかと疑問を持ち心配をする。
だから直美はどんなに苦しくても決勝まではいって大学から声をかけてもらおうと思ったのだった。
決勝では結局二位に入ったことで張ってきた気が抜けた感じになったのかも知れなかった。
結局直美は知らず知らずのうちに逆転の発想をしていたのではないかと思った。私からお金を預かったなどと言う事ができない直美は、もし全国大会で二位以内に入ればお父さんの手術代を立て替えてくれる。
だから心配しないで、と母親には言ったが、直美は頑張れば必ずなんとかなると信じて練習して本当になんとかした。
でも実際、大学はそんなお金は貸さないしそんなこと言うわけはないからよく考えたらわかることだ。
けれど、為せば成るを実行した直美はやはりすごい女性だった。
ダート千四百メートルで十六頭の競馬だった。
直線に入って私の買っている馬券の二頭がデットヒートを繰り広げていた。
「そのままー、そのままー」私は声を上げた。
そのままの状態でゴールすれば三着に何が来ても三連単の当たりである。
三番手には人気薄が来てたので十万円はつく。
それを特券(今はあまり言わないが千円券のこと)で買っていたので百万円は軽く超えるので「よし、取った!」と思わず叫ぼうとした。
だが、そのところに大外から十五番人気のブービー人気の馬が矢の如く飛んできて写真判定になった。
(頼む!外から来た馬は三着であってくれ!)
長い長い写真判定の結果その馬が二着になり私の馬券は外れてしまった。
(せめて写真判定で同着なら六万円の配当だから六十万円にはなっていたのに…。結局その後もいいところなしで負けてしまったのだった。
私は直美からメールがきたのを忘れていたわけではない。
五時に駅前のデパートでの待ち合わせのメールをちゃんと見て五時前にタクシーで着くつもりだった。
(え!)私は熱くなってたつもりはなかったが、それからの直美からのメールに気付いていなかった。
(早く終わったから四時から待ってるから!)
大変だ。(一時間近く待たすことになる)私はタクシーに乗り直美にごめん。
「仕事中でメールを今見た!」と言ってごまかすしかなかった。
駅前も混んでいて結局待ち合わせの場所に着いたのは五時を少し回っていた。
「ごめん!メール来てたのわかんなかったんだ」
「いいの!私が勝手に待ってただけだから気にしないで!」
とは言ったが直美は必ず約束の時間より早く来て相手を待つ女性だ。
一時間半くらいは待っていたに違いない。
「ごめん。この通りだ!」と道端で土下座をした。
自分でもなんでこんなことをするのかわからなかった。
ただ、こんな可愛い女性を待たして下らん競馬なんかをやっていた自分が情けなく、直美に本当にすまないと思ったのだ。
突然土下座をする私に驚いて
「何?何?、恥ずかしいから早く立ち上がってよ!」と私の腕を持ち上げ起こそうとした。
立ち上がった私は「本当にごめんな!」と誤った。
土下座して謝る意味が全くわからない。直美は何度も首を振ったが、少し経つと笑顔で「お腹すいた!なんか食べにいこ!」と私の左腕に直美の右腕を差し込み何時もみたいにグイグイと歩き出した。
直美のリクエストでおいしいハンバーグを食べにレストランに入った。
いつものように赤ワインにグラス二つ、オレンジジュースを注文してからハンバーグを頼んだ。
ハンバーグが来るまでハムとチーズを頼みグラスにワインを入れ偉大な直美に乾杯した。
直美は前回の全国大会の話を始めた。
準決勝まで全てストレートで勝ち進み、準決勝も一ゲームは落としたものの勝ち上がった。
決勝は第一シードの鳴り物入りの選手と対戦だったらしい。
途中までは直美はリードしていたんだけど何せ一年間練習もしてなく、たった一ヶ月の練習でしかも一日何試合もした最後の試合で握力がなくなり、最後はラケットすら持てなくなって負けたとのことだった。
なんでそこまで頑張れたのかを直美は教えてくれた。
それは入院費と手術費用は大学が出してくれると言った手前、大学からの誘いがなければ絶対に両親はどうやってお金を捻出したのかと疑問を持ち心配をする。
だから直美はどんなに苦しくても決勝まではいって大学から声をかけてもらおうと思ったのだった。
決勝では結局二位に入ったことで張ってきた気が抜けた感じになったのかも知れなかった。
結局直美は知らず知らずのうちに逆転の発想をしていたのではないかと思った。私からお金を預かったなどと言う事ができない直美は、もし全国大会で二位以内に入ればお父さんの手術代を立て替えてくれる。
だから心配しないで、と母親には言ったが、直美は頑張れば必ずなんとかなると信じて練習して本当になんとかした。
でも実際、大学はそんなお金は貸さないしそんなこと言うわけはないからよく考えたらわかることだ。
けれど、為せば成るを実行した直美はやはりすごい女性だった。
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