ファイナルトリック

黒崎伸一郎

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ケントのマジックショー❶

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ケント以外のマジシャンが出演を終えいよいよケントの出番になった。
司会者の合図で岡島のカメラがAD小森にと変わる。
「さあ、皆さんお待ちかねの志村ケントのマジックショーの始まりです。
今こちらは駿河湾上空に飛び立つところです。」
AD小森がマイクを右手に少し口早に話した。
まだあまり慣れていないのだろう。
緊張の為かマイクを持っている右手が微かに震えているのがわかる。
ケントはその緊張を解くかのようにカメラに向かって話し始めた。
「今回のマジックショーは私、志村ケントはマジックとの定義の中の手品としてではなく、魔術、魔法との記述の方としてのテレポーション、つまり瞬間移動をお見せします。」
AD小森のマイクを持ったままケントは「今、静岡県の駿河湾上空にいます。
もうすぐ最深部二千五百メートルの場所まで向かっています。
そこの上空千メートルから檻に入ったまま落下して番組が終わるまでにテレポートで番組に現れることができればこのマジックの成功とさせて下さい…!」
なんとケントは駿河湾から東京のスタジオまでテレポートするというのである。
静岡の駿河湾からの距離は駿河湾スマートICから東京ICまでは百二十四キロメートル、車では一時間五十分かかる。
車ではまず東京のスタジオに戻るのは計算上誰が考えても無理だとわかる。
ではビジョン・ジェットではどうだろう?
落とされた檻から脱出してビジョン・ジェットに乗り込み駿河湾から東京のスタジオに戻る。
今の時間は三時十分。
TV番組の終了時間が三時五十分。
あと四十分でそれを全て行うことはまず不可能だ。
ならばどうする?
ケントは確かにビジョン・ジェットの中にいる。
それはAD小森が証明できる。
だが視聴者はそれでは納得しない。
ケント本人がどうかを指紋認証で調べて本人である証明ができれば皆が納得する。
スタジオにはケント本人である証明の指紋がある。
ケント本人がこのスタジオに戻らなくてはテレポートでこちらに瞬間移動したことにはならない。
岡島、AD小森そしてすべての視聴者がどんなトリックか?はたまたテレポートなのか?
皆がケントのマジックを見守った。

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