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マジックショーまで…あと…三日
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ケントは志保に騙されたあと失意のどん底だった。全てを失い何もできない状態が続いた。
だがケントにはやらなければならないことがあった。言うまでもない、マジックショーでのテレポートである。
TVでの最初のテレポートは弓川の筋書き通りにしなくてはならなかったが、大反響がありそのお陰で一躍有名になれたのだった。
今回は弓川の筋書きはない。
というより弓川自体ももういない。
自分の力だけでこのマジックを成功させなければならない。
実はケントには秘策があった。
ケントにしかできない策だった。
ただその策は実行するだけなら簡単だったがケントはそうはしなかった。
一世一代のマジックショーである。
そのトリックは誰にも見抜かれないようにする必要がある。
命をかけて誰にもできないマジックをする必要がケントにはあった。
「おはよう!」ケントがスタジオに姿を現した。
「ウォ~……!!」
久々に現れたケントに岡島が走り寄って来て
叫びながら片膝をついた。
「ま、待っでたんでぇすよ…。ずっど…!」
何を言ってるのかよく聞き取れない言葉で訴えるように呟いた。
そして余程嬉しいのか岡島は涙と鼻水が混ざったのを拭くこともしないでケントの腕にしがみついた。
「ディレクター…、はい!」
スタッフの一人がティシュの箱を岡島の前に差し出して鼻をかんだ。
あと三日となった岡島はケントからリハーサルには来れないと聞いていたがやはり姿を見ないと心配で夜も寝れないほどだった。
「今回は僕の人生全てを賭けての勝負ですから絶対に負けるわけにはいきません。
視聴者には本当にテレポートなのかマジックなのか、もしマジックならばどんなトリックなのかをよく考えて観て欲しいですね」
ケントは岡島とスタッフ全員に本番での万全の用意をお願いし、ラストのマジックショーの出来栄えを見ていてくれと言わんばかりの言い方で締め括った。
その後ケントは本番までまた姿を消したのだった。
だがケントにはやらなければならないことがあった。言うまでもない、マジックショーでのテレポートである。
TVでの最初のテレポートは弓川の筋書き通りにしなくてはならなかったが、大反響がありそのお陰で一躍有名になれたのだった。
今回は弓川の筋書きはない。
というより弓川自体ももういない。
自分の力だけでこのマジックを成功させなければならない。
実はケントには秘策があった。
ケントにしかできない策だった。
ただその策は実行するだけなら簡単だったがケントはそうはしなかった。
一世一代のマジックショーである。
そのトリックは誰にも見抜かれないようにする必要がある。
命をかけて誰にもできないマジックをする必要がケントにはあった。
「おはよう!」ケントがスタジオに姿を現した。
「ウォ~……!!」
久々に現れたケントに岡島が走り寄って来て
叫びながら片膝をついた。
「ま、待っでたんでぇすよ…。ずっど…!」
何を言ってるのかよく聞き取れない言葉で訴えるように呟いた。
そして余程嬉しいのか岡島は涙と鼻水が混ざったのを拭くこともしないでケントの腕にしがみついた。
「ディレクター…、はい!」
スタッフの一人がティシュの箱を岡島の前に差し出して鼻をかんだ。
あと三日となった岡島はケントからリハーサルには来れないと聞いていたがやはり姿を見ないと心配で夜も寝れないほどだった。
「今回は僕の人生全てを賭けての勝負ですから絶対に負けるわけにはいきません。
視聴者には本当にテレポートなのかマジックなのか、もしマジックならばどんなトリックなのかをよく考えて観て欲しいですね」
ケントは岡島とスタッフ全員に本番での万全の用意をお願いし、ラストのマジックショーの出来栄えを見ていてくれと言わんばかりの言い方で締め括った。
その後ケントは本番までまた姿を消したのだった。
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