ファイナルトリック

黒崎伸一郎

文字の大きさ
上 下
20 / 30

マジックショーまで…あと…五日

しおりを挟む
ここで何故八坂志保に詐欺れたのかを一から説明しよう。
実は志保は弓川の女だった。
というより弓川は志保に操られていたのだ。
志保のシナリオはこうだ。
弓川はTV<マジックで世界を取れ>でテレポートをさせるマジシャンを探す時に自分がちゃんと操ることのできる男を探していたのだが実は志保からの要望でケントを選んだのだ。
志保は弓川を詐欺るつもりで付き合っていた。
前もって調べていた弓川の資産が思ったより少なかった。
ヤクザからギャンブルでの借金もありターゲットを変えるつもりでいた。
そこでケントに声をかけさせるためにコーヒーハウスでバイトをしてそこで弓川はケントと待ち合わせの場所にしたのだ。
案の定、というか弓川が思ったよりもケントの好みが志保だったのだ。
百戦錬磨の志保のテクニックにケントはイチコロだった。
そうとは知らずにケントは一緒になろうと言って来た。
志保は苦労することなく詐欺ることはできた。
そのお礼にケントにセックス三昧の日々を送らしてあげたのであった。
志保はセックスをするために生まれて来たような女だった。
セックス自体も好きなのだがそれをするまでのプロセスがたまらなかった。
一度セックスすると体に火がつき何度も何度も求めた。
弓川もそれで体がもたなくなりケントに変わってもらう気持ちになったのかもしれなかった。
実は志保は若く見えたが実は三十を過ぎていた。
エステなどで若作りをしていたのもあったが誰が見ても二十歳くらいに見えた。
しかも志保は今巷で噂の地面師グループのメンバーだった。
一般の人が地面師に引っかかるとイチコロである。
ケントも例外ではなかった。
一億円という額は地面師としては大した額ではない。
本来地面師は役割がいろいろある。
なりすまし役を連れてくる「手配師」。
パスポートや免許証などの書類を偽造する役割の「印刷屋」や「工場」あるいは「道具屋」と呼ぶ。
その他、振り込み口座を用意する「銀行屋」や「口座屋」、あるいは「道具屋」。
さらには法的手続きを担う弁護士や司法書士の「法律屋」に至るまでそれぞれ分担が分かれて犯行に及ぶのだった。
しかし今回は志保の両親役、弁護士とたった四人で仕上げたのだ。
一億円の内訳は両親役に一千万円ずつ弁護士役の法律屋に一千五百万円、残りの六千五百万円が志保の懐に入ったのだ。
志保は「手配師」も兼ねていたし話を持って来たのも志保自身だったからそれだけの配分は当たり前であった。
弁護士役の「法律屋」がいく分多かったのは書類の作成つまり「道具屋」を兼ねていたからだ。
地面師たちは余程のことない限り半年から一年半くらいのスパンで詐欺を繰り返す。
もちろん毎回同じメンバーではないが下手を打たない限り連絡を取り合う。
下手を打つとは警察に捕まるということだ。
理由は簡単で慣れないメンバーより慣れたメンバーの方がやりやすいに決まっていたからだ。
ケントはその地面師のメンバーに詐欺られたのだった。
しおりを挟む

処理中です...