ファイナルトリック

黒崎伸一郎

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マジックショーまで…あと…一週間

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あと二週間となってからケントは番組スタッフはおろかディレクターの岡島にさえ連絡をとっていない。
警察も弓川が殺された容疑者を捕まえたことをわざわざケントに連絡を入れてその事を伝えるということまではしない。
だがTVのニュースですぐに岡島もケントも知ることとなる。
弓川が死んだことで利益を得たのはADの岡島とケントくらいだったが弓川を知っている人は皆、殺されても仕方がないというくらいにしか思っていなかった。
それほど弓川は評判は良くなかった。
岡島にディレクターが変わったことでスタッフは全員心からほっとしたとは言い過ぎかもしれない。
ただ岡島と頑張っていこうと一致団結したのは間違いない。
NNNTV<マジックで世界を取れ>という番組は特番で去年から年二度ほど開催されていた。
前回は二時間番組だったが今回は前回あまりにも好評だった為、三時間番組に時間延長された。
出演するマジシャンの数も増え本番に向けての準備は怠らないように万全を期した。
今日はそのリハーサルの日だった。
今回の出演者は前回を遥かに凌ぐメンバーで日本のトップテンに入ると言われるマジシャンが集結しマジックを競い合う。
全てのマジシャンが今持っているベストのマジックを披露していく。
岡島はラストにケントがマジックの演出に番組の三分の一にあたる一時間を取ることに決めていた。
それまでの二時間のマジックショーのリハーサルをほぼ完璧にやり終えた。
ショーの時間配分は岡島の思惑通りに収まった。
後はケントのテレポートだけだった。
岡島はケントと最後に会った時にもうこの男と心中すると決めていた。
そのことはスタッフには言ってはいない。
変な動揺があることを恐れ自分の胸だけに収めることにした。
岡島はケントが今回マジックショーを開催する静岡県の駿河湾からの中継に向けての準備も万全にしなくてはならない。
民間からリースするビジョン・ジェットは約三百万円かかる。
そして頑丈な五十キロ以上はある檻をケントの要望で用意した。
その檻に入ったケントが上空千メートルから落とされる。
世界では上空一万メートルから落ちて生還した例はあるが上空千メートルから頑丈な檻に入って海に落下されて脱出するマジックは聞いたことがない。
しかもその檻は鍵を幾重もかけられてその鍵を開けて脱出しなくてはならない。
上空千メートルからの海への落下の衝撃は凄まじいものでその衝撃だけでも意識を失う可能性もある。
そこからどうやって脱出するのかどんなトリックなのか、岡島には見当がつかなかった。
その危険すぎるマジックをケントはリハーサルもせずにやるのだ。
岡島はケントの本番でのマジックショーの準備を終え後は本番を迎えるだけになった。
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