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大漁じゃーい!

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俺は、ニコニコ顔の獣人さんをジッと見る。
ジーーーーッ

「………。」

ジーーーーーーッ

「…!?なんですか!!」

見られて居心地が悪くなった獣人さん。
耳をピンッと立てて、俺を見る。

「…何の獣人??」

「えっ?今そこ??」

「いや、気になって…」

「いや、もっと今気にしないといけない事あるでしょう?」

「えっ?例えば?」

「何故私がここにいるか?とか、何で攫われたのか?とか……。」

獣人さんは俺になったつもりで考えながら上げてくれた。

「なるほど!…で?何の獣人?」

俺は犬の大型犬かな?耳がピンッとしていて、尻尾フサフサだし。

「頭痛くなるな…可愛いのに…。私は狐ですよ。」

俺はハズレた事に一度ガッカリして…狐って事に、また獣人さんをバッと見た。

「えっ!狐??」

もしかして、もしかしなくとも!!

火山の狐か!?

「…狐じゃなかったら、他に何に見えるんだ?」

ちょっとイラッとした顔をする狐さん。

「…いえ、狐さんです。」

犬って言おうとしたが、この状態ではやめておいた。

狐さんは転がる俺を覗き込んで、頬をツンツンと突く。

「ちょっとお馬鹿だが、やはり可愛いな。必ず俺が飼ってあげます。食べ物は何が好き?」

「……硬く無いやつ。カフェの肉巻きサンド美味しかった。」

俺が素直に話すと、ニンマリと嬉しそうに笑う。

「素直ですね。分かりました。肉巻きサンドね!ふふっ実はあれ、特別メニューで、お店には無いのです。」

へ?どういうこと?

俺がポカンとしているのが可笑しいのか、笑いながら、俺の頬を撫でる。

「アレは合図なんです。私が入って肉巻きを食べれば、話したいことがある。私の部下が肉巻きを食べれば依頼有り。一般が食べればその人物を監視しろ。または捕まえろ。」

にゃんと!!あの時既に罠にハマっていたのか!!

つくづく思う。俺、ギルドに入って良かった。1人でブラブラしてたら、もう攫われてどっかに売られているだろう。

あまり感謝したく無いが、ガル…拾ってくれてありがとう。

「貴方の容姿から判断して、捕まえろの指示だと気付いたのでしょう。睡眠薬を盛り、宿を特定して、夜攫われた流れです。」

俺、体力無限なのに、おかしいと思ったわ!!

ムーッと睨んでも、狐さんはニマニマ。

すると、バンッと急に扉が開いた。

「頭ー!!」

強面が叫ぶと狐さんも立ち上がり、扉の方を見た。

「遅いですよ。鬼ザメ。」

鬼ザメ!!!

現れたのは部下を何人も引き連れた、ガタイの良い男だ。
顔にいくつも傷がある。この人もまた怖いお顔。夜見たら泣いちゃうかもしれん!!そして右耳が無い!

正しく鬼ザメ!

「こいつが今回のか。可愛いじゃねえか。」

あー!!コンニャロ!足どけろ!

鬼ザメらしい奴は、俺の顔を爪先で持ち上げて確認する。

「鬼ザメ。今回、この子は私がもらいます。」

狐さんの発言にピクッと眉を動かす。

「危ない橋渡ってんのはこっちだ。じゃあ、キチンと買ってもらおうか??」

「いや、情報や、貴方達を庇っているのは私達でしょう。稼がせてあげているのだから、この子を渡しなさい。」

ニコニコ顔の狐さんが険しい顔になる。

「ふざけんじゃねえぞ?俺達が捕まってまずいのはお前達の方だ。」

ピリピリする空気に俺はゴクリと唾を飲み込む。


「こんな上玉ただでやるくらいなら俺がもらう。」

ありゃりゃ、俺って人気者!!
いや、ふざけている場合では無いな。

「私が見つけたんだ!私のものだ!」

ヒートアップするお2人さん。

「ねえねえ、ちょっと待ってよ。どういうこと?巷で噂の人攫いって貴方達?」

やべえ、棒読みだったかな?

「ああ?それがどうした?」
鬼ザメがイラつくように聞いてくる。

「貴方が鬼ザメさん?じゃあ狐さんも盗賊?」

「馬鹿な!一緒にしないでください!」

「えー!でも剣とか持っててかっこいいし。」
やはり棒読みかな?とにかく、ギルドだとを言え!!

「ふふ!そりゃそうです。言えませんが、こんな盗賊と一緒にしないでください。」

それにイラッときた、鬼ザメが鋭い視線で睨む。

「ああ?たかがギルドが調子乗んなよ?誰のお陰で依頼達成できてんだよ!」

「ふふふ…」

ピリピリしていた空気が、ヒヨリが笑い出した事に、怪訝な表情となる2人。

「そちらが、盗賊さんで、貴方がギルドの方ですか……」

「ああん?」

「………。」

2人の視線を集め、ヒヨリはニヤッと悪役も真っ青な悪どい笑みを浮かべる。

「海流の鬼ザメさんと火山の狐さんですね?」

その一言に、一気に場の雰囲気が変わり、部下達も剣を抜いた。

「お前!何故それを!」

鬼ザメさんと狐さんは、ゆっくりと部下の後ろに下がる。

「にゃはははは!言質とったぜ!野郎ども!!」

その瞬間、床に模様が現れ、光出す。光の中から現れた、ヒュー、ウラン、ティーンに、部下達は一瞬怯む。

鬼ザメ、狐さんは何かを悟ったのか、外へ飛び出すと、旋風の如く現れたアルが弓で牽制し、その後ろに数十のタキとジーン率いる盗賊達に囲まれた。

「くっ!どういうことだ!?」

狐さんは顔を歪ませ、辺りを見回す。


「ぬはははは!お前らは罠にハマったんだよ!俺というミミズに釣られてな!」


「ミミズ??」

悔しそうに睨みつける鬼ザメさんに、布団グルグル巻きから抜け出せた俺は、腰に手を当て踏ん反りかえる。


「題して、サメと狐の一本釣り!大漁じゃーいの巻!!だ!」

ピシッ!!と指差す俺!ドヤー!!  



「ヒヨリ、なんかダサいぞ。」

ティーンの冷たいツッコミ…。

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