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久しぶり!

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俺達は今王都周辺の林に紛れている。
人数が多い為、夜の闇に紛れて入る為、待つ事になる。半々に分かれて、正面から検問を通る組と裏の高い塀から侵入する組。

ウランは先に王都に入り、ティーン達を探している。

そして俺はレベル上げの為、林に現れる弱々しいモンスターを斬殺中w

「てりゃ!」
プチっ!!

ぬふふふ!スライム撃破!!

「わーすごい。」

おいおいタキさん!棒読みだぜ?

「そりゃ!」
プチッ!

「いつまで遊んでんだ?ヒヨリ。」

遊んでねー!本気だ!バーロー!ヒューめ!!

ふー!!今日はここまでにしてやるか!!
なんとか5匹スライムを倒したぜ!!

「動いたら腹減りです。」
俺はグルグル鳴るお腹を抑えた。

「王都に入れば旨いものがあるはず!ちょっと買い物してきていい?」

俺はヒューに強請るが、ダメだと首を振られた。

「うう!腹減った。」

しゃがみ込む俺に、溜息を吐き、ヒューは俺を抱き抱えた。

「タキ、なんか狩ってこい。なるべく柔らかいやつだ。さっき、俺がヒヨリにやったやつ、食っただろ?」

そーだ!そーだ!俺の肉!!

「うー!わかったよ。へいへいお姫様はお待ち下さい。」

タキは面倒くさそうに立ち上がり、シュッとどこかに消えた。

グオォォと鳴る腹に、興味津々のヒューは、俺の腹に耳を当て、楽しんでいる。

「クックッ!なんか獣の呻き声みたいだ。俺達の子が腹にいるようでなんだか楽しいぜ。」

無邪気に笑うヒューに俺は恥ずかしくなる。

「俺達の子だな!」
ギュルルル!

「ホラ!返事した!」

「何言ってんだよ。」
ウキウキ楽しそうなヒューに呆れた視線を送る。

「名前は何にしようか?ヒヨリとヒューだからかヒューリとかどうだ?」

グルルルル!

「おお!気に入ったか!ヒューリ!!」

あー、腹減った。早くタキ帰ってこないかなー。

俺は、俺の腹とおままごとするヒューを無視する事にした。

ヒューリと名付けた腹の音は、あと少しで消えるというのにw

「ほれ!!狩ってきたぜ。」

タキー!!待ってました!!
あー!!同じ水鳥っぽいやつ!!

ジーンがまた焼いてくれた。
今度はタキがむしってくれたので、俺はかぶりつく!

うまうま!

「あー!!ヒューリ!!ヒューリの声がしない!!」

座って食べる俺の腹に、しゃがみ込んだヒューが耳を押し当てて悲しみに暮れている。

「ヒューリって?」
タキに聞かれたが、放っといてと伝えた。


俺が食べている間中、腹に話しかけていたヒューの耳がピクッと動き、いきなり俺を抱き抱えてパッと後ろに飛んだ。

そこに旋風が現れ、俺はその魔法に歓喜する。

「アル~!!」

風から姿を現したアルは鋭い視線でヒューに弓を向けている。

ヒューも臨戦態勢に入る。俺は慌てて、アルに叫ぶ。

「アル!ダメ!今協定中!」
「知るか!俺のヒヨリに抱きついて!!お前がヒヨリを攫った奴だろ?」

ピリピリする中、地面に突如光る模様が現れ、その模様の中からティーンとウランが現れた。

え!何、そのカッコイイ登場!

「アル!お前、魔法使うなと!!」

ウランはアルに怒るが、ティーンはふうっと溜息をついた。

「ヒヨリの件がバレたらなもう仕方ない。俺も使ったしな。」

「召喚術と風か…。」

ヒューは俺を抱えたまま2人を見た。

「ウランから聞いた。敵は同じようだ。俺からもお願いしたい。」

ヒューはティーンに頷き、アルをジロッと見る。
まだ弓を構えるアルもしぶしぶ構えを退いた。

「俺達のギルド名は言った方がいいか?」

「いや、俺達のも言わなくていいなら、今後の為にそうしたい。」

ティーンはヒューの意見に頷く。

「俺達はまず王都に紛れ込む。夜に紛れ込み、情報を集める。お前らはどうする?」

「俺達はギルドで国王の許しも貰っている。だから好きに動けるので火山の狐本部を探ろうと思う。」

ヒューは頷く。

「今、空のゆりかごという、宿に泊まっている。夜王都に入ったら来てくれ。」

「わかった。」
ティーンとヒューの話し合いが進む中、抱き抱えられた俺は残りの肉を口に含んだ。

もぐもぐもぐ。

そんな俺を熱く見つめるアル。

心配かけたな。ごめんよアル。

でも、コイツ強くて、そっちに行けないんだ。だから、食事するしかできないんだ。

口をもぐもぐしながら、申し訳なさそうにアルを見た。

「で、すまないが、今後の話をしたい。ヒヨリを返してくれないか?」

ティーンがやっと俺の話をしてくれた。

「いや、ダメだ。」
キッパリと答えるヒューに、ティーンの耳がピクッと動く。

「色々とヒヨリが必要なんだ。」

「ダメだ。お前だろ?ヒヨリを餌にと考えたの?そこの2人は感情的だから、そんな事言わないだろう。ヒヨリを危険なめに合わせようとする奴に渡すか。」

さっきまで淡々と話していたティーンの顔が歪む。

「そっちにも隠したい事はあるだろう。俺達も話し合いが必要なんだよ。」

先程より低い声になるティーン。

ヒューは俺を抱え直して、ギュッと抱きしめた。

「ヒュー。俺も仲間と話したい。夜、宿で会おう?それまでに話し合いは済ませておくから。」
俺がヒューに言うと、悲しそうに頬を寄せる。

「ヒヨリ…いなくならないか?」

「ああ、ちゃんと宿にいるよ。約束だ。夜会おう。」

ヒューはコクンと頷き、ヒヨリを下ろした。

俺はヒューの頭を撫でて、ティーンの側にいく。

「では、夜に。宿の1番上の左奥だ。」

「わかった。」

また模様が光り、俺達は光に包まれた。




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