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人攫い盗賊団はサメ?狐?

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うへー!!

ここは何処かの洞窟のようだ。

1番奥の部屋にいたようで、出ると洞窟と一目瞭然なトンネルを歩く。

まあ、ヒューに抱っこされているが、14歳に抱っこされる17歳。

大きい広場のような所に出ると、何十人もの男達がいた。

「お頭ー!!やりましたね!」
「番!おめでとうございます!」

ピューピュー口笛やら、雄叫びが聞こえる。

なんだこれは……

「お前らのおかげで可愛い番を手にする事ができた!ありがとな!」

ヒューは叫ぶが、俺は番になったつもりは無い。

「これから王都に向かう!裏で火山の狐が情報を操作していることがわかった!
俺達の名を語る舐めた盗賊は、海流の鬼ザメって言う盗賊団だ!火山の狐と海流の鬼ザメ!両方ぶっ潰すぞ!!」

「おおおおお!!」

男達の気合いの声に洞窟が揺れる。

ヒィィ!!

やめて、崩れる!!

「…火山の狐ってギルドでしょ?ギルド潰すの?」

俺が恐る恐る聞くと、ヒューは頷く。

「ああ、火山の狐が、鬼ザメと手を組んで人攫いをして闇市に流してんだよ。しかも、俺達のせいにしやがってさ。」

エエ!?

人攫い盗賊団が、海流の鬼ザメ?
情報操作や闇市に関係してんのが火山の狐ギルド!?

何、そのすごい情報!!俺達が調べてたやつやん!

……待てよ…さっき、俺達の名を語ってって言った??

……ま、まさか。

「…ねぇ、ヒューの盗賊の名前って何?」

「ああ?あんま教えないが、番になるんだし、いいか?闇獅子の咆哮だ。」

「!!」

や、やばい!やっぱりじゃん!!

噂の誰も情報掴めないのに、すごい数いる盗賊団!!闇獅子の咆哮!!

しかも、14歳のヒューが頭!!

ヤバイ、目眩が…。

「どうした?俺達の噂でも聞いて、ビビったか?」

ヒューは俺を気遣うように、舌で頬を舐める。

あー!!どうにか、誰かと連絡取りたい!!

闇獅子さんじゃなく、犯人は鬼ザメと狐っしたよ!!

ティーン!ウラン!アル!どこー!!

「野郎ども!!王都に向けて出発だ!!」


俺は王都に行くよーーー!!


******

「おい!ふざけんな!!何でティーンさんと、ウランがいて、ヒヨリが攫われるんだよ!!」 

アルがテーブルを勢いよく叩く。

「すまない。完全に戦略で負けた。」
ティーンは眉を寄せ、拳を握る。

ウランは頭を抱えたまま動かない。

「あいつか!?あの噂の獣人!!」

歯軋りをしながら、アルは怒りを露わに、出て行こうと動く。

「待てアルケイド!今どこにいるか分からないんだ!無闇に動くのは危険だ。」

「ジッとしていられるかよ!!」
アルケイドは壁を殴り、2人を睨みつける。

「俺が側に居れば、攫われてもどうにか場所がわかった!!だが、偵察にさせたのはあんたらだろう?俺はヒヨリが襲われても、あんたら2人を信じて、そのまま偵察に力を入れたのに!!」

アルケイドは手で顔を覆い、力なく壁に寄りかかる。

頭を抱えていた、ウランはゆっくりと顔を上げた。

「すまない。俺が近くにいたのに…ヒヨリの声が頭から離れねえ。…ティーン、少し、俺を別行動させてくれ。アルは情報と連絡係に必要だ。2人は先に王都へ、俺も調べながら後を追う。」

ウランの悲壮感漂うが、真剣な瞳にティーンは頷く。

「ふざけんな!今度こそ俺がいく!!」
ウランの発言に、納得いかないアル。

「アル、お前の能力じゃ探せても、戦闘になったら奴のが強い。…もう一度、俺を信用してくれ。」

ウランのいつもとは違う瞳の色に、アルは何かを読み取る。

「あ、兄貴、まさか…兄貴も?」
動揺からか、揺れる瞳のアルを見つめ、ウランは目を閉じて、アルの首に手刀を当てる。

「く、そ!」
気絶するアルケイドを受け止めて、ベッドに寝かすと、ウランは扉を開けた。

「すぐ戻る。先に王都へ。」

「わかった。」

パタンと閉じた扉をティーンは見つめ、深いため息をつく。

「ヒヨリ…罪な男だね。」


******


ゼエハアゼエハア

こんにちは!ヒヨリです!

現在、山道をかれこれずっと歩いています!!
人に見つからない様にらしいですが…

し、死ぬ!!

「ヒヨリ、抱っこするか?」

うるせー!!年下に抱っこされてたまるか!!されたけどね!!

ヒイヒイ言いながら歩いていると、水場があり、しばしの休憩となった。

フー、死ぬかと思った!!

ヒューが果物を差し出してくれたので遠慮なくもらった。

あれ?ヒューの髪色がなんか?暗くなった?耳も?

俺がジロジロヒューを見ていることに気づいたのか、ペロペロチュッチュッと甘えてくる。

「なー、お前の毛の色変わってないか?」

俺の一言にジーンさんが反応して、俺をペロペロしていたヒューをどっかに連れて行った。

へ?

まあ、いいけどさ。
俺はもぐもぐと果物をかじる。

このまま、王都まで歩くのかな?キツイな…。

ボヘーとしていたら、ヒューが戻り、また髪色が戻っていた。俺は首を傾げつつ果物を食べ切った。

そしてまた歩き出す。

てか、洞窟だから気付かなかったが、一晩経っていたらしく、早朝から歩いている。
しかも多分もう、昼過ぎ。
盗賊って体力凄いな。この体力には自信あるチートより早く回復するとは!

まあ、基本体力の差で負けてるからだろうけど。

暫く歩いて、夜が来るため野営準備をする盗賊達。俺は念のため縛られて準備が終わるのを待つ。

準備が終わると火の側で宴会が始まった。

俺は酒が飲めないので、スープを飲むが、俺より年下のヒューは普通に酒を呑んでいた。

教育に悪い世界だな!!

丸一日一緒に歩いて思ったが皆いい奴だ。
心配そうに声掛けてくれたり、お菓子くれたり、水くれたり…。

皆、孤児で生きていく為に必死だったんだろう。だから、人をちゃんと見て気遣えるんだな。

ちょっと闇獅子の咆哮盗賊団が気になり出してきたよ。

確かにコイツらが人攫いをするはずないな。自分達が1番孤独を知っているから。

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