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満月の夜の秘密
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ワイワイガヤガヤ
皆でエールを楽しそうに呑んでますね。
俺は骨付きの何かの肉にかじりついてます。
そして、また俺のかじっている肉を狙っている獣が一体。まあ、そいつの膝にいるんだけどね。
やはり、固い!!味はめちゃくちゃ美味しいんだが、噛み切れません…。
ムキーッと頑張っていると、目の前に皿が置かれた。
「コックさん?」
皿を置いてくれたのはクマのコックさんだ。
「ヒヨリ君が座ったテーブルの肉はヒヨリ君には硬いと思って煮てきたよ。」
コックさーん!!
「ありがとうございます!!」
俺は煮込まれた肉を見つめ、よだれを垂らす。
う、うまそう!
その瞬間、俺の手にあった硬い食べかけの骨付き肉はガルに取られました。
「ベアードさんと仲良くなったのね?」
俺はフォークで肉をハフハフ食べていると、アリアナさんがワインを片手に聞いてきた。
「コックさんがベアードさん?」
「そうよ、ベアード・クックマン。昔王国騎士で有名だったんだけど、コックになりたいからと辞めてここにいるのよ?」
「すごい人なんですね。いつも、パンをスライスしたり、噛みやすいようにしてくれるから、今日お手伝いしに、挨拶したんです。」
「優しいんだけど、寡黙な人だから気になっちゃって。さすがヒヨリ君。」
「ん?ヒヨは酒呑まねえのか?17歳だろ?」
ウランがジョッキをほっぺに押しつけてくる。
「冷たい!呑まないよ!俺の世界だと、20歳からが成人なんだよ!」
「あれ?この世界のルールに!って言ってなかったか?」
うっ!!こいつはマジで痛いところつくな。
「ゆっくりって言っただろ?」
へいへいと、エールをウランは飲み干した。
あっ!モンスターの図鑑!
俺はダイナに話しかけようとして、ギョッとする。
ダイナはマスクをしたまま、エールを呑んでた。
どういう構造かジッと見ると、マスクに横に線が入り、そこからエールを呑んだり、食事をしているようだ。
俺が見ている事に気づき、一度マスクの横ラインをチャックの様なもので、閉めた。
「ヒヨリ、どうした?」
ダイナの声に、俺は、ハッとしてマスクから視線をダイナの目に変えた。
「モンスターの図鑑を持っていると聞いて、貸して欲しいんだ。」
「構わないよ、会が終わったら渡そう。」
「ありがとう!!」
よし!これで勉強できる!!
なんか、酒の強さも必要とか言っていたな…
テーブルには料理より、酒瓶とエールのジョッキが溢れていた。
確かに、この量呑んでも大丈夫なら、あん時は酔ってなかったな!
俺はギロッとシスを見る。言いたい事が伝わったのか、ウィンクされた!
あーやだやだイケメンは自分がイケメンってわかってんだから!
俺はプリプリ煮込み肉を頬張る。
*******
そろそろお開きのようで、人もまばらになった。俺は、空いた皿やジョッキをキッチンへ運んだ。
ガル、アリアナ、アル、シスは今日の討伐依頼の集計結果報告会を開いているらしい。
ダイナとガルは討伐で使った武器の修繕をしに行ったようだ。
なので、唯一暇な俺は皿洗いのお手伝い。
大量でクタクタ。
ご褒美にベアードさんにクッキーもらったけどね!
皆、まだ終わりそうに無いから、俺は裏庭で自主練する事にした。
今日は満月で明るくて、夜風が涼しい。
集中しやすく、バリアの高度も上がりそうだ。
全身を包むイメージをする。
グアっ!
ん?何か聞こえたような…
ぐっ!
やっぱり林の奥から聞こえた。
人のような獣のような…
俺は壁に立てかけてあったオノを取り、声のする方へ恐る恐る向かった。
すると、小さな池の辺りで蹲っている人がいた。
呻きながら、草を食べている?
月に照らされた水色の髪…
「ダイナさん?」
俺の声に反応して、バッと顔を上げた。手には大量の草を握り締めて。
俺はダイナさんの顔を見た瞬間、目を見開いてしまった。その行為がダイナを傷つけた。
「見るな!見るなー!!」
ダイナさんはマスクを外しており、左の口が裂けて歯というより牙が剥き出しになっていた。そして、舌先は切れて、爬虫類のようだ。
この為にマスクをしていたんだ。それなのに、俺、驚いちゃった。
「ダイナさん、俺ビックリしちゃってごめんなさい。マスク取った姿、初めてだったから。どっか痛いの?俺、治療失敗した?」
ダイナは下を向いて顔を覆ったまま、首を横に振った。
「すまない、驚くの当たり前なのに、取り乱した。ガル達も知っていて、今更なのに…君にはまだ見せたくなかったんだ。….せっかく、かっこいいと、生まれて初めて言われたのに…。」
ダイナの切ない声が胸を締め付ける。俺が簡単に言った一言で、こんなにも……
だから、皆…ダイナにとって重大な一言だから、俺をタラシとか言ったんだな。
「近く寄っていい?」
俺が聞くと無言になった。
俺はゆっくりダイナに近づき、隣にしゃがむ。
「ダイナ、さっき呻いてた。どっか痛いんでしょ?」
「…普段はここまで酷くないんだ。満月の夜だけ、牙が疼いて、大きくなり、口が裂けるんだ。人の身体には耐えられないんだ。だから、痛みが止まるまで薬草を食している。ポーションで治しても、何度も裂けるから、満月の日は薬草にしていて…。まさか、帰ってきた日、ヒヨリに会った日が満月とは…ついていない。」
この人は50年間1人で耐えてたんだな。こうやって薬草食べながら、痛みを耐え、マスクして。恐れられるのが怖くて恋愛も出来ず。
「モンスター図鑑の為に探したのか?悪かったな、ちょっと外出たらこうだ。あの図鑑も、俺より酷いモンスターがいると安心するから持っているんだ。俺みたいな希少種はすごいと言われるが、爬虫類は体温調節出来ないのに、水属性だ。身体が冷えやすく気をつけないとすぐに死ぬ。それにこの顔だ…。全くかっこよくなんてないよ…。」
俯いたまま、語るダイナの身体は震えていた。
俺はゆっくり、そっとダイナの背中に触れた。ダイナはビクッと身体を震わせ、俺の手を払い除ける。
「同情はやめてくれ!!分からないくせに!!母ですら、俺の顔に恐怖するんだ!異世界から来た君が耐えれるわけないだろ!!」
辛い叫びに、俺は耐えられず、嫌がられたのに、ダイナを抱きしめた。
ダイナは一瞬驚き、怯んだが、すぐに引き剥がそうと俺の肩を持った。
「ごめん!同情だ!確かに同情だ!だって俺、ダイナじゃないもん!ダイナが今までどんなに辛かったかなんて、想像することしか出来ない!!でも、想像して俺も辛くなる!!ダイナが心配になる!どうにかしてあげたくなる!だから…同情しちゃうんだ…」
ひっく…なんで俺が泣くんだよ!泣くな!
俺を剥がそうとしていた手は止まり、震えが止まった。
俺はゆっくりと抱きついたまま顔を上げ、ダイナの顔を見た。灰色の肌、黒目の金の瞳、鼻筋は通って、右の口元を見た。やはり美形だ。そして、痛々しいくらい裂けた左の口、数本の巨大化した歯が鋭く光る、頬は血で濡れて、隙間から舌が見える。
「ごめんな、やっぱ、俺はダイナをかっこいいと思うよ。これは嘘じゃない、目も鼻も口も整っているよ。
左口以外ね!」
そう言って、涙めで笑った!
一瞬大きく開いた金色の瞳、俺の言葉に笑い、一筋の涙を流した。
皆でエールを楽しそうに呑んでますね。
俺は骨付きの何かの肉にかじりついてます。
そして、また俺のかじっている肉を狙っている獣が一体。まあ、そいつの膝にいるんだけどね。
やはり、固い!!味はめちゃくちゃ美味しいんだが、噛み切れません…。
ムキーッと頑張っていると、目の前に皿が置かれた。
「コックさん?」
皿を置いてくれたのはクマのコックさんだ。
「ヒヨリ君が座ったテーブルの肉はヒヨリ君には硬いと思って煮てきたよ。」
コックさーん!!
「ありがとうございます!!」
俺は煮込まれた肉を見つめ、よだれを垂らす。
う、うまそう!
その瞬間、俺の手にあった硬い食べかけの骨付き肉はガルに取られました。
「ベアードさんと仲良くなったのね?」
俺はフォークで肉をハフハフ食べていると、アリアナさんがワインを片手に聞いてきた。
「コックさんがベアードさん?」
「そうよ、ベアード・クックマン。昔王国騎士で有名だったんだけど、コックになりたいからと辞めてここにいるのよ?」
「すごい人なんですね。いつも、パンをスライスしたり、噛みやすいようにしてくれるから、今日お手伝いしに、挨拶したんです。」
「優しいんだけど、寡黙な人だから気になっちゃって。さすがヒヨリ君。」
「ん?ヒヨは酒呑まねえのか?17歳だろ?」
ウランがジョッキをほっぺに押しつけてくる。
「冷たい!呑まないよ!俺の世界だと、20歳からが成人なんだよ!」
「あれ?この世界のルールに!って言ってなかったか?」
うっ!!こいつはマジで痛いところつくな。
「ゆっくりって言っただろ?」
へいへいと、エールをウランは飲み干した。
あっ!モンスターの図鑑!
俺はダイナに話しかけようとして、ギョッとする。
ダイナはマスクをしたまま、エールを呑んでた。
どういう構造かジッと見ると、マスクに横に線が入り、そこからエールを呑んだり、食事をしているようだ。
俺が見ている事に気づき、一度マスクの横ラインをチャックの様なもので、閉めた。
「ヒヨリ、どうした?」
ダイナの声に、俺は、ハッとしてマスクから視線をダイナの目に変えた。
「モンスターの図鑑を持っていると聞いて、貸して欲しいんだ。」
「構わないよ、会が終わったら渡そう。」
「ありがとう!!」
よし!これで勉強できる!!
なんか、酒の強さも必要とか言っていたな…
テーブルには料理より、酒瓶とエールのジョッキが溢れていた。
確かに、この量呑んでも大丈夫なら、あん時は酔ってなかったな!
俺はギロッとシスを見る。言いたい事が伝わったのか、ウィンクされた!
あーやだやだイケメンは自分がイケメンってわかってんだから!
俺はプリプリ煮込み肉を頬張る。
*******
そろそろお開きのようで、人もまばらになった。俺は、空いた皿やジョッキをキッチンへ運んだ。
ガル、アリアナ、アル、シスは今日の討伐依頼の集計結果報告会を開いているらしい。
ダイナとガルは討伐で使った武器の修繕をしに行ったようだ。
なので、唯一暇な俺は皿洗いのお手伝い。
大量でクタクタ。
ご褒美にベアードさんにクッキーもらったけどね!
皆、まだ終わりそうに無いから、俺は裏庭で自主練する事にした。
今日は満月で明るくて、夜風が涼しい。
集中しやすく、バリアの高度も上がりそうだ。
全身を包むイメージをする。
グアっ!
ん?何か聞こえたような…
ぐっ!
やっぱり林の奥から聞こえた。
人のような獣のような…
俺は壁に立てかけてあったオノを取り、声のする方へ恐る恐る向かった。
すると、小さな池の辺りで蹲っている人がいた。
呻きながら、草を食べている?
月に照らされた水色の髪…
「ダイナさん?」
俺の声に反応して、バッと顔を上げた。手には大量の草を握り締めて。
俺はダイナさんの顔を見た瞬間、目を見開いてしまった。その行為がダイナを傷つけた。
「見るな!見るなー!!」
ダイナさんはマスクを外しており、左の口が裂けて歯というより牙が剥き出しになっていた。そして、舌先は切れて、爬虫類のようだ。
この為にマスクをしていたんだ。それなのに、俺、驚いちゃった。
「ダイナさん、俺ビックリしちゃってごめんなさい。マスク取った姿、初めてだったから。どっか痛いの?俺、治療失敗した?」
ダイナは下を向いて顔を覆ったまま、首を横に振った。
「すまない、驚くの当たり前なのに、取り乱した。ガル達も知っていて、今更なのに…君にはまだ見せたくなかったんだ。….せっかく、かっこいいと、生まれて初めて言われたのに…。」
ダイナの切ない声が胸を締め付ける。俺が簡単に言った一言で、こんなにも……
だから、皆…ダイナにとって重大な一言だから、俺をタラシとか言ったんだな。
「近く寄っていい?」
俺が聞くと無言になった。
俺はゆっくりダイナに近づき、隣にしゃがむ。
「ダイナ、さっき呻いてた。どっか痛いんでしょ?」
「…普段はここまで酷くないんだ。満月の夜だけ、牙が疼いて、大きくなり、口が裂けるんだ。人の身体には耐えられないんだ。だから、痛みが止まるまで薬草を食している。ポーションで治しても、何度も裂けるから、満月の日は薬草にしていて…。まさか、帰ってきた日、ヒヨリに会った日が満月とは…ついていない。」
この人は50年間1人で耐えてたんだな。こうやって薬草食べながら、痛みを耐え、マスクして。恐れられるのが怖くて恋愛も出来ず。
「モンスター図鑑の為に探したのか?悪かったな、ちょっと外出たらこうだ。あの図鑑も、俺より酷いモンスターがいると安心するから持っているんだ。俺みたいな希少種はすごいと言われるが、爬虫類は体温調節出来ないのに、水属性だ。身体が冷えやすく気をつけないとすぐに死ぬ。それにこの顔だ…。全くかっこよくなんてないよ…。」
俯いたまま、語るダイナの身体は震えていた。
俺はゆっくり、そっとダイナの背中に触れた。ダイナはビクッと身体を震わせ、俺の手を払い除ける。
「同情はやめてくれ!!分からないくせに!!母ですら、俺の顔に恐怖するんだ!異世界から来た君が耐えれるわけないだろ!!」
辛い叫びに、俺は耐えられず、嫌がられたのに、ダイナを抱きしめた。
ダイナは一瞬驚き、怯んだが、すぐに引き剥がそうと俺の肩を持った。
「ごめん!同情だ!確かに同情だ!だって俺、ダイナじゃないもん!ダイナが今までどんなに辛かったかなんて、想像することしか出来ない!!でも、想像して俺も辛くなる!!ダイナが心配になる!どうにかしてあげたくなる!だから…同情しちゃうんだ…」
ひっく…なんで俺が泣くんだよ!泣くな!
俺を剥がそうとしていた手は止まり、震えが止まった。
俺はゆっくりと抱きついたまま顔を上げ、ダイナの顔を見た。灰色の肌、黒目の金の瞳、鼻筋は通って、右の口元を見た。やはり美形だ。そして、痛々しいくらい裂けた左の口、数本の巨大化した歯が鋭く光る、頬は血で濡れて、隙間から舌が見える。
「ごめんな、やっぱ、俺はダイナをかっこいいと思うよ。これは嘘じゃない、目も鼻も口も整っているよ。
左口以外ね!」
そう言って、涙めで笑った!
一瞬大きく開いた金色の瞳、俺の言葉に笑い、一筋の涙を流した。
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