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ヤンデレの誕生
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「ご飯出来ましたよ。」
ヨシュアの声に、焚き木の周りに集まるのを見て、枝で遊んでいたキメラもちょこちょこと真似をして近づく。
「ごはん?」
ぐーっ!とお腹を鳴らして、指をしゃぶりながら、大きな鍋をかき回すヨシュアの側をウロウロするキメラ。
「危ないから、座っててください。」
熱いですよ?と注意するが、気になる様でウロウロとしつつ、鍋を覗きこむ。
「あちゅい?あちゅい?」
器によそう、ヨシュアに、何度も確認するキメラは可愛いが、近すぎて怪我をしないかが、気になる。
「ホラッ!危ないって言われただろ?こっちに来て、座ってような。」
ヴィートに抱っこされ、強制的に皆の方へと運ばれた。
ヴィートの膝の上に座るキメラに、ジンクはムッと眉を寄せて、キメラを奪い、自分の膝に座らせた。
「ジンク、キメラにたべさせられんの?ジャムとは違うし、自分の分は後になるよ?」
「………。」
フンッと、ヴィートの言葉を無視し、膝の上のキメラの頭を撫でる。
運ばれてきたメニューは野菜たっぷりのスープとパン。
日持ちするものしか持ち運べない中での定番料理だ。
キメラの分を受け取ろうとするジンクに、少し不安な表情をしながら、ヨシュアも仕方無しに渡す。
「ホラッ、持てるか?」
「あちゅい?」
ジンクの差し出した器をビクビクとしながら、手を差し出した。
「器は熱くない。少しお前には重たいかもな。」
キメラはジンクの言葉にコクコクと頷きながら受け取る。
「いちご?」
多分、中身がいつものジャムじゃないと言いたいのだろう。
「いちごじゃないですよ。これはスープ。栄養がとれ、美味しいですよ。」
ヨシュアの言葉に、ジッと野菜スープを見つめる。
「しゅーぷ」
初めてなのか、見つめたまま動かないキメラに、周りも観察する。
すると、何を考えたのか、いきなり手をスープに突っ込もうとするキメラに、流石は勇者!瞬発力で、パッと手を掴む。
「おい!熱いだろ!スプーンを使え!」
「しゅぷーん……。」
まだ、キメラ用のスプーンがなく、大人サイズのを器に添えているが、分からない様で、ジンクがスプーンを持ち上げると、ギュッと手で握った。
「やはり、キメラには大きいですね。使えますかね?」
「キメラ!こう使うんだ。」
ライラックは自分のスープをスプーンで飲み干すと、キメラは頷いて、真似をする。
持ち手が逆で、上手く飲めず、口の周りと身体がびしゃびしゃになる。すっぽんぽんな為、胸元が僅かに赤い。
「あちゅい…」
熱いし、上手く飲めず、瞳を潤ませるキメラに、ジンクは深く息を吐き、自分の器を置いて、キメラのスープをスプーンで掬い、口元へと運んだ。
「ホラッ口開けろ。」
キメラは精一杯大きく口を開けるが、スプーンより小さい。
先端の細い方から持っていくと、上手く飲めた様だ。
「しゅーぷ!!」
美味しかったらしく、目をキラキラさせて、口を開ける。
ジンクは仕方なしに、じゃがいもを掬い、口元へ運ぶ。
「ん!!」
ご機嫌に手を振りながら、モグモグと口を動かす姿は可愛らしく、皆の手も止まり、キメラのお食事鑑賞会となった。
「いちご?」
ジンクが掬ったニンジンをいちごかと首を傾げるキメラ。
全く色は異なるが、似た色と認識しているのかもしれない。
「違う。ニンジンだ。」
「にんにん。」
口を開けて、ニンジンをモグモグと2度噛んだ瞬間、べぇーと吐き出すキメラ。
「うわっ!汚ねえな!!」
おや?これはもしかして…
「やっ!!」
もう一度ニンジンを掬うと、目を釣り上げて拒否するキメラに、ジンクも意地になる。
「好き嫌いしてると、デカく慣れねえぞ!!」
「せーちょ、しない!!きけん!」
「ぐっ!!こいつ!!」
プイッと横を向くキメラにジンクのこめかみに青筋が立つ。
しかし、いつものジンクなら、殴るか蹴るかをしているが、やはりキメラには甘い様で、怒りを必死に抑えている。
「キメラ、好き嫌いしていると、悪い子になっちゃうよ?そうしたら、大好きないちごも食べれなくなっちゃうよ?」
ヴィートの言葉に耳をピクピクと動かした。
「わるいこ?わるいこだめ…。」
しょんぼりと顔を暗くするキメラにうっと罪悪感にさえ鈍れる。
「キメラ、ニンジン食べれたら、次の町で好きなもの買ってあげますよ。」
ヨシュアの言葉に、顔を紅潮させ、勢いよく頷くと大きく口を開けた。
ジンクはニンジンをキメラの口に放り込む。
必死に噛みしめて飲み込む姿は人間の子供と変わらなかった。
「よし!!よく食べたな!!」
ライラックに頭を撫でられ、嬉しそうにするキメラ。
キメラはジンクの顔を見上げてドヤ顔を披露。
仕方なしに、ジンクも頭を撫でた。
キメラが食べ終わると、冷めたスープを皆は食べ始めた。
「さて寝るか、キメラはどうする?」
ライラックの言葉に、ジンクはギュッとキメラを抱きしめた。
「俺が見る。」
「お前ばかり、ズリーよ!!俺も触れ合いたい。」
「ほう…。」
シャキンと神剣を抜くジンクに、数歩後ろへ後退るライラック。
「まあまあ。キメラに聞いてみましょう。キメラ、誰と一緒に寝たいですか?」
「ねんね?」
ヨシュアの言葉にポーッと理解しているのかいないのか、目をまんまるにして固まる。
数秒固まったうち、小さな指で示した先にはライラックがいた。
「いしょ、ねる。」
ちょこちょことライラックの足にしがみつく姿にデロデロになるライラック。
それとは真逆に絶望感に闇のオーラを放つジンクは固まってしまった。
「おや、確かにライラックが1番褒めてあげてましたしね。残念でしたねジンク。おやすみなさい。」
ヨシュアは面白そうにしながら自分のテントにと入っていく。
ヴィートは、今後のライラックを心配しながらも、幸せそうなライラックに水をさせず、テントにと入っていった。
ただ1人、取り残されたジンク。
数時間固まった状態から出した答えは…
「ライラックを殺そう。」
闇夜に囁かれた言葉と共にヤンデレの誕生である。
ヨシュアの声に、焚き木の周りに集まるのを見て、枝で遊んでいたキメラもちょこちょこと真似をして近づく。
「ごはん?」
ぐーっ!とお腹を鳴らして、指をしゃぶりながら、大きな鍋をかき回すヨシュアの側をウロウロするキメラ。
「危ないから、座っててください。」
熱いですよ?と注意するが、気になる様でウロウロとしつつ、鍋を覗きこむ。
「あちゅい?あちゅい?」
器によそう、ヨシュアに、何度も確認するキメラは可愛いが、近すぎて怪我をしないかが、気になる。
「ホラッ!危ないって言われただろ?こっちに来て、座ってような。」
ヴィートに抱っこされ、強制的に皆の方へと運ばれた。
ヴィートの膝の上に座るキメラに、ジンクはムッと眉を寄せて、キメラを奪い、自分の膝に座らせた。
「ジンク、キメラにたべさせられんの?ジャムとは違うし、自分の分は後になるよ?」
「………。」
フンッと、ヴィートの言葉を無視し、膝の上のキメラの頭を撫でる。
運ばれてきたメニューは野菜たっぷりのスープとパン。
日持ちするものしか持ち運べない中での定番料理だ。
キメラの分を受け取ろうとするジンクに、少し不安な表情をしながら、ヨシュアも仕方無しに渡す。
「ホラッ、持てるか?」
「あちゅい?」
ジンクの差し出した器をビクビクとしながら、手を差し出した。
「器は熱くない。少しお前には重たいかもな。」
キメラはジンクの言葉にコクコクと頷きながら受け取る。
「いちご?」
多分、中身がいつものジャムじゃないと言いたいのだろう。
「いちごじゃないですよ。これはスープ。栄養がとれ、美味しいですよ。」
ヨシュアの言葉に、ジッと野菜スープを見つめる。
「しゅーぷ」
初めてなのか、見つめたまま動かないキメラに、周りも観察する。
すると、何を考えたのか、いきなり手をスープに突っ込もうとするキメラに、流石は勇者!瞬発力で、パッと手を掴む。
「おい!熱いだろ!スプーンを使え!」
「しゅぷーん……。」
まだ、キメラ用のスプーンがなく、大人サイズのを器に添えているが、分からない様で、ジンクがスプーンを持ち上げると、ギュッと手で握った。
「やはり、キメラには大きいですね。使えますかね?」
「キメラ!こう使うんだ。」
ライラックは自分のスープをスプーンで飲み干すと、キメラは頷いて、真似をする。
持ち手が逆で、上手く飲めず、口の周りと身体がびしゃびしゃになる。すっぽんぽんな為、胸元が僅かに赤い。
「あちゅい…」
熱いし、上手く飲めず、瞳を潤ませるキメラに、ジンクは深く息を吐き、自分の器を置いて、キメラのスープをスプーンで掬い、口元へと運んだ。
「ホラッ口開けろ。」
キメラは精一杯大きく口を開けるが、スプーンより小さい。
先端の細い方から持っていくと、上手く飲めた様だ。
「しゅーぷ!!」
美味しかったらしく、目をキラキラさせて、口を開ける。
ジンクは仕方なしに、じゃがいもを掬い、口元へ運ぶ。
「ん!!」
ご機嫌に手を振りながら、モグモグと口を動かす姿は可愛らしく、皆の手も止まり、キメラのお食事鑑賞会となった。
「いちご?」
ジンクが掬ったニンジンをいちごかと首を傾げるキメラ。
全く色は異なるが、似た色と認識しているのかもしれない。
「違う。ニンジンだ。」
「にんにん。」
口を開けて、ニンジンをモグモグと2度噛んだ瞬間、べぇーと吐き出すキメラ。
「うわっ!汚ねえな!!」
おや?これはもしかして…
「やっ!!」
もう一度ニンジンを掬うと、目を釣り上げて拒否するキメラに、ジンクも意地になる。
「好き嫌いしてると、デカく慣れねえぞ!!」
「せーちょ、しない!!きけん!」
「ぐっ!!こいつ!!」
プイッと横を向くキメラにジンクのこめかみに青筋が立つ。
しかし、いつものジンクなら、殴るか蹴るかをしているが、やはりキメラには甘い様で、怒りを必死に抑えている。
「キメラ、好き嫌いしていると、悪い子になっちゃうよ?そうしたら、大好きないちごも食べれなくなっちゃうよ?」
ヴィートの言葉に耳をピクピクと動かした。
「わるいこ?わるいこだめ…。」
しょんぼりと顔を暗くするキメラにうっと罪悪感にさえ鈍れる。
「キメラ、ニンジン食べれたら、次の町で好きなもの買ってあげますよ。」
ヨシュアの言葉に、顔を紅潮させ、勢いよく頷くと大きく口を開けた。
ジンクはニンジンをキメラの口に放り込む。
必死に噛みしめて飲み込む姿は人間の子供と変わらなかった。
「よし!!よく食べたな!!」
ライラックに頭を撫でられ、嬉しそうにするキメラ。
キメラはジンクの顔を見上げてドヤ顔を披露。
仕方なしに、ジンクも頭を撫でた。
キメラが食べ終わると、冷めたスープを皆は食べ始めた。
「さて寝るか、キメラはどうする?」
ライラックの言葉に、ジンクはギュッとキメラを抱きしめた。
「俺が見る。」
「お前ばかり、ズリーよ!!俺も触れ合いたい。」
「ほう…。」
シャキンと神剣を抜くジンクに、数歩後ろへ後退るライラック。
「まあまあ。キメラに聞いてみましょう。キメラ、誰と一緒に寝たいですか?」
「ねんね?」
ヨシュアの言葉にポーッと理解しているのかいないのか、目をまんまるにして固まる。
数秒固まったうち、小さな指で示した先にはライラックがいた。
「いしょ、ねる。」
ちょこちょことライラックの足にしがみつく姿にデロデロになるライラック。
それとは真逆に絶望感に闇のオーラを放つジンクは固まってしまった。
「おや、確かにライラックが1番褒めてあげてましたしね。残念でしたねジンク。おやすみなさい。」
ヨシュアは面白そうにしながら自分のテントにと入っていく。
ヴィートは、今後のライラックを心配しながらも、幸せそうなライラックに水をさせず、テントにと入っていった。
ただ1人、取り残されたジンク。
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