勇者は可愛すぎるキメラたんに夢中です。

B介

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もふもふキメラ

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村長宅が村の1番奥にあると聞いて、向かうと、村の中では1番大きい家の縁側に村長らしき年配の方が座っていた。
膝には何やらもふもふの白い塊が。猫だろうか。


「すみません。私達は王都から派遣された勇者パーティーですが、サモー村の村長でお間違えありませんか?」

ヨシュアが訪ねると、人の良さそうな村長さんが、笑顔で迎えてくれた。

「王都からわざわざ、この村まで来てくださったんですね?しかも勇者様方が!
はい、私が村長のオーブですが、一体この村に何か?」

「こちらの村にキメラが現れたと聞いたのですが…。」

ヴィートが首を傾げながら訪ねると、オーブ村長は目を見開き嬉しそうに頷いた。

「まあ!王都からわざわざキメラを見に来てくださったのですか?そこまで噂が行っているとわ!!はい、ちょうど2週間前に現れました。」

オーブの反応が少しおかしいが、やはりキメラはいるようで、一行は気を引きしめる。

「キメラは今どこにいますか?」

ライラックはゴクリと唾を飲み込みながらオーブ村長に訪ねる。

「はい、ここにほら。」

オーブ村長は膝の白いモフモフを指差す。

「……………。」

「………で、どこだ?」

ライラックはもう一度聞いた。


「ですから、ここにホラッ。」 

オーブ村長はもふもふの毛玉の塊をヒョイと両手で持ち上げた。

もふもふのふわふわな毛玉は持ち上げられても爆睡し、鼻ちょうちんを作っていた。

大きさは大人の両掌くらい。見た目1.5頭身くらいのまん丸で、後ろ足は鳥の足、これで飛べるのか?と思うほど小さい羽が背中にある。
小さい角が二本に、尻尾はまん丸の兎みたいにちょこんとあり、耳は羊?のようにピコピコしている。

全体的にはハムスター??何とも言えない生き物だが、可愛いらしいキメラだった。


「あっ、あの絵の…。」

至る所に描かれた生き物がコレ。

こんな数人に見られても爆睡中のキメラ。

4人はじっくりとキメラを観察した。

すると、何かを察したか、パチリと大きな溢れそうなクリクリの黒い瞳を開いた。

4人はビクッと一瞬固まったが、つぶらな瞳は4人を見て、ふにゃっと笑う。

パチンと弾けた鼻ちょうちんにビックリして、小さなピンクのお鼻をくしゅくしゅ前足で擦るキメラ。


か、可愛い……。


あまりの可愛さにぎゅーっと抱きつきたくなる。



「ふふっ!可愛いでしょ?抱いてみますか。」

村長から差し出されたキメラをまさかのジンクが受け取る。

一瞬3人はいきなり殺さないかと冷や冷やしたが、ジンクは無言でキメラを両手で抱くと、ジッと顔の側まで持っていき、マジマジと見つめた。

キメラもクリクリの瞳でそんなジンクを見つめた。

すると、何を思ったか、ジンクの薄い唇に前足でぷにっと触れた。

柔らかい感触にキメラは嬉しそうに目をキラキラさせる。

「キュ♡」
可愛いらしい鳴き声で首を傾げた小悪魔ポーズに、ジンクの顔がボンッと音が出るほど真っ赤になった。

「ジンク?」

真っ赤なジンクなど見たことないライラックは、キメラが何かしらの魔法を放ったのかと、不安気にジンクを伺うが、真っ赤になったまま固まっていた。

キメラをヨシュアは調べようとジンクから奪おうとするが、ジンクが手を離さない。

「ジンク!?本当にどうしたのです?魔法でもかかりました?」

「いや、調べたけど何もかかってないよ?」
ヴィートは眉を寄せながらジンクとキメラを見た。

「ジンク!離しなさい!」

ヨシュアはキメラを引っ張るが、ジンクは離さない。

引っ張られて痛かったのか、キュンキュンと潤んだ瞳で鳴くキメラに、ヨシュアは手を離した。

「痛かったね?ごめんね?」

鳴くキメラに、オロオロとヨシュアは謝ると、キメラはちょっぴり赤くなった小さなハムスターみたいな手を見せた。

「あっ、赤くなっちゃったね。引っ張った時に当たっちゃったのかな?ごめんね?」

それでも小さい手を出したまま、うるうるとヨシュアを見るキメラに、タジタジになる。

うぅっ、どうすれば……


痛いのー、ここ痛いのー。

と、ばかりに見つめられ罪悪感に襲われる。

すると、オーブ村長はニコニコしながらキメラの自分の指くらいのおててを触った。

「痛いの痛いの飛んで行けー!」

オーブ村長がそういうとキメラは満足気に小さい自分の手を見て喜んだ。

「うちの村のまじないです。転んだ子供にやる気休めですが、気に入ってしまってね。ちょっとでも痛いと求めるんですよ。」

ヨシュアはキメラの小さい手を触り、ゴクッと唾を飲み込んだ。

「痛いの痛いの飛んで行け?」

「キュッ♡」

痛くないよーと、小さな手でヨシュアの指をにぎにぎするキメラ。

その攻撃力にヨシュアは鼻血が出そうなほど興奮した。

か、可愛すぎる!!なんだよ!コレは!

そして、やっと動き出したジンクはギュッと胸にキメラを抱く。

キメラはあったかいのか、抱かれて胸にスリスリと身を寄せる。

「ヤベェ………。」
ポツリと呟いたジンクの顔は優しく微笑んでおり、ライラック達は逆に蒼白となる。


ジンクが…笑っている…!!




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