勇者は可愛すぎるキメラたんに夢中です。

B介

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サモー村

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勇者パーティーは、サモー村のキメラ討伐の為、王都を出て、早3日が経とうとしていた。

現在、辺りも暗くなったので、サモー村まであとわすがな距離のところで野営をしている。

「くそっ!なんでこんな山奥の村に出るんだよ、面倒くせーな。」

ジンクは神剣をほっぽり投げて、地面にゴロンと横になる。

「ジンク様!神剣は大事に扱って下さい!!魔王を倒す、唯一の武器なのですよ!?」

聖職者のヨシュア・アーカスは、神剣を大事に拾い上げ、布で付いた土を拭う。

ヨシュア・アーカスは23歳、聖職者の中でも聖力が強く、時期教皇候補とされている。肩の下あたりまである金髪を一つに束ね、優しいペリドット色の瞳の美形だ。このパーティーのまとめ役と言っても過言では無い。

「じゃあ、お前が持てよ。それ以外と重いんだよ。」

不機嫌に眉を寄せるジンクにヨシュアは溜息をつく。

「重いって、俺達はお前の分の食料まで持っているんだぞ?今だって食事の準備すら手伝わずに、何を言ってんだよ。」

ジンクの態度に鍋をかき混ぜなら苛つくライラック。

ライラック・バーモンド20歳。王国騎士団の若きエース。実力主義の騎士団の中で若いながら副団長を務めている。赤い髪の短髪にグレーの瞳の男らしいイケメン。

ライラックの言葉をガン無視するジンク。ライラックはムカつき、石を投げるが、寝転んだまま、それを避ける。

「まーまー、この人の性格は今に始まった事じゃ無いから。怒っても体力使うだけだよ。」

パンを切りながら、ライラックを宥めているのが、ヴィート・ヘルメス20歳。王宮魔道士だ。ヴィートも魔力は王宮魔道士内で1番強く、量も有り優秀だと言われている。綺麗な水色の髪の癖毛で肩まであり、橙色の瞳のイケメン。実はライラックとジンクとは爵位は違えど幼馴染と言える。まぁ、よくパン屋に買いに行った際にジンクに虐めらていたと言う関係性だが。


ライラックもヴィートもジンクが勇者に選ばれたと知ると、この世の終わりは既に来たと、3日間寝込んだのだ。


「まさか、こんな事になるとは…。」

ヴィートの呟きは夜の闇に消えた。


*******

朝目覚め、残りわずがな距離を、まさかのヨシュアが神剣を持ち、進む事になった。

だるそうに歩きつつ、サモー村の入り口に着いた。


「うわー着いちまった。腐乱した死体だらけだったらどうする?入りたくねぇ。」

勇者の発言とは言えないな。

「キメラの情報が入り、動き出す迄に数日、ここに辿り着くまでに4日。生存は難しいでしょうね。」

辛そうに顔をしかめるヨシュア。

「だが、異臭はしないな。」
ライラックは辺りを確認するが、死体の形跡も無い。

「…ってかさ、アレなに?」
ヴィートが指差す方向にサモー村の看板があるが、得体の知れない絵が書いてあった。
ふわふわもこもこの動物だろうか?姿形は見たことない。

「なんだよこれ?…なんか可愛いな。」
ライラックは看板の絵をじっくり見て、可愛さに微笑む。

気付くと、至る所にこの絵の看板が刺さっていた。

「とにかく、行ってみましょう。」
ヨシュアの言葉に一同は意を決して入り口を潜った。


すると、村は死体どころか、町では?と思うほど活気に溢れていた。

「キュキュちゃん特製絵葉書だよー!まとめ買いがお得だよ!!」

「キュキュちゃんの大好物の木苺ジャムだよ!いかが?そこのお兄さん!」

サモー村だけでは無く、近くの村からも集まっているようでお祭り騒ぎだった。

さすがのジンクも唖然としていた。

「なんだ、これは…。」

「キメラ情報は嘘か?」

とにかく村の村長の家に話を聞きに向かった。





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