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B介

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ネフェリア、学園編

友情?恋情?

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「ネフェリア!!」

静かな校内にサリファンは必死に叫ぶ。

かつて、これほど声を張り上げた事はあるだろうか。


焦る気持ちと待ち侘びた人物への恋情に、サリファンは息を切らしながら校内を駆け巡る。


既に寮へ?

いや、ここからだと、走り去った方向とは逆に行かなければならない。

上か?下か?

階段で立ち止まると、パタパタと足音が微かに聞こえる。


上か!?


叫びたい気持ちを抑えて、耳を澄まし、足音を追う。


ネフェリアはどんどんと上へと駆け上っている様だ。

ネフェリアは知らないだろう。

僕がいつも君の背中を追っていること。

必死に捕まえようと手を伸ばしていることを。

君はそんな僕に振り向き、笑顔を向けるが、僕の気持ちには気づかず、気にせず進むだけ。僕を意識しない。


だけど、今日は違う。

君は僕を意識して、僕から必死に逃げている。



ハアハアと、階段を駆け上がる苦しさに息が乱れるが、何故か自然と笑みが浮かんでしまう。

追いかけるのはいつも辛いが、今日の苦しさは嫌ではない。

ふと、階段上を見上げると、いつの間にか屋上への扉だった。

音を聞き逃したか?

いや、確かに上に来た筈だ。


ゆっくりとノブを回すと、扉は開いた。


目の前には屋上とは思えない温室が広がり、色とりどりの花達と草木が美しく植えられていた。


噂で学園長が趣味で育てている温室があると聞いていたが、ここなのか?

「ネフェリア!」


「ネフェリア!出てきてくれ!」

温かい温室の中、生い茂る木々と花の影に微かにプラチナブロンドが覗く。

内心ホッとして、ゆっくりと草花をかき分け、ネフェリアの元へと向かう。


「ネフェリア?」

声を掛けると、身体をビクッと跳ねさせて、こちらを振り向いた。

その紫色の瞳から流れる涙と花に囲まれた姿が、この世の者とは思えない美しさで、消えてしまうのでは?と焦り、腕を掴んでしまった。


すると、ネフェリアは自身の顔を掌で隠して俯いてしまった。


「サリファン!ごめん!今見ないで!!」

拒否の言葉に身体が固まり、先程の高揚感から一気に突き落とされた気持ちへとなる。


「ネフェリア?」

そんなに僕がいや?

もういらない?

どんどん嫌な気持ちが生まれていく。


「見ないで!今僕汚い!!最低な顔してるから!」

ネフェリアの言葉にサリファンは首を傾げながら、ネフェリアを見つめる。


「ネフェリアは汚くない。…ここにいると、本当に妖精かと思った。」


「ぼ、僕!妖精何かじゃない!!最悪の最低男だ!恋がわかんないとか、優先する事があるからって、皆を、サリファンを待たせておいて、僕嫉妬してる!フィフィルと、サリファンがくっついているの見て、苦しくなって、怒りたくなって…!!我儘だ僕は!!誰か1人を選べず、中途半端なくせに、一丁前に、嫌だなんて…汚い僕は…。こんな顔、見せたくないんだ。どっか言ってくれ…僕は所詮悪役なんだ。」

泣き叫ぶネフェリアの言葉に、サリファンは呆然と立ち尽くす。


ネフェリア?今なんて言った?

嫉妬?嫌だ?

僕とフィフィルがくっついていたのが、嫌?


胸の奥から込み上げてくる熱に、身体が熱くなる。

ニヤけてしまいそうな口元をネフェリアの腕を掴む手と、反対の手で覆う。


「やばい…。」


つい、出てしまった小さな呟きに、ネフェリアはピクリと反応して、恐る恐る顔を上げた。

ニヤける自分の顔を見られたくなくて、しゃがみ込むネフェリアを力一杯引き上げ、腕の中に閉じ込めた。


「さ、サリファン!!」

慌てるネフェリアの首筋に顔を埋める。


「僕、嬉しすぎて死にそう…。」


「えっ!?サリファン?」


初めて見るサリファンの様子に、涙も引っ込み心配するネフェリア。
   

「…ネフェリア。このまま聞いて…今僕もすごい顔しているから。」


抱きしめられたまま、あわあわとしていたネフェリアは、サリファンの言葉にピタリと動くのを止めた。

「ネフェリア、僕はやっぱり君を汚いとは思わないよ。…君が戸惑うのも無理は無いよ。勝手に僕、いや僕らが君に惚れただけだ。そんな僕らの気持ちにしっかり向き合ってくれる君を最低なんて誰も思わない。…それに、僕を思って嫉妬してくれるなんて、僕にはご褒美でしかない…。嬉しすぎてニヤけて、、見せれない程だ。」


「サリファン…。」

ギュウッと抱きしめる力と温かさにネフェリアは先程の嫌な自分自身の感情が癒され、消えていくのを感じた。

心地よい、サリファンの温もりに酔いしれ、自然とサリファンの背中に腕を回す。


静かな温室の中、どれくらい抱き合っただろう。

時間にしては数分だろうが、2人にとってはかけがえの無い時間だった。


ゆっくりとサリファンはネフェリアの顔を覗き込む。

潤む紫色の瞳が僕を思い流した涙だと思うと、どうしても顔が緩む。

「ネフェリア、、もう…友情、以上だと思ってもいいかな?」


サリファンの赤い瞳に少しばかりの不安が見え隠れしているのに、ネフェリアは気付く。

そんなサリファンの頬に手を添え、ネフェリアは恥ずかしそうに笑いながら小さく頷いた。

すると、サリファンが見せたく無いと言っていた理由がわかった。


赤い瞳がとろけんばかりに細められ、緩む口元をは笑みを抑えられず、半円を描く。

これがデレか?と芳子さんに確認したいほどの表情に、ネフェリアは見惚れてしまった。


友情以上…恋情になった瞬間だ。




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