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ネフェリア、学園編
作戦
しおりを挟む昼の混み合う食堂の中、フィフィルは顔を赤らめて立ち尽くすていた。
周りの生徒などいないと思えるほど、目の前の青年に心を奪われていたのだ。
「フィフィル殿いかがされました?」
甘く柔らかい栗色の髪に意思の強そうな赤い瞳、普段の冷たさが無く、優しく微笑みを浮かべている。
皇子様方の影ではあまり目立つ事が無いが、美しく精錬された顔は微笑むだけで時が止まるかのようだ。
「さ、サリファン様…。」
フィフィルは心奪われつう、その青年の名を呟いた。
ー2時間前
生徒会室にはサリファン、アリウス、そしてドファス・クーレンがいた。
サリファンへの情報はドファスが渡していたのだ。
「では、作戦を言おう。」
サリファンの言葉にアリウスとドファスは真剣な面持ちで向き合った。
「ドファスの情報によると、本日食堂で何かしらの連絡を取り合うはずだ。席は奥の窓際の1番端で見えにくい場所。多分、テーブルの裏、椅子など何処かしらに連絡手段の物が隠されているはず。
それを先に奪わなくてはならない。」
「何度か見張っていたが、3年のショーン男爵の息子が席に付き、フィフィルが来るまでに食事を済ませ、現れたと同時に席を立つ。そしてその席にフィフィルが座るという流れです。」
「じゃあ、そのショーンっていうのが、裏ボス?」
アリウスの言葉にドファスは首を振る。
「男爵の位じゃカフェの個室は無理です。それに、ショーン家は貧しい、人を使ったり、そこまでの余裕は無いでしょう。ショーンはただの運び屋だと思いますが、裏で汚いこともしています。捕まえて吐かせても証拠がない場合難しいでしょう。まずは、その連絡用物品を得る方が得策です。」
ドファスの言葉にサリファンは頷く。
「そこで、ショーンが席からどいた瞬間座る必要がある。
僕がフィフィルを足止めするから、ドファスがその席に座ってもらう。気づかれない様食事をしながら探ってもらう。アリウスはフィフィルが座らない事に動揺したショーンを席に戻さない様、邪魔をして欲しい。」
「まあ、そこまでは何となくわかるが、後でその連絡手段が盗まれていたら、ドファスが目をつけられないか?」
アリウスの言葉にサリファンはフッと口元を笑わせた。
「ドファスの情報によると、フィフィルがその後、その場から離れた時も何も持っていないと、ポケットの膨らみもないと言っていた。…なら手段は紙だろう。あえて偽の紙を置いておけば良い。しかも隠しながらであれば小さい紙。それなら、紙質などもバレない。」
「なるほど!!」
アリウスはポンッと手を叩く。
「では、失敗は許されないぞ。行くぞ!」
ー現在
「さ、サリファン様…僕に何か?」
フィフィルは上目遣いにうっとりとサリファンを見つめる。
「いや、最近君の可愛いピンクの髪を見かけなかったからね。つい、引き止めてしまったよ。」
アリウスは近場でサリファンの微笑みと、甘いセリフに寒イボを立てていた。
「誰だよ!あいつ…」
いつも無関心そうに口をへのじにしている奴が、キラキラ輝いていて笑える。
ネフェリア、見たら驚くだろうな。
さてさて、ドファスは上手く座れている。
おっ!ショーン男爵がフィフィルを見て気付いたな。
慌てて席に戻ろうとするショーンにアリウスはワザとぶつかる。
アリウスの体格に吹っ飛ばされ、尻餅をついたショーンは、相手を睨みつけようと顔を上げた。
「すまない。大丈夫ですか?」
ショーンは皇子様の側近であるアリウスを見て、ギョッと視線を泳がす。
「い、いえ!私の方こそ申し訳ございません。」
「しかし、私のスープが制服にかかってしまいました。良ければ新しい物を購入しますので、お名前を伺っても?」
アリウスは蹲み込んでいる、ショーンに手を差し伸べるが、ショーンは気まずさと席が気になる様で、俯きながら、席の方に視線を向けている。
すると、ドファスが立ち上がり食器を近くのウェイターに渡して、その場を去ろうとしている。それを見て、ショーンはアリウスのお辞儀をして、急いで席に向かった。
ドファスの視線の合図にアリウスもその場を去り、サリファンも表情を元に戻した。
「サリファン様?」
急に笑みの消えたサリファンに、フィフィルは伺う様に見つめた。
「それでは、失礼する。」
赤い瞳にギロリと睨まれ、驚き固まるフィフィルの横をスッと、通り過ぎるサリファン。
「な、何で…サリファン様…。」
先程の微笑みが夢だったような振る舞いにフィフィルは悲しそうに眉を寄せて、サリファンの背中を見つめた。
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