本当は貴方に興味なかったので断罪は謹んでお断り致します。

B介

文字の大きさ
上 下
86 / 107
ネフェリア、学園編

作戦

しおりを挟む

昼の混み合う食堂の中、フィフィルは顔を赤らめて立ち尽くすていた。

周りの生徒などいないと思えるほど、目の前の青年に心を奪われていたのだ。


「フィフィル殿いかがされました?」

甘く柔らかい栗色の髪に意思の強そうな赤い瞳、普段の冷たさが無く、優しく微笑みを浮かべている。

皇子様方の影ではあまり目立つ事が無いが、美しく精錬された顔は微笑むだけで時が止まるかのようだ。


「さ、サリファン様…。」


フィフィルは心奪われつう、その青年の名を呟いた。



ー2時間前


生徒会室にはサリファン、アリウス、そしてドファス・クーレンがいた。


サリファンへの情報はドファスが渡していたのだ。


「では、作戦を言おう。」


サリファンの言葉にアリウスとドファスは真剣な面持ちで向き合った。


「ドファスの情報によると、本日食堂で何かしらの連絡を取り合うはずだ。席は奥の窓際の1番端で見えにくい場所。多分、テーブルの裏、椅子など何処かしらに連絡手段の物が隠されているはず。
それを先に奪わなくてはならない。」


「何度か見張っていたが、3年のショーン男爵の息子が席に付き、フィフィルが来るまでに食事を済ませ、現れたと同時に席を立つ。そしてその席にフィフィルが座るという流れです。」

「じゃあ、そのショーンっていうのが、裏ボス?」

アリウスの言葉にドファスは首を振る。


「男爵の位じゃカフェの個室は無理です。それに、ショーン家は貧しい、人を使ったり、そこまでの余裕は無いでしょう。ショーンはただの運び屋だと思いますが、裏で汚いこともしています。捕まえて吐かせても証拠がない場合難しいでしょう。まずは、その連絡用物品を得る方が得策です。」


ドファスの言葉にサリファンは頷く。

「そこで、ショーンが席からどいた瞬間座る必要がある。
僕がフィフィルを足止めするから、ドファスがその席に座ってもらう。気づかれない様食事をしながら探ってもらう。アリウスはフィフィルが座らない事に動揺したショーンを席に戻さない様、邪魔をして欲しい。」


「まあ、そこまでは何となくわかるが、後でその連絡手段が盗まれていたら、ドファスが目をつけられないか?」 


アリウスの言葉にサリファンはフッと口元を笑わせた。


「ドファスの情報によると、フィフィルがその後、その場から離れた時も何も持っていないと、ポケットの膨らみもないと言っていた。…なら手段は紙だろう。あえて偽の紙を置いておけば良い。しかも隠しながらであれば小さい紙。それなら、紙質などもバレない。」


「なるほど!!」

アリウスはポンッと手を叩く。

「では、失敗は許されないぞ。行くぞ!」


ー現在


「さ、サリファン様…僕に何か?」

フィフィルは上目遣いにうっとりとサリファンを見つめる。

「いや、最近君の可愛いピンクの髪を見かけなかったからね。つい、引き止めてしまったよ。」


アリウスは近場でサリファンの微笑みと、甘いセリフに寒イボを立てていた。


「誰だよ!あいつ…」

いつも無関心そうに口をへのじにしている奴が、キラキラ輝いていて笑える。

ネフェリア、見たら驚くだろうな。


さてさて、ドファスは上手く座れている。

おっ!ショーン男爵がフィフィルを見て気付いたな。



慌てて席に戻ろうとするショーンにアリウスはワザとぶつかる。


アリウスの体格に吹っ飛ばされ、尻餅をついたショーンは、相手を睨みつけようと顔を上げた。

「すまない。大丈夫ですか?」

ショーンは皇子様の側近であるアリウスを見て、ギョッと視線を泳がす。

「い、いえ!私の方こそ申し訳ございません。」


「しかし、私のスープが制服にかかってしまいました。良ければ新しい物を購入しますので、お名前を伺っても?」

アリウスは蹲み込んでいる、ショーンに手を差し伸べるが、ショーンは気まずさと席が気になる様で、俯きながら、席の方に視線を向けている。


すると、ドファスが立ち上がり食器を近くのウェイターに渡して、その場を去ろうとしている。それを見て、ショーンはアリウスのお辞儀をして、急いで席に向かった。


ドファスの視線の合図にアリウスもその場を去り、サリファンも表情を元に戻した。

「サリファン様?」

急に笑みの消えたサリファンに、フィフィルは伺う様に見つめた。

「それでは、失礼する。」

赤い瞳にギロリと睨まれ、驚き固まるフィフィルの横をスッと、通り過ぎるサリファン。


「な、何で…サリファン様…。」


先程の微笑みが夢だったような振る舞いにフィフィルは悲しそうに眉を寄せて、サリファンの背中を見つめた。








しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...