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ネフェリア、学園編
幻、夢、若草の瞳
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「ローズ・マトロン、本日日直だったよね?地下の歴史準備室の机に資料があるから持って来てください。」
「エッ?でも地下は…。」
職員室に呼ばれたSクラス唯一の女性、マトロン伯爵令嬢は、歴史担当教諭に言われ、戸惑っていた。
ちょうど生徒会提案書を提出に来ていたネフェリアはそのやり取りに気付く。
確かに資料は日直である彼女が行くべきだが、地下は薄暗く、女性1人では恐れるのもわかる。
「トイズ先生。僕が行きますよ。あそこは令嬢1人では行きにくいと思いますので。」
そんなネフェリアの申し出に、救いのヒーローが現れたと、トロンとした瞳を向けるローズ・マトロン。
「そうですか。ありがとうございます。」
爵位はネフェリアのが上なのだろう。教師としても、きちんと礼を言う。
外で待っていたアリウスに地下への用を伝えると、付いてきてくれるらしい。
「お人好しだな。ネフェリア。そこがまたいいけど!」
アリウスはネフェリアの肩に腕を回して、地下への入り口に向かった。
ランプの灯をつけても薄暗くそこは、やはり少し不気味だ。
ネフェリアとアリウスはゆっくりと降りていく。
資料室を見つけ、ネフェリアが薄暗く中に入った瞬間、突如として、アリウスを頭痛が襲った。
ズキン!!
「…っ!」
なんだ!?頭が痛い!!
薄暗く冷たい地下……
ネフェリアと…
なんだ!俺、これ、この光景に覚えがある!!
ズキズキと痛む頭に微かに浮かび上がる残像…
泣き腫らした重たい瞼の、青白い血の気の引いた肌、光を失ったアメジストの瞳…
頬は殴られたのか?赤く腫れている。
身体には何重にも回されたロープで縛られている…その端を持つのは……
誰だ!?
薄暗い通路に鏡が…
映る人物に驚愕した…
若草色の瞳….俺だ…
「うわぁぁぁぁぁ!!」
いきなり頭を抱えて叫ぶアリウスに、ネフェリアは慌てて駆け寄る。
「アリウス!?アリウス!どうしたの!?」
アリウスは褐色の肌を白くし、瞳が揺れて涙を浮かべている。
微かに震える身体を僕は必死に抱きしめた。
暫く震えていた彼は、頭から手を離すと、ネフェリアを怯えた瞳で見つめた。
彼のこんな怯えた瞳…初めて見た。
「アリウス…?」
ネフェリアの声に、ビクンッと身体が跳ねる。
そして、ハッと状況を理解したかのように、腕で目を擦り、ネフェリアを抱きしめた。
「…すまない。頭が急に痛くなり、何かとてつもないものを見た気がした。…お前はここにいる…大丈夫だ。」
ギュッと抱きしめるアリウスの強さに、苦しく感じながらも、ネフェリアは抱きしめ返す。
弱々しい彼の姿…どうしたのか分からないが、今はこれが一番必要な気がした。
安心させるかの様に頭を撫で、優しく抱きしめる。
あれは、頭痛が見せた幻だ。
俺がネフェリアに酷いことをするはずがない…
あんな、姿…ネフェリアじゃない!!
ネフェリアはいつだって、綺麗だ…少しの汚れさえ浄化してしまうと、思うほど綺麗なんだ…
あんな曇ったアメジストの瞳は…ネフェリアじゃない!!
今を必死に感じようと、ただただ抱きしめる…
ああ…ネフェリア!!
そして、ふと、先日のカウディリアンの言葉を思い出した。
『…アリウス。…お前は何かおかしい夢を見ないか?』
『そう。夢であって欲しいほどの残酷なものだ。…私はここ何年か、何度も見る。より鮮明になる悪夢に、起きる度にホッとするんだ。…夢であって良かったと…。動けない理由はそれかもしれん。』
その言葉の意味が…もし同じような幻を見たのなら?
アリウスはゾッと身体を震わせ、頭を振る。
自分の恐ろしい考えなど捨てる!!
捨てたい……
何も考えず、気付かず、今のネフェリアを愛すんだ…。
あんなのこの地下の薄暗さが見せた恐怖の幻…
カウディリアン様だって同じものじゃないだろう…
そう…ただの幻だ。
アリウスはさらにギュッとネフェリアを抱きしめた。
「…ネフェリア…何があっても、俺がお前を守る…」
少しまだ潤みが残った若草の瞳が強く、ネフェリアを射抜く。
ネフェリアは戸惑いつつ、彼の瞳を見つめ返した。
前回…この瞳を、こんなにも熱く感じた事はなかった。
ああ、今のアリウスはこんなにも僕を見てくれているんだ。
ネフェリアは自然に笑みが浮かぶ。
「ああ。アリウス。ありがとう…」
アリウスはネフェリアの笑顔に安心したかの様に、ふにゃっと顔を緩めた。
そして、頬にキスを落とす。
「好きだぜネフェリア。」
ニッと笑うアリウスは幼き頃から変わらない太陽のような笑顔を向けた。
ネフェリアは驚き、キスされた頬を掌で押さえつつ、その笑顔に釣られて苦笑する。
「成長してもその顔は変わらないんだな。」
若草色の瞳がこんなにも心強く、安心することを今世で気づいたよ。
「さあ、戻ろうか。」
明るい世界へ。
*びすけです!!
初心者初作品ですが、記念にBL大賞コンテストエントリーしてみました!!
文才なくミスも多いですが、温かい目で見守ってください!
「エッ?でも地下は…。」
職員室に呼ばれたSクラス唯一の女性、マトロン伯爵令嬢は、歴史担当教諭に言われ、戸惑っていた。
ちょうど生徒会提案書を提出に来ていたネフェリアはそのやり取りに気付く。
確かに資料は日直である彼女が行くべきだが、地下は薄暗く、女性1人では恐れるのもわかる。
「トイズ先生。僕が行きますよ。あそこは令嬢1人では行きにくいと思いますので。」
そんなネフェリアの申し出に、救いのヒーローが現れたと、トロンとした瞳を向けるローズ・マトロン。
「そうですか。ありがとうございます。」
爵位はネフェリアのが上なのだろう。教師としても、きちんと礼を言う。
外で待っていたアリウスに地下への用を伝えると、付いてきてくれるらしい。
「お人好しだな。ネフェリア。そこがまたいいけど!」
アリウスはネフェリアの肩に腕を回して、地下への入り口に向かった。
ランプの灯をつけても薄暗くそこは、やはり少し不気味だ。
ネフェリアとアリウスはゆっくりと降りていく。
資料室を見つけ、ネフェリアが薄暗く中に入った瞬間、突如として、アリウスを頭痛が襲った。
ズキン!!
「…っ!」
なんだ!?頭が痛い!!
薄暗く冷たい地下……
ネフェリアと…
なんだ!俺、これ、この光景に覚えがある!!
ズキズキと痛む頭に微かに浮かび上がる残像…
泣き腫らした重たい瞼の、青白い血の気の引いた肌、光を失ったアメジストの瞳…
頬は殴られたのか?赤く腫れている。
身体には何重にも回されたロープで縛られている…その端を持つのは……
誰だ!?
薄暗い通路に鏡が…
映る人物に驚愕した…
若草色の瞳….俺だ…
「うわぁぁぁぁぁ!!」
いきなり頭を抱えて叫ぶアリウスに、ネフェリアは慌てて駆け寄る。
「アリウス!?アリウス!どうしたの!?」
アリウスは褐色の肌を白くし、瞳が揺れて涙を浮かべている。
微かに震える身体を僕は必死に抱きしめた。
暫く震えていた彼は、頭から手を離すと、ネフェリアを怯えた瞳で見つめた。
彼のこんな怯えた瞳…初めて見た。
「アリウス…?」
ネフェリアの声に、ビクンッと身体が跳ねる。
そして、ハッと状況を理解したかのように、腕で目を擦り、ネフェリアを抱きしめた。
「…すまない。頭が急に痛くなり、何かとてつもないものを見た気がした。…お前はここにいる…大丈夫だ。」
ギュッと抱きしめるアリウスの強さに、苦しく感じながらも、ネフェリアは抱きしめ返す。
弱々しい彼の姿…どうしたのか分からないが、今はこれが一番必要な気がした。
安心させるかの様に頭を撫で、優しく抱きしめる。
あれは、頭痛が見せた幻だ。
俺がネフェリアに酷いことをするはずがない…
あんな、姿…ネフェリアじゃない!!
ネフェリアはいつだって、綺麗だ…少しの汚れさえ浄化してしまうと、思うほど綺麗なんだ…
あんな曇ったアメジストの瞳は…ネフェリアじゃない!!
今を必死に感じようと、ただただ抱きしめる…
ああ…ネフェリア!!
そして、ふと、先日のカウディリアンの言葉を思い出した。
『…アリウス。…お前は何かおかしい夢を見ないか?』
『そう。夢であって欲しいほどの残酷なものだ。…私はここ何年か、何度も見る。より鮮明になる悪夢に、起きる度にホッとするんだ。…夢であって良かったと…。動けない理由はそれかもしれん。』
その言葉の意味が…もし同じような幻を見たのなら?
アリウスはゾッと身体を震わせ、頭を振る。
自分の恐ろしい考えなど捨てる!!
捨てたい……
何も考えず、気付かず、今のネフェリアを愛すんだ…。
あんなのこの地下の薄暗さが見せた恐怖の幻…
カウディリアン様だって同じものじゃないだろう…
そう…ただの幻だ。
アリウスはさらにギュッとネフェリアを抱きしめた。
「…ネフェリア…何があっても、俺がお前を守る…」
少しまだ潤みが残った若草の瞳が強く、ネフェリアを射抜く。
ネフェリアは戸惑いつつ、彼の瞳を見つめ返した。
前回…この瞳を、こんなにも熱く感じた事はなかった。
ああ、今のアリウスはこんなにも僕を見てくれているんだ。
ネフェリアは自然に笑みが浮かぶ。
「ああ。アリウス。ありがとう…」
アリウスはネフェリアの笑顔に安心したかの様に、ふにゃっと顔を緩めた。
そして、頬にキスを落とす。
「好きだぜネフェリア。」
ニッと笑うアリウスは幼き頃から変わらない太陽のような笑顔を向けた。
ネフェリアは驚き、キスされた頬を掌で押さえつつ、その笑顔に釣られて苦笑する。
「成長してもその顔は変わらないんだな。」
若草色の瞳がこんなにも心強く、安心することを今世で気づいたよ。
「さあ、戻ろうか。」
明るい世界へ。
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