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ネフェリア、学園編
合同授業
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今日はとても大切な日。
何の日かって?
今日が合同美術の日なんだよ。
ゲームが本格的に動き出す日。
入学式の並びで、Aクラスの列にやはりあの青年はいたから、間違いない。
少しドキドキする胸を押さえて、スケッチブックと筆記用具を持ち、カウディリアンと校庭へと向かう。
「本日はSとAの合同で、ペアになった人物の姿を描いて行きましょう。クジを引いて同じ番号の方と組んで頂きます。」
そういえば、本来なら僕はこの場にいないんだよね。
誰と組むことになるんだろう。
僕はクジを引くと11と出た。
僕のクジの番号をアリウスとサリファンが確認しに来る。
2人共違うようでガッカリしている。僕も気心知れた人が良かったな。
マリックとも遠目で視線を合わせたが、違うようだ。
マリックとは、ヤード家ってことで、周りがピリつくから、たまにしか話せなかった。マリックも気を利かせてくれているみたい。
あっ、カウディリアンがクジを引いたみたい。
チラッと視線をピンク髪のフィフィルに向けると、フィフィルも心なしかソワソワしていた。
そう、フィフィルとこれまで数回やはり接触はあり、フィフィルはカウディリアンが気になるようだった。
逆にこんなにも偶然会うフィフィルに警戒を強めたカウディリアン達だったけど。
「ネフェリア。何番だったか?」
カウディリアンは引いて急いで戻ってきたようだ。
「11番だよ。」
カウディリアンは自分の番号を見て、少し暗くなるが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
すると、何かを見つけ、顔が不機嫌になる。
「パール家か……。」
パール家?確かAクラスの伯爵家かな。
「カウディリアン様…。」
可愛らしい高い声にカウディリアンは振り向き、その人物を見ると溜息をついた。
「何のようだ?フィフィル・カトローザ。」
少し冷たい声に、フィフィルはビクッとするが、自分の番号7を見せて、微笑みを浮かべた。
「少し見えたのですが、同じ7番ですよね?よろしくお願いします。」
花が綻んだような可愛らしい笑顔をカウディリアンに向けている。
それを眺めていると、後ろから肩を叩かれる。
あれ?確か、さっき話が出たパール伯爵家の…
「ネフェリア様、同じ番号のようです。本日はよろしくお願いします。ジャムス・パールです。」
「そうだったのですね。よろしくお願いします。」
そう言うと、ジャムスは僕の腰をいきなり抱いて、歩き出した。
腰を抱かれる事は慣れているが、いきなり初対面で触れるのはあまり好きではない。
しかも偶然かも知れないが撫でるようにお尻を触られた気がした。
ブルネットの髪のジャムス、確か手当たり次第、男女共に口説いていると聞いた事がある。
「ここで描きましょう。」
ジャムスは、少し木の影になった場所を選び、女にする様に、ネフェリアの座る場所にハンカチ敷いた。
「パール様、別に男同士なのでハンカチは大丈夫ですよ?」
こういう気遣いがモテるのだろうか?
綺麗な顔はしているが、皇子様方や兄様、アリウス達のがかっこいい。
僕はハンカチを綺麗にたたみ、返すと、少し驚きながらもジャムスは受け取った。
僕は近くにあった幹に座る。正面にも岩があるから向き合えるだろう。
すると何故か、ジャムスは同じ幹に座り、僕の肩に腕を回した。
「えっ?何?」
僕は不審に思い、ジャムスと距離を取ろうとしたが、ジャムスの掴む手が異様に強かった。
「ネフェリア様…本当に貴方は美しいです。どうか、僕にも貴方を味わう許可を頂けませんか?」
ネフェリアの頸をジャムスの指がくすぐる。
は?この人何を言っているの?味わうって??
頭がはてなマークでいっぱいになっていると、ジャムスの顔が近づいてきた。
「ちょ!やめ!」
近づく唇に、ネフェリアはジャムスの顔を掴み、抵抗する。
ヒィィ!気持ち悪い!!ヤダ!
殴ってもいいのかな?生徒会だからまずい!?
「ジャムス・パール!!そこで何をしている!」
木の影から現れたのはカウディリアンだった。
「カウディ様!!」
た、助かった!!
カウディリアンは美術教師を引き連れ、助けに来てくれた。
「いや、コレはネフェリア様から誘惑されまして…!」
えっ!僕、そんな事していない!!
「ネフェリアが貴様などを誘惑するか!!マド先生、ネフェリアを他には任せられません。私がネフェリアとペアになります!」
怒りを露わにする皇子にさすがの教師も頷くしかなかった。
「わ、わかりました皇子様…ジャムス・パールは私と職員室に来なさい。カウディリアン皇子のペアは3人のペアがいるので、そこと組んでもらいましょう。」
あっ、そうか通常いないはずの僕がいるから、割り切れない人数なのか…
助かったけど、カウディリアンとこんな形でペアになるとは!!
カウディリアンは僕をギュッと抱きしめた。
「すまない。遅くなった。パール家と組むと気付いた時から嫌な予感がしていた。なかなかカトローザが離してくれなくてな。」
ジャムスに触られた時は不快でしかなかったが、カウディリアンの腕の中は安心した。
目を閉じ、大きな身体に身を預けると、ピリリと刺すような視線を感じる、目を開く。
カウディリアンの背中越しに、フィフィルの姿を捉えた。
その顔は歪み、とてもヒロインとは思えない容姿だった。
そして、鋭くネフェリアを睨み、立ち去った。
ああ、僕は、ヒロインの大事なイベントを奪ったのだ。
だけど、この安心する腕の中を返す気にはならなかった。
何の日かって?
今日が合同美術の日なんだよ。
ゲームが本格的に動き出す日。
入学式の並びで、Aクラスの列にやはりあの青年はいたから、間違いない。
少しドキドキする胸を押さえて、スケッチブックと筆記用具を持ち、カウディリアンと校庭へと向かう。
「本日はSとAの合同で、ペアになった人物の姿を描いて行きましょう。クジを引いて同じ番号の方と組んで頂きます。」
そういえば、本来なら僕はこの場にいないんだよね。
誰と組むことになるんだろう。
僕はクジを引くと11と出た。
僕のクジの番号をアリウスとサリファンが確認しに来る。
2人共違うようでガッカリしている。僕も気心知れた人が良かったな。
マリックとも遠目で視線を合わせたが、違うようだ。
マリックとは、ヤード家ってことで、周りがピリつくから、たまにしか話せなかった。マリックも気を利かせてくれているみたい。
あっ、カウディリアンがクジを引いたみたい。
チラッと視線をピンク髪のフィフィルに向けると、フィフィルも心なしかソワソワしていた。
そう、フィフィルとこれまで数回やはり接触はあり、フィフィルはカウディリアンが気になるようだった。
逆にこんなにも偶然会うフィフィルに警戒を強めたカウディリアン達だったけど。
「ネフェリア。何番だったか?」
カウディリアンは引いて急いで戻ってきたようだ。
「11番だよ。」
カウディリアンは自分の番号を見て、少し暗くなるが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
すると、何かを見つけ、顔が不機嫌になる。
「パール家か……。」
パール家?確かAクラスの伯爵家かな。
「カウディリアン様…。」
可愛らしい高い声にカウディリアンは振り向き、その人物を見ると溜息をついた。
「何のようだ?フィフィル・カトローザ。」
少し冷たい声に、フィフィルはビクッとするが、自分の番号7を見せて、微笑みを浮かべた。
「少し見えたのですが、同じ7番ですよね?よろしくお願いします。」
花が綻んだような可愛らしい笑顔をカウディリアンに向けている。
それを眺めていると、後ろから肩を叩かれる。
あれ?確か、さっき話が出たパール伯爵家の…
「ネフェリア様、同じ番号のようです。本日はよろしくお願いします。ジャムス・パールです。」
「そうだったのですね。よろしくお願いします。」
そう言うと、ジャムスは僕の腰をいきなり抱いて、歩き出した。
腰を抱かれる事は慣れているが、いきなり初対面で触れるのはあまり好きではない。
しかも偶然かも知れないが撫でるようにお尻を触られた気がした。
ブルネットの髪のジャムス、確か手当たり次第、男女共に口説いていると聞いた事がある。
「ここで描きましょう。」
ジャムスは、少し木の影になった場所を選び、女にする様に、ネフェリアの座る場所にハンカチ敷いた。
「パール様、別に男同士なのでハンカチは大丈夫ですよ?」
こういう気遣いがモテるのだろうか?
綺麗な顔はしているが、皇子様方や兄様、アリウス達のがかっこいい。
僕はハンカチを綺麗にたたみ、返すと、少し驚きながらもジャムスは受け取った。
僕は近くにあった幹に座る。正面にも岩があるから向き合えるだろう。
すると何故か、ジャムスは同じ幹に座り、僕の肩に腕を回した。
「えっ?何?」
僕は不審に思い、ジャムスと距離を取ろうとしたが、ジャムスの掴む手が異様に強かった。
「ネフェリア様…本当に貴方は美しいです。どうか、僕にも貴方を味わう許可を頂けませんか?」
ネフェリアの頸をジャムスの指がくすぐる。
は?この人何を言っているの?味わうって??
頭がはてなマークでいっぱいになっていると、ジャムスの顔が近づいてきた。
「ちょ!やめ!」
近づく唇に、ネフェリアはジャムスの顔を掴み、抵抗する。
ヒィィ!気持ち悪い!!ヤダ!
殴ってもいいのかな?生徒会だからまずい!?
「ジャムス・パール!!そこで何をしている!」
木の影から現れたのはカウディリアンだった。
「カウディ様!!」
た、助かった!!
カウディリアンは美術教師を引き連れ、助けに来てくれた。
「いや、コレはネフェリア様から誘惑されまして…!」
えっ!僕、そんな事していない!!
「ネフェリアが貴様などを誘惑するか!!マド先生、ネフェリアを他には任せられません。私がネフェリアとペアになります!」
怒りを露わにする皇子にさすがの教師も頷くしかなかった。
「わ、わかりました皇子様…ジャムス・パールは私と職員室に来なさい。カウディリアン皇子のペアは3人のペアがいるので、そこと組んでもらいましょう。」
あっ、そうか通常いないはずの僕がいるから、割り切れない人数なのか…
助かったけど、カウディリアンとこんな形でペアになるとは!!
カウディリアンは僕をギュッと抱きしめた。
「すまない。遅くなった。パール家と組むと気付いた時から嫌な予感がしていた。なかなかカトローザが離してくれなくてな。」
ジャムスに触られた時は不快でしかなかったが、カウディリアンの腕の中は安心した。
目を閉じ、大きな身体に身を預けると、ピリリと刺すような視線を感じる、目を開く。
カウディリアンの背中越しに、フィフィルの姿を捉えた。
その顔は歪み、とてもヒロインとは思えない容姿だった。
そして、鋭くネフェリアを睨み、立ち去った。
ああ、僕は、ヒロインの大事なイベントを奪ったのだ。
だけど、この安心する腕の中を返す気にはならなかった。
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