34 / 107
ネフェリア、学園編
合同授業
しおりを挟む
今日はとても大切な日。
何の日かって?
今日が合同美術の日なんだよ。
ゲームが本格的に動き出す日。
入学式の並びで、Aクラスの列にやはりあの青年はいたから、間違いない。
少しドキドキする胸を押さえて、スケッチブックと筆記用具を持ち、カウディリアンと校庭へと向かう。
「本日はSとAの合同で、ペアになった人物の姿を描いて行きましょう。クジを引いて同じ番号の方と組んで頂きます。」
そういえば、本来なら僕はこの場にいないんだよね。
誰と組むことになるんだろう。
僕はクジを引くと11と出た。
僕のクジの番号をアリウスとサリファンが確認しに来る。
2人共違うようでガッカリしている。僕も気心知れた人が良かったな。
マリックとも遠目で視線を合わせたが、違うようだ。
マリックとは、ヤード家ってことで、周りがピリつくから、たまにしか話せなかった。マリックも気を利かせてくれているみたい。
あっ、カウディリアンがクジを引いたみたい。
チラッと視線をピンク髪のフィフィルに向けると、フィフィルも心なしかソワソワしていた。
そう、フィフィルとこれまで数回やはり接触はあり、フィフィルはカウディリアンが気になるようだった。
逆にこんなにも偶然会うフィフィルに警戒を強めたカウディリアン達だったけど。
「ネフェリア。何番だったか?」
カウディリアンは引いて急いで戻ってきたようだ。
「11番だよ。」
カウディリアンは自分の番号を見て、少し暗くなるが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
すると、何かを見つけ、顔が不機嫌になる。
「パール家か……。」
パール家?確かAクラスの伯爵家かな。
「カウディリアン様…。」
可愛らしい高い声にカウディリアンは振り向き、その人物を見ると溜息をついた。
「何のようだ?フィフィル・カトローザ。」
少し冷たい声に、フィフィルはビクッとするが、自分の番号7を見せて、微笑みを浮かべた。
「少し見えたのですが、同じ7番ですよね?よろしくお願いします。」
花が綻んだような可愛らしい笑顔をカウディリアンに向けている。
それを眺めていると、後ろから肩を叩かれる。
あれ?確か、さっき話が出たパール伯爵家の…
「ネフェリア様、同じ番号のようです。本日はよろしくお願いします。ジャムス・パールです。」
「そうだったのですね。よろしくお願いします。」
そう言うと、ジャムスは僕の腰をいきなり抱いて、歩き出した。
腰を抱かれる事は慣れているが、いきなり初対面で触れるのはあまり好きではない。
しかも偶然かも知れないが撫でるようにお尻を触られた気がした。
ブルネットの髪のジャムス、確か手当たり次第、男女共に口説いていると聞いた事がある。
「ここで描きましょう。」
ジャムスは、少し木の影になった場所を選び、女にする様に、ネフェリアの座る場所にハンカチ敷いた。
「パール様、別に男同士なのでハンカチは大丈夫ですよ?」
こういう気遣いがモテるのだろうか?
綺麗な顔はしているが、皇子様方や兄様、アリウス達のがかっこいい。
僕はハンカチを綺麗にたたみ、返すと、少し驚きながらもジャムスは受け取った。
僕は近くにあった幹に座る。正面にも岩があるから向き合えるだろう。
すると何故か、ジャムスは同じ幹に座り、僕の肩に腕を回した。
「えっ?何?」
僕は不審に思い、ジャムスと距離を取ろうとしたが、ジャムスの掴む手が異様に強かった。
「ネフェリア様…本当に貴方は美しいです。どうか、僕にも貴方を味わう許可を頂けませんか?」
ネフェリアの頸をジャムスの指がくすぐる。
は?この人何を言っているの?味わうって??
頭がはてなマークでいっぱいになっていると、ジャムスの顔が近づいてきた。
「ちょ!やめ!」
近づく唇に、ネフェリアはジャムスの顔を掴み、抵抗する。
ヒィィ!気持ち悪い!!ヤダ!
殴ってもいいのかな?生徒会だからまずい!?
「ジャムス・パール!!そこで何をしている!」
木の影から現れたのはカウディリアンだった。
「カウディ様!!」
た、助かった!!
カウディリアンは美術教師を引き連れ、助けに来てくれた。
「いや、コレはネフェリア様から誘惑されまして…!」
えっ!僕、そんな事していない!!
「ネフェリアが貴様などを誘惑するか!!マド先生、ネフェリアを他には任せられません。私がネフェリアとペアになります!」
怒りを露わにする皇子にさすがの教師も頷くしかなかった。
「わ、わかりました皇子様…ジャムス・パールは私と職員室に来なさい。カウディリアン皇子のペアは3人のペアがいるので、そこと組んでもらいましょう。」
あっ、そうか通常いないはずの僕がいるから、割り切れない人数なのか…
助かったけど、カウディリアンとこんな形でペアになるとは!!
カウディリアンは僕をギュッと抱きしめた。
「すまない。遅くなった。パール家と組むと気付いた時から嫌な予感がしていた。なかなかカトローザが離してくれなくてな。」
ジャムスに触られた時は不快でしかなかったが、カウディリアンの腕の中は安心した。
目を閉じ、大きな身体に身を預けると、ピリリと刺すような視線を感じる、目を開く。
カウディリアンの背中越しに、フィフィルの姿を捉えた。
その顔は歪み、とてもヒロインとは思えない容姿だった。
そして、鋭くネフェリアを睨み、立ち去った。
ああ、僕は、ヒロインの大事なイベントを奪ったのだ。
だけど、この安心する腕の中を返す気にはならなかった。
何の日かって?
今日が合同美術の日なんだよ。
ゲームが本格的に動き出す日。
入学式の並びで、Aクラスの列にやはりあの青年はいたから、間違いない。
少しドキドキする胸を押さえて、スケッチブックと筆記用具を持ち、カウディリアンと校庭へと向かう。
「本日はSとAの合同で、ペアになった人物の姿を描いて行きましょう。クジを引いて同じ番号の方と組んで頂きます。」
そういえば、本来なら僕はこの場にいないんだよね。
誰と組むことになるんだろう。
僕はクジを引くと11と出た。
僕のクジの番号をアリウスとサリファンが確認しに来る。
2人共違うようでガッカリしている。僕も気心知れた人が良かったな。
マリックとも遠目で視線を合わせたが、違うようだ。
マリックとは、ヤード家ってことで、周りがピリつくから、たまにしか話せなかった。マリックも気を利かせてくれているみたい。
あっ、カウディリアンがクジを引いたみたい。
チラッと視線をピンク髪のフィフィルに向けると、フィフィルも心なしかソワソワしていた。
そう、フィフィルとこれまで数回やはり接触はあり、フィフィルはカウディリアンが気になるようだった。
逆にこんなにも偶然会うフィフィルに警戒を強めたカウディリアン達だったけど。
「ネフェリア。何番だったか?」
カウディリアンは引いて急いで戻ってきたようだ。
「11番だよ。」
カウディリアンは自分の番号を見て、少し暗くなるが、周りをキョロキョロと見回し始めた。
すると、何かを見つけ、顔が不機嫌になる。
「パール家か……。」
パール家?確かAクラスの伯爵家かな。
「カウディリアン様…。」
可愛らしい高い声にカウディリアンは振り向き、その人物を見ると溜息をついた。
「何のようだ?フィフィル・カトローザ。」
少し冷たい声に、フィフィルはビクッとするが、自分の番号7を見せて、微笑みを浮かべた。
「少し見えたのですが、同じ7番ですよね?よろしくお願いします。」
花が綻んだような可愛らしい笑顔をカウディリアンに向けている。
それを眺めていると、後ろから肩を叩かれる。
あれ?確か、さっき話が出たパール伯爵家の…
「ネフェリア様、同じ番号のようです。本日はよろしくお願いします。ジャムス・パールです。」
「そうだったのですね。よろしくお願いします。」
そう言うと、ジャムスは僕の腰をいきなり抱いて、歩き出した。
腰を抱かれる事は慣れているが、いきなり初対面で触れるのはあまり好きではない。
しかも偶然かも知れないが撫でるようにお尻を触られた気がした。
ブルネットの髪のジャムス、確か手当たり次第、男女共に口説いていると聞いた事がある。
「ここで描きましょう。」
ジャムスは、少し木の影になった場所を選び、女にする様に、ネフェリアの座る場所にハンカチ敷いた。
「パール様、別に男同士なのでハンカチは大丈夫ですよ?」
こういう気遣いがモテるのだろうか?
綺麗な顔はしているが、皇子様方や兄様、アリウス達のがかっこいい。
僕はハンカチを綺麗にたたみ、返すと、少し驚きながらもジャムスは受け取った。
僕は近くにあった幹に座る。正面にも岩があるから向き合えるだろう。
すると何故か、ジャムスは同じ幹に座り、僕の肩に腕を回した。
「えっ?何?」
僕は不審に思い、ジャムスと距離を取ろうとしたが、ジャムスの掴む手が異様に強かった。
「ネフェリア様…本当に貴方は美しいです。どうか、僕にも貴方を味わう許可を頂けませんか?」
ネフェリアの頸をジャムスの指がくすぐる。
は?この人何を言っているの?味わうって??
頭がはてなマークでいっぱいになっていると、ジャムスの顔が近づいてきた。
「ちょ!やめ!」
近づく唇に、ネフェリアはジャムスの顔を掴み、抵抗する。
ヒィィ!気持ち悪い!!ヤダ!
殴ってもいいのかな?生徒会だからまずい!?
「ジャムス・パール!!そこで何をしている!」
木の影から現れたのはカウディリアンだった。
「カウディ様!!」
た、助かった!!
カウディリアンは美術教師を引き連れ、助けに来てくれた。
「いや、コレはネフェリア様から誘惑されまして…!」
えっ!僕、そんな事していない!!
「ネフェリアが貴様などを誘惑するか!!マド先生、ネフェリアを他には任せられません。私がネフェリアとペアになります!」
怒りを露わにする皇子にさすがの教師も頷くしかなかった。
「わ、わかりました皇子様…ジャムス・パールは私と職員室に来なさい。カウディリアン皇子のペアは3人のペアがいるので、そこと組んでもらいましょう。」
あっ、そうか通常いないはずの僕がいるから、割り切れない人数なのか…
助かったけど、カウディリアンとこんな形でペアになるとは!!
カウディリアンは僕をギュッと抱きしめた。
「すまない。遅くなった。パール家と組むと気付いた時から嫌な予感がしていた。なかなかカトローザが離してくれなくてな。」
ジャムスに触られた時は不快でしかなかったが、カウディリアンの腕の中は安心した。
目を閉じ、大きな身体に身を預けると、ピリリと刺すような視線を感じる、目を開く。
カウディリアンの背中越しに、フィフィルの姿を捉えた。
その顔は歪み、とてもヒロインとは思えない容姿だった。
そして、鋭くネフェリアを睨み、立ち去った。
ああ、僕は、ヒロインの大事なイベントを奪ったのだ。
だけど、この安心する腕の中を返す気にはならなかった。
85
お気に入りに追加
3,074
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる