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サトラレ
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クラス表示の掲示板を見て、クラスへとヨウちゃんと移動をしていると、浮き足立つ声から、ザワザワと声色が変わる。
何かあるのかと、周りをよく見ると、皆の視線が一点に集まっているのがわかる。
ヨウちゃんも何故か目を丸くして、クラスの中を見入っている。
その視線を追うとそこには、静かに一人席に座る黒髪のボブの少女がいた。
その首には赤い首輪が巻かれていた。
「え.....。」
まさか...!
『赤い首輪』の意味は必ず社会ルールで教わる。ある家庭を抜かして。
赤い首輪は、目印なのだ。
5億人に1人と呼ばれる特殊能力。
サトラレの目印。
そのサトラレにはルールがある。
ふと、視線に気づいた、赤い首輪の少女は
席で読んでいた本から目を外し、
周りを見た。
その瞬間、ハッと、周りもまた日常会話へと戻る。
不思議そうに小首を傾げ、また本へと移す少女。
そう。サトラレのルールは、サトラレに対して、サトラレと対応してはならない。
気づかぬフリをしなければならない。
サトラレは、サトリと違い、自分の心の声を他人に聞かせてしまう。その為機密事項とはできないのだ。
だたら、せめて日常を安全、健やかにという国際保護対象とし、社会がサトラレを守るシステム。
サトラレ以外の人間はサトラレとして扱わずに気づかないふりをしなければならない。
サトラレの場合は、特殊病気が持病と教わり首輪に抗菌システムが付いてると、幼少期から付けられる為、自身がサトラレとは教わらない。
サトラレ情報を目にしないよう保護対象とされる。
赤い首輪の意味は目印と、俺と同じ心の声を抑える装置だ。
国から隠されて保護されるサトリ
国から保護されて、自身には隠されるサトラレ。
まさか、この日本で同じクラスになるとは思わなかった。
「すげー....どんだけの奇跡だよ。」
ポツリと呟くヨウちゃんの気持ちもわかるが...
「まあ、確かに同い年って奇跡はあるけど、国的に保護対象をまとめたくて、操作したんじゃない?
俺は電車が嫌で近場にしてしまっただけだけど。」
俺からしたら、サトリより珍しいサトラレだとしても、一般人と変わらない。
普通に周りと一緒で聞こえるだけだ。
黒板に書いてある、自分の名前の席を見つける。
窓側から名前の順らしく、ヨウちゃんとは離れてしまった。
そして、まさかのサトラレの後ろの席。
彼女の名前は伊野晴子(いのはるこ)だということがわかった。
黒髪のボブが、窓から入る風になびく度に、赤い首輪が目に入る。
ただ、俺にはそれだけのことだった。
チャイムの音と同時に、教師が入ってきた。
少し若めの体育教師みたいな、焦げた肌と刈り上げた髪。今着ているスーツよりポロシャツが似合いそうな筋肉をしていた。
「今日から担任となる、清水正孝だ。マサタカ先生と読んでください!よろしく!」
何故下の名前なんだー!と、クラスに必ず1人はいるお調子者が騒ぐ。
「今から、体育館に移動して、入学式を済ませたら、教室で自己紹介をしよう!じゃあ、廊下に名前の順で男女で1列に並んでくれ。」
廊下に出て、並んで気づいたが、男女で分かれても、隣は伊野さんだった。
それを見て、ヨウちゃんがやっぱり奇跡!!と心の中で叫んだのは気づかないふりをする。
入学式や朝会など好きじゃない。
皆は静かだろうが、その分考えごとが多いらしく、心の声がうるさい。
しかも、来るな!って言ったのに、ヨウちゃんママとうちの母が座っていた。
よく短時間で準備したよ。
鳴り止まない心の声に、無になろうとした時
『校長先生の話長いなぁ、朝ご飯食べれなくてお腹空いたなぁ。甘いのが食べたいょ
アンパンマーン』
と、隣からの声が頭に響く。
『何の為に生まれてー何のために生きる♪』
え?アンパンマンの歌?
頭の中に歌が響く事に動揺して、伊野の方を向きそうになるが、ハッと堪える。
すると前にいる。池田という男性の肩が震えているのに気づいた。
よく見ると周りも震えながら堪えていた。
そうか、サトラレだから、これは皆にも聞こえているのか。
『なんで、アンパンマンなんだよ!』
『やめて!笑わせないで!』
笑わない様に皆必死に堪えているのか、辺りからも僅かにしか、心の声が聞こえなくなっていた。
皆必死に無になろうとしているんだろう。
校長も少し震えた声で演説していたが、
アンパンマンには勝てず、終わらす事にしたらしい。
伊野は式が終わり、退場するまで、アンパンマンを心の中で歌い続けていた。
少し音痴な伊野の歌声に俺は救われた。
退場しつつ、口元に少し笑みが溢れる奏多ね姿に、麻里子が目を潤ませたことを、奏多は気づかなかった。
「さて!自己紹介からはじめよう!
先程伝えたが、私は清水正孝!マサタカ先生って呼んでください!
担当教科は体育と言いたいとこだが、社会!趣味はカレー作り!32歳独身です!」
絶対、体育だと思ったーやら、彼女はいますかー!など、賑やかに始まる自己紹介に、照れたように答える正孝。
またしても名前の順らしく、早めに自分の番が来そうだ。
「伊野晴子です。」
スッと前の席の伊野が席を立つと、ガヤガヤしていた周りも静かになる。
「ハルコと呼ばれていました。気軽に呼んでください。趣味は読書。推理ものが好きで、好きなものは...」
『...アンパンマンって言ったら引かれるかしら?』
やはり、好きなの2番まで歌えるってあまりいないよ。
と、周りも思っていたことに同意する。
「伊野、どうした?大丈夫だから、続けて。」
正孝の優しい声に、伊野は、コクンと頷き、アンパンマンが好きと答える。
「あんパンも好きなの?」
と、伊野の隣に座っていた少女が聞く。
「うん!菓子パンが大好き!中でもあんぱんが大好きです!」
話しかけられたことが、嬉しいのか、少し頬を赤らめて、にこやかに話す伊野。
最初の物静かな印象と変わり、明るい無邪気さが見えた。
その伊野の様子にクラスも賑やかに戻る。
その流れの中、スッと立ち上がると、心配そうに見守るヨウちゃんの姿が目に入る。
ヨウチャンが心配してくれてる理由はわかる。
中学の自己紹介時、緊張しながら、教師の目を見た瞬間、彼の心の声を聞いてしまったのだ。
自分をサトリと知り、機密誓約書を記入しても、隠しきれない、目つきと心の声。
誰しもが、自分の知られたくないモノがある。仕方ないこと、、。
それでも、軽蔑したような大人からの視線に耐えれるモノでは当時無かった。
小学時代は、勉強差もそこまで出ない為、教師にもサトリとの公表が無かった為よかったが...。
「入江奏多です。」
そう言って正面を見た時、正孝の優しい瞳に、ドキッと身体を強ばらせた。
『落ち着いて。』
優しい正孝の心の声に驚きつつ、自己紹介を進めた。
「趣味は絵を描くこと。特に自然を描くのが好きで、好きな食べ物は、炭水化物、惣菜パンが好き。甘いのは苦手です。」
やべ、伊野のが印象的すぎて。パンをあげてしまった。
「え、、あんぱん美味しいのに...」
ショックを受けた顔で、こちらを振り向いた伊野の瞳が思いの外黒く、大きい事にどきりと胸を弾ませた。
何かあるのかと、周りをよく見ると、皆の視線が一点に集まっているのがわかる。
ヨウちゃんも何故か目を丸くして、クラスの中を見入っている。
その視線を追うとそこには、静かに一人席に座る黒髪のボブの少女がいた。
その首には赤い首輪が巻かれていた。
「え.....。」
まさか...!
『赤い首輪』の意味は必ず社会ルールで教わる。ある家庭を抜かして。
赤い首輪は、目印なのだ。
5億人に1人と呼ばれる特殊能力。
サトラレの目印。
そのサトラレにはルールがある。
ふと、視線に気づいた、赤い首輪の少女は
席で読んでいた本から目を外し、
周りを見た。
その瞬間、ハッと、周りもまた日常会話へと戻る。
不思議そうに小首を傾げ、また本へと移す少女。
そう。サトラレのルールは、サトラレに対して、サトラレと対応してはならない。
気づかぬフリをしなければならない。
サトラレは、サトリと違い、自分の心の声を他人に聞かせてしまう。その為機密事項とはできないのだ。
だたら、せめて日常を安全、健やかにという国際保護対象とし、社会がサトラレを守るシステム。
サトラレ以外の人間はサトラレとして扱わずに気づかないふりをしなければならない。
サトラレの場合は、特殊病気が持病と教わり首輪に抗菌システムが付いてると、幼少期から付けられる為、自身がサトラレとは教わらない。
サトラレ情報を目にしないよう保護対象とされる。
赤い首輪の意味は目印と、俺と同じ心の声を抑える装置だ。
国から隠されて保護されるサトリ
国から保護されて、自身には隠されるサトラレ。
まさか、この日本で同じクラスになるとは思わなかった。
「すげー....どんだけの奇跡だよ。」
ポツリと呟くヨウちゃんの気持ちもわかるが...
「まあ、確かに同い年って奇跡はあるけど、国的に保護対象をまとめたくて、操作したんじゃない?
俺は電車が嫌で近場にしてしまっただけだけど。」
俺からしたら、サトリより珍しいサトラレだとしても、一般人と変わらない。
普通に周りと一緒で聞こえるだけだ。
黒板に書いてある、自分の名前の席を見つける。
窓側から名前の順らしく、ヨウちゃんとは離れてしまった。
そして、まさかのサトラレの後ろの席。
彼女の名前は伊野晴子(いのはるこ)だということがわかった。
黒髪のボブが、窓から入る風になびく度に、赤い首輪が目に入る。
ただ、俺にはそれだけのことだった。
チャイムの音と同時に、教師が入ってきた。
少し若めの体育教師みたいな、焦げた肌と刈り上げた髪。今着ているスーツよりポロシャツが似合いそうな筋肉をしていた。
「今日から担任となる、清水正孝だ。マサタカ先生と読んでください!よろしく!」
何故下の名前なんだー!と、クラスに必ず1人はいるお調子者が騒ぐ。
「今から、体育館に移動して、入学式を済ませたら、教室で自己紹介をしよう!じゃあ、廊下に名前の順で男女で1列に並んでくれ。」
廊下に出て、並んで気づいたが、男女で分かれても、隣は伊野さんだった。
それを見て、ヨウちゃんがやっぱり奇跡!!と心の中で叫んだのは気づかないふりをする。
入学式や朝会など好きじゃない。
皆は静かだろうが、その分考えごとが多いらしく、心の声がうるさい。
しかも、来るな!って言ったのに、ヨウちゃんママとうちの母が座っていた。
よく短時間で準備したよ。
鳴り止まない心の声に、無になろうとした時
『校長先生の話長いなぁ、朝ご飯食べれなくてお腹空いたなぁ。甘いのが食べたいょ
アンパンマーン』
と、隣からの声が頭に響く。
『何の為に生まれてー何のために生きる♪』
え?アンパンマンの歌?
頭の中に歌が響く事に動揺して、伊野の方を向きそうになるが、ハッと堪える。
すると前にいる。池田という男性の肩が震えているのに気づいた。
よく見ると周りも震えながら堪えていた。
そうか、サトラレだから、これは皆にも聞こえているのか。
『なんで、アンパンマンなんだよ!』
『やめて!笑わせないで!』
笑わない様に皆必死に堪えているのか、辺りからも僅かにしか、心の声が聞こえなくなっていた。
皆必死に無になろうとしているんだろう。
校長も少し震えた声で演説していたが、
アンパンマンには勝てず、終わらす事にしたらしい。
伊野は式が終わり、退場するまで、アンパンマンを心の中で歌い続けていた。
少し音痴な伊野の歌声に俺は救われた。
退場しつつ、口元に少し笑みが溢れる奏多ね姿に、麻里子が目を潤ませたことを、奏多は気づかなかった。
「さて!自己紹介からはじめよう!
先程伝えたが、私は清水正孝!マサタカ先生って呼んでください!
担当教科は体育と言いたいとこだが、社会!趣味はカレー作り!32歳独身です!」
絶対、体育だと思ったーやら、彼女はいますかー!など、賑やかに始まる自己紹介に、照れたように答える正孝。
またしても名前の順らしく、早めに自分の番が来そうだ。
「伊野晴子です。」
スッと前の席の伊野が席を立つと、ガヤガヤしていた周りも静かになる。
「ハルコと呼ばれていました。気軽に呼んでください。趣味は読書。推理ものが好きで、好きなものは...」
『...アンパンマンって言ったら引かれるかしら?』
やはり、好きなの2番まで歌えるってあまりいないよ。
と、周りも思っていたことに同意する。
「伊野、どうした?大丈夫だから、続けて。」
正孝の優しい声に、伊野は、コクンと頷き、アンパンマンが好きと答える。
「あんパンも好きなの?」
と、伊野の隣に座っていた少女が聞く。
「うん!菓子パンが大好き!中でもあんぱんが大好きです!」
話しかけられたことが、嬉しいのか、少し頬を赤らめて、にこやかに話す伊野。
最初の物静かな印象と変わり、明るい無邪気さが見えた。
その伊野の様子にクラスも賑やかに戻る。
その流れの中、スッと立ち上がると、心配そうに見守るヨウちゃんの姿が目に入る。
ヨウチャンが心配してくれてる理由はわかる。
中学の自己紹介時、緊張しながら、教師の目を見た瞬間、彼の心の声を聞いてしまったのだ。
自分をサトリと知り、機密誓約書を記入しても、隠しきれない、目つきと心の声。
誰しもが、自分の知られたくないモノがある。仕方ないこと、、。
それでも、軽蔑したような大人からの視線に耐えれるモノでは当時無かった。
小学時代は、勉強差もそこまで出ない為、教師にもサトリとの公表が無かった為よかったが...。
「入江奏多です。」
そう言って正面を見た時、正孝の優しい瞳に、ドキッと身体を強ばらせた。
『落ち着いて。』
優しい正孝の心の声に驚きつつ、自己紹介を進めた。
「趣味は絵を描くこと。特に自然を描くのが好きで、好きな食べ物は、炭水化物、惣菜パンが好き。甘いのは苦手です。」
やべ、伊野のが印象的すぎて。パンをあげてしまった。
「え、、あんぱん美味しいのに...」
ショックを受けた顔で、こちらを振り向いた伊野の瞳が思いの外黒く、大きい事にどきりと胸を弾ませた。
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