こんなはずじゃなかった

B介

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西園寺という男

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西園寺グループとは日本トップクラスといっても過言ではない。
海外進出も行い、テーマパーク運営まで手を広めている。

その跡継こそ西園寺晴臣。初等部から常にトップを独占し続ける頭脳、そして容姿端麗のまさに完璧超人。

完璧であれ!己の敵は己のみ!が西園寺家の教えだ。
まさに、自分が一番。
その教育のせいか、人は自分より劣る存在とみなし、他人を信じる事の無い、人を駒と考える人物となった。

それでも、自分より劣るが優秀な人物、努力をするものは好ましく認めている。
それがSクラスのメンバー上位だ。

友人と言っても学生時代と、そして社会に出た時役立つだろうと利益込みの考えで選び抜いた。

もう、生まれた時から自分の道が決まり、その為に死ぬほど努力をした。だからそれは揺るがない。

揺るがないが、時々、自分の道に逆らい、新しい道を作り自由を手にした兵藤雷仁と言う男が羨ましいと感じた。

ヤクザという己の道から、違う道…。

自分にも何かあったのだろうか?

そう考えてしまう日もある。

もう一つ兵藤が気になるのは、身体能力だけ、奴に勝てない。この俺がだ!!

同じクラスでも、話すことも、仲良くも無いが気になる存在ではいた。


だが、まさか1人の男を取り合うライバルとなるとは思いもしなかった。


そして、俺が、その男の為なら西園寺を捨て、違う道を考えてしまうほどになるとは……。


くそ!なんて男だ…崎原睡蓮。

最初はただの興味本位だった。ただのボサ髪に眼鏡、そして俺達を前にしても動じない神経。
簡単に手に入らないから燃える。ただ、それだけだった。

だが、必ず俺は睡蓮を自然と探し、どこにいても見つけ、視線が離せなかった。
何故か魅力的にしなやかな身体、声のトーン、行動力…全てが心臓を鷲掴む。

そして、いつの間にか、欲しくて、俺を見て欲しくて、狂いそうになった。

理由は分からない。ただ、欲しい。

鬼ごっこでも、あいつは俺の手から簡単にすり抜ける。

いつか、そのように、俺の前から消えるのでは?

そう思うと魘された。

何故こんなに焦がれるのか。

兵藤が同じ想いだと知った時は、俺は初めて負けるかもしれないという恐怖、その敗北の2文字に耐えられなかった。

初めて、その意味を理解したといっても過言ではない。

勝ち続けた人生…。己の敵は己…確かに、俺はこの恐怖に打ち勝てるのだろうか?

兵藤だけではない。俺が優秀だと認めて者達は多分皆本気だろう。

本当の姿を見たからでは無い。

お前だから愛おしいんだ睡蓮。

だから怖いんだ。睡蓮。

お前という唯一の存在を作ることが。

今でさえ、お前が消えるかもと思うと眠れない。

兵藤に敗北するかもと考えると吐き気がする。

男同士という社会からの周りからの視線から睡蓮を守れるのだろうかと思うと一歩が踏み出せない。

俺はこんな弱かったのか?

兵藤が告白したと聞いた時、俺の足元が崩れたように感じた。

悔しいが認めよう、奴は強い。

あいつは、俺が踏み出せないものを普通に進んでいく。

くそ!嫌だ!睡蓮が他の奴のモノになるのは耐えられない……。

西園寺という名がこんなにも重く感じるとは…。


俺はどうしたいんだ?失うのも嫌で、得て守れるかも不安で。


ただ、恋焦がれて。

好きだ 好きだ 好きなんだ。

ただそれだけだった。


そして、睡蓮が奴を意識した瞬間…俺の中で何もかもがどうでも良くなった。

本当に失いそうになって、初めて、何が一番大切で、それ以外がゴミだと感じた瞬間だ。


お前の為なら西園寺を捨てよう。

晴臣として、1人のお前に夢中な男として見てくれ。



愛しているよ。睡蓮。



*******


「晴臣……そこどけよ、俺が寝れねえだろ。」

「せまい、お前が部屋戻れよ。」

現在、2人がかりで睡蓮を喰らった後、睡蓮の横の奪い合いをしている。

まさかこいつとこんな事になるとは。

「うるさいなー。寝かせろよー2人とも部屋帰れよー……。」

うとうとする睡蓮のおでこを撫でながら幸せを噛みしめる。


奴は俺を認めたのか、こういう関係になってから、俺を晴臣と呼ぶようになった。

俺はなんか悔しくてまだ呼べでいないが、やっと奴と並んだ気がした。

悔しい、理由はこうなって気付いた。

この天下の西園寺が兵藤に少し、憧れていたのだろう。

自分で決められる奴の強さに。

雷仁。俺は睡蓮をお前に渡したくはない。
だが、こういう関係になれて、少し良かったとも思う。


お前は、永遠のライバルだ。

だから絶対に負けない。もう2度と躊躇しない。


睡蓮……俺を選べよ。愛している。


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