こんなはずじゃなかった

GWのとある休日3

第1回キックマシーンゲーム大会参加者は、俺、圭介、豪、兵藤、二階堂となった。俺は森脇先輩に巨大ウーくんを預けてウォーミングアップ。どの蹴り方が1番いいかな？
「ねぇ！睡蓮！僕を助けてくれた時みたいなクルって回る蹴りがいい！」
ぴょんぴょん跳ねながら言う森脇先輩に頷く。

「回し蹴りね？上手く体重が乗らないとだな。」
ニヤッと圭介が笑う。

やるからには負けるか！！

ジャンケンをした結果。
1番　豪　2番　二階堂　3番　圭介　4番　俺　5番　兵藤となった。

周りはチワワに埋め尽くされ、キャーキャー声援が送られる。

「川嶋様ー！頑張ってー！」
さすが親衛隊がある豪さん。こっそり森脇先輩が教えてくれたが、あまりつるまないから、ファンも近づけないらしい。

ドゴン！！
やはり、長身からの蹴りはいい音！がたいもいいしな！
985kg！！

「きゃー！！カッコいい！！」
チワワの声援が外まで聞こえたのか、生徒が増えてくる。
生徒会メンバーも現れて、遠巻きに見ている。

続いて、二階堂の番だ。
「風政様！！頑張って下さい！」
風神さんも人気ですなー。手を振って声援に答えてますわ。
身長はあるが、体型は俺と変わらないし、ミドルで大丈夫かな？

ドゴン！！
983kg！！

やはりこの学園只者じゃねえな。

「坊ちゃんの学校の生徒さん達すごいな。プロ並みじゃないか。」
ゲームセンターの店員さん達がザワついている。

「キャー風政様凄い！」
「いや、勝てませんでしたね。」
ふふっと笑いながら戻ってきますが、体重さもありますからね！？

「睡蓮！！見てろよ？」
白い歯をニカッと見せながら、手を振る圭介。今気が付きましたが、俺たち耳付けたままですね。
周りのチワワさん達がめちゃ写真撮ってますよ。

「鵜山くーん！！頑張ってー！！」
俺はチワワさん達の真似をしてみた。
「圭介くーん！！頑張ってー！！」
なかなかキショイ声がでたな。ふふ、失敗しろ！
一瞬顔を赤くして、嬉しそうに笑った。だが、次の瞬間、遊びの雰囲気はなくなり、スイッチが変わった様に集中する。

ドガァーン！！！

壊れてませんか？！
1175kg！！

はい、やっぱり壊れましたね！変えて下さい。弁償ですか？？

店員さんもびっくりしてマシーンの確認をするが…
な、なんと大丈夫そう…。

「キャー！！すごい！！！制服に革靴だよ！？信じられない！」
チワワさん大喜び！！
「さすがですねー雷仁、やばいんじゃ？」
ニヤニヤと兵藤に聞く、二階堂。兵藤はフンと口元を笑わせた。

あのー！その前に俺ですから！？
この異様な盛り上がりにビクつく俺。

「次のって、噂のボサボサ？できるの？」
「あ！会長殴った奴！」
ひー！！アウェイ！！

「睡蓮！がんばれー！！ウーくんも応援しているよ！」
森脇先輩！！なんて可愛い声！

「睡蓮！負けたら後でベッドの中で慰めてやるぞ！」
なんちゅう、卑猥な声援だよ！！会長のファンに睨まれただろ！！
「「スイスイー！ガンバー！！」」
「睡蓮ちゃーん！バナナーあげるからがんばれー！」
キララキ先輩、マリマリ先輩！
やば、皆んな居んのかよ！
声援は低めなのは置いといて。よし！昔を思い出して集中！！
圭介、兵藤が前を陣取ってニヤニヤしている。
くそっと思いながら、軸足からの勢いで回し蹴り！！
うっ！革靴少し滑った！

そこにいた生徒達の時は一瞬止まった。いや、息を止めたのだ。綺麗なフォームからのしなやかな下肢が風を切りさく。武道未経験者でも分かるほどの綺麗な蹴り、制服に隠れているはずなのに、魅了する筋肉。

ドガァーン！！！

1154kg！！

「あー！！やっぱダメかー。くそー！負けた！」
数字を見て、悔しく地面を見て振り返ると、周りが騒然としていて、首を傾げる。
えっ！？何？
圭介と、兵藤がワナワナと震えながら、瞳をこれでもかと開いている。
「「た、辰杯の天使！！」」
た、辰杯？なんか聞いたことあるような…

ガバッと圭介と、兵藤に肩を掴まれる。痛い！！凄い力！！
「い、今の回し蹴り！！う、嘘だろ！お前がそうなのか！？」
「す、睡蓮！！か、空手の大会出た事あるか！？」
へ！？何、痛いんだが！！
すっごい形相で怖いんですけど！！
「いっ、一回ならあるよ。多分…」
「「いつだ！！」」
な、なんなんだよ！覚えてねえよ！！
「色々やらされたからいつかわかんない、写真を姉か理事長が持ってるよ！」
「「見せろ！！」」
今日、マジでどうした！？
「いいからやれよ！！委員長の番だろ！？」
はっ！と気付いた様に我に帰り、キックマシーンへと向かう兵藤。
大きく深呼吸したと思ったら、兵藤は俺を嬉しそうに見つめた。その瞳がいつもと違い、ドキッとする。

「見とけよ！前と違う俺を！」
そういうとマシーンに向かう。一瞬の事だった。

ドガァーーーン

1200kg！！

やはり、鬼は鬼ですな。