こんなはずじゃなかった

B介

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春の嵐の予感10

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「失礼しまーす。」

重い頑丈な扉を開けると、海斗が窓に腰掛け、書類から俺に目線を移す。

ぐ、、様になってるな。

「よく来たね。睡蓮くん。こっちおいで。」

「放送で呼び出すなよ。」
文句を言いつつ、窓の方まで行くと、ぐいっと海斗に腰を引き寄せられ、すっぽり腕の中に閉じ込められた。俺は海斗の胸を押し、空間を作るが、腰にはしっかり腕が巻きついている為逃れられない。

「携帯も教えてくれないのに?他にどうやって?ああ、直接、クラスまで迎えに行けばよかったかな?今度からそうするよ。」

顔を近づけて覗き込み、囁く海斗に、俺の意思に反して顔が赤くなる。
イケメンのドアップなキツい!!本当にキレイな顔しやがって!
「離せよ!あんたなら、俺が教えなくても調べれば分かるだろ?嫌だが…。」

「僕は、睡蓮くんから聞きたいんだよ。その携帯には、蓮花と祖父、漆原家だけだろ?もう、友達に教えてしまったかい?」

とろけるような瞳で見つめられ、更に体温が上がるのがわかる。
だからそういう顔は女にしろ!この際蓮花でもいい!

「まだだよ」
俺の答えにスペシャルビューティースマイルという技を出してきた。
あまりのキラキラ光線に目が………
攻撃にやられて、胸を押す力が怯んだ瞬間、片手を奪われ、グイっと腰をより引き寄せられ密着する。

うわわわわわぁあ!!?

「じゃあ、友達より先に、1番最初に僕へ教えて?」
ん~と片手で必死に押しているが抜け出せない。

すると、もう片方の奪われた手を海斗は自分の口元に持って行く。
「うわ!!教える!教えるから!」
ひぃ~~!! 
海斗は俺の手にキスをしながらこちらを伺う。
「本当に?この場を逃れる嘘じゃない?」
「じゃあ!今口頭で言うから覚えられるなら覚えてみろ!」
「070☆×○%5*%+!アドレスは☆☆☆☆☆@iCloud.com!」

「LINEIDは?」
ぐっ!!
「SUIREN REN!」
「すいれんれん?可愛いね。ありがとう。覚えたよ。」

嘘つけ!覚えられる訳ないだろ!…ないよな??

「教えたんだから離せよ!」
握られている手を必死に引っ張るがびくともしない。

「まだ、呼び出した用件が終わってないよ?睡蓮くん、君は入学早々この可愛い手で生徒会長を殴ったんだって??」
そういうと、少し赤くなった手の甲にキスをする。

う!!バレてる!キスすんな!
俺は口を噤んだ。
「睡蓮くん…その美味しそうな唇に触れるのも許したの?」
急激に曇る瞳が鋭くなる。
「許してない!端っこをペロッてされただけだ!」
一瞬海斗の様子に怯んでしまったが、負けずと睨む。
「だけ?」
曇っていた瞳の奥がギラついたように感じ、冷たい冷気に覆われる。

やべえ…めちゃくちゃ怒ってる…

「睡蓮くん…僕はね、すごく我慢しているんだ。僕は、君の叔父で、大人だ。だから、君が成人迎えるまでは保護者として徹しようと……時々我慢出来ずオイタしちゃうけど、これでも必死に欲望を抑えているんだよ??それなのに、されただけ??」

徐々に低くく怒気を含んだ声に恐怖のあまり唾を飲み込む。

「それなら僕もしていいよね?」
そういうと、海斗は俺の唇の端を舐め、そして唇を覆った。
いきなりの濡れた柔らかい感触に驚き硬直する。海斗はそんな俺の様子に、唇を割って分厚い舌で歯をなぞるよう舐める。我に返り、抵抗しようと必死にもがくが逃れる事が出来ない。海斗の舌を拒むことしか今は出来ず、歯茎を這うくすぐったさに必死に耐えた。
すると、唇をゆっくりついばんだ後、海斗は唇から離れた。
ほっとして、息を必死でする睡蓮を満足そうに見るが、まだ目は笑っていなかった。そのことを睡蓮も気付いており、警戒をするよう、また身体を強張らせる。
「これも…されただけ? ごめんね睡蓮くん。睡蓮くんの初めてはもらっておかないと、僕は君にどんな酷いことをするか心配でね。僕は社会的に手を出せないのに、年齢が近いだけで簡単に手を出され、許せなくてね。……いいかい?睡蓮…君は魅力的だ。容姿を隠していても溢れ出ている。そんな君を狼達の巣に入れた自分を殴りたいが、それ以上に君が俺のテリトリーにいない事の方が不安だった。知らないうちに消えてしまうのでは?と、兄さん達みたいにね。そして、知らないうちに誰かに奪われてしまうのではと…中学の担任だっけ?あのようなクズに奪われるのは避けたい。まだ、日本のトップの息子達のがいい……。
だが、僕も負けないよ。君が成人したら、我慢しないから覚えておいて?そして、万が一君の大事な初めてが他の虫に奪われたら……俺は…二度と我慢をしない…わかったな?睡蓮。」

口調も雰囲気もいつもの海斗ではなかった。密着した身体からは熱く燃えたぎる何かを感じるが、表情は冷たく、そして射抜く鋭さを持ち、それに恐怖を覚え、睡蓮は震えた。
怒る事も、言い訳も何も発せず、ただ頷くしか出来なかった。

「いい子だ…。」

射抜く視線はそのままで、海斗はゆっくりと睡蓮を解放した。
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