こんなはずじゃなかった

B介

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春の嵐の予感2

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「じゃあ、睡蓮は委員長の小林の隣な。小林、手を上げろ!」

「はい!」
俺と同じくらいの身長かな?眉毛あたりまで伸びた前髪を横に流し、太めの眉毛が男らしいが、全体的にふわりとした優しい雰囲気がある落ち着いた青年だ。

後ろから2番目の窓際。いい席だ。何故残っていたのか?

「よろしく。」
カバンをサイドに掛けて、隣の委員長に挨拶すると、
彼は笑顔で答えてくれた。
「よろしく、僕は小林洋一郎、この前委員長に決まったんだ。好きに呼んでね」

うん、委員長っぽい。好印象を与える仕草と見た目に安心する。変態や違和感ある笑顔の副会長とは違うな。
「じゃあ、俺も好きに呼んで。よろしく小林。」

「俺もよろしく!鵜山圭介。」
今度は前の席から、がたいの良い青年が振り向き手を差し出してきた。
「よろしく。鵜山」
差し出された手を握ると、強く握り返された。
「 俺は圭介って呼んで♡睡蓮って呼ぶから」
ニカッと笑うと見える白い歯は褐色の肌によく似合う。黒髪ツーブロックで筋肉質ながたいは男らしさを感じさせる魅力的なものだ、なんかスポーツでもやってるのか?いや、格闘技かな?
……ってか痛い!痛いぞ!
「圭介…手、痛い」
ジトッと見つめると、圭介もジッと見つめ返してきた。その眼は獲物を狙うかのように獰猛で、俺の眼鏡の奥の瞳まで捕らえられたように感じた。
その熱量に手を自然と引くと、圭介はパッと手を離し、先程の獰猛さを消し去り爽やかに歯を見せて笑った。
「わりーわりー。おい、川嶋も挨拶しろよ。」
圭介は小林の後ろの席で蹲って寝ている青年に向けて声を掛ける。
圭介の声にピクリと大きな背中を揺らし、ゆっくりと身体を起こした。
起こされて不機嫌なのか、眉間を深く寄せて、三白眼の鋭い目つきで、圭介を睨みつけた。
この男もがたいがとても良い。顔はとにかく怖いが、茶髪でワックスで立たせた短髪にシャープな顎、薄い唇と、とても整っていて美形だと思う。
「よろしく。俺転校してきた、崎原睡蓮。好きに呼んで?」
不機嫌なせいか、無言の彼に話しかけてみるが、圭介に向けていた視線をゆっくり睡蓮に移しただけで、沈黙は続く。ただ、じっと見つめられるだけ…。
まぁ、圭介に向けていた鋭い睨みでは無いので、まだ良いかな…。いつ視線を逸らせば良いのか、なんか逸らしたら負けな気がするな。

そんな両者の見つめ合い?の間に入ったのが、我らの委員長だ。
「睡蓮、彼は川嶋豪。寡黙なタイプだから、代わりに紹介するね?大体S組になるのはいつも同じメンバーだから初等部から顔馴染み。中学からの人もいるけどね!」
さすが小林!俺の気まずさに気付いてくれましたか。
圭介なんて、自分から仕掛けておいて、ニヤニヤするだけだし、人柄が出るな。
「よろしく、川嶋。」
もう一度俺は川嶋に目線を送った。
「…………」

「…豪。」
返答が無いため、諦めて前を向こうとした時、低く小さな声が聞こえた。

「ん?」
俺は、その声に反応し、もう一度聞き返す。

「………」
「………」

耐えろ!耐えろ俺!野生動物を手名付けるつもりで待つんだ!!

「………」
「………」

「…豪でいい。」

耐えたー!耐えた俺!
「豪ね!了解!俺も睡蓮でいいよ。」
野生動物を手名付けた嬉しさに自然と笑みが溢れる。

豪は少し頬を赤らめ、プイッと横を向いてまた、机に蹲った。
顔は怖いが、なんか可愛いな。おい。
「えー、じゃあ僕も洋一郎にして。睡蓮」
小林が、自分だけ名字が嫌なのか下の名前で呼ぶように言ってきた。
まぁ、長くて呼びにくいが仕方ないか。
「わかった。洋一郎」
……なげーな。
俺の後ろはいないし、後は圭介の隣の…と視線を向けた時、
「おい!睡蓮!もう挨拶は後にしろ!今日はこのまま俺の授業だ!いい加減にこっち向け!」

あ、横川の存在忘れていた……。
すんませーーーん!
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