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五月:開戦
第20話:三つ巴の戦い
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「あと3個か…案外早く終わりそうだな」
散り散りになった16個のボールの内13個は既にスタジアムの大会本部に集束していた。残り数が表示されている液晶見ながら電樹が言った。
「快と祐希、それと怜奈がまだ来てませんね。彼らに限ってしくじるとは思いませんが…」
「ま、あいつらのことだ。どっかでぶつかって…小競り合ってるんじゃねえの?」
冬真が電樹を横目で見る。晴天と、その先で轟く雷鳴。その距離はあまりにも遠く、雷鳴はスタジアムには届かない。だがその禍々しい曇天は少しずつ、影響を与えていった──
一方で電樹の予想は的中しており──
──別館、大図書館
三人は億を軽く凌駕する量の書籍を揃えた大図書館で熱戦を繰り広げていた。古典から現代文学、ライトノベルにコミックまでを余すことなく取り揃え、図書常任委員はおろか、生徒会、さらには理事長までもがその数をまともに数えたことがない数に至っちゃ謎多き部屋だ。隠し扉があって政府しか知らない部屋に繋がってるんじゃないかと、都市伝説めいた噂までも飛び交った時期あった。そんな神聖なる書庫を荒らしに荒らして3人は飛んだり跳ねたりする。
「その足りない脳味噌ッ、図鑑でも読んで補ったらどうだい?」
祐希は図鑑が並ぶ本棚から2冊極太の物を取り出し、快の脳天めがけて投げつける。快はそれを炎で受け止め、図鑑は黒焦げになり地に堕ちる。
「お前こそ人様に対する態度がなってねえよな?心理学の本でも読んで気ィ使えるようになれよ!」
お返しと言わんばかりに快も心理学の本を投げ返す。祐希はひらりとかわし、本棚に全体重をかけ、おもっくそ押し倒す。
「余計なお世話なんっだよ!!」
「ギッ」
本棚と大量の本の雪崩に押し潰されそうになり、快は反射的に手を伸ばす。
「……もう、2人してこんな子供みたいな喧嘩して、ボールってこれだよね?じゃ、私は一足お先に…」
漁夫の利、という言葉がある。二者が奪いあっているものを第三者が奪い取るなどと、争いを有効活用する諺だ。ボールを巡り、快と祐希を踏み台にし、怜奈はボールを掠めとる。だが、2人もこれで黙っているわけではない。
「おいっ!待て!」
木製の本棚を燃やし尽くした快は灰塵となった本棚を軽々持ち上げ怜奈に炎を放つ。
「おしっ!……って、ん?」
猛々しくうねりながら燃え盛る炎は思ってた以上に早々に消失した。
「そんな簡単に渡さないのは私だって同じなんだから!」
冬真の氷結だ。灼熱の炎が一転、周囲は冷気に包まれる。氷でドアを固めて怜奈は逃げるようにその場を去る。
「ふぅ…これで私の出場は安全圏内…」
勝利を確信したところでふと、立ち止まる。焦げ臭い。まさかと思い怜奈は図書館のドアを振り返る。僅かだが水が流れている。やがてドアを埋め尽くす白銀の氷はゆっくりとその形を失っていく。
「冬真ほど冷たくねえぞ!」
「それと、壁も凍らせなかったのは失態だったね」
ドアの右側にある壁が、溶かされたのとほぼ同時に音を立てて崩れた。
「うっそでしょ?どうやって……そっか光速!」
快が氷を溶かせたのは説明がつくが祐希が壁を破壊できる理由を一瞬、怜奈は見失ったがすぐに考えをまとめる。祐希の異能力は敵に快楽を与えながら意識を沈ませる、だがそれ以前に《閃光》だ。それ以上のことができるのは必然的である。だがあまりにもい普段使用しない技の為、怜奈の頭からはすっかり抜けていた。
「大正解」
電樹と同じ原理で超高速の蹴りはその速さが力に直結する。それ故に学校の壁くらい一撃で破れる。
「素直に渡せ!怜奈!」
快は全身から炎を噴出し、怜奈に接近する。
(──近づけない!)
快はそのまま空中で一回身を翻し、炎の鎧を纏ったまま怜奈に突進する。怜奈は自ら快と自分を結ぶ一直線上に入り、界都の結界を張る。
「脆い!」
快は結界を炎を纏った拳で破壊し、身体を焦がしたまま怜奈にタックルを食らわせる。
「あっっつ!!」
「うおおおぉぉぉ!」
怜奈は超越を使って脚力を上昇させ踏みとどまるが、快の勢いは殺せていない。ずるずると、足が後方へ下がっていく。怜奈が強硬手段を覚悟した時、
「とりあえずボールは頂いて、2人は仲良く食堂へゴー!」
祐希が快の臀部を蹴り飛ばす。光速の蹴撃を受けた快と怜奈は一塊になったまま、弾丸の様に食堂へ吹き飛んでいく。
「ぐぁっ…」
「いっ!」
壁に衝突し、2人に瓦礫が降り注ぐ。快は一旦状況と体制を整える為に灯していた炎を消す。消したところで右手に触れる柔らかな感触に違和感を覚える。あまりに人生で触れられるのは数少ない、そんな感じの感触だ。熱で頭がボーッとしていた為、その感触の正体には瞬時に辿り着けず、確かめる様にもう一揉み。
「あ、あのさぁ…俺ひょっとして今…」
ようやくその柔らかなものの正体を察して快は恐る恐る怜奈に尋ねる。
「ちょっと!なにしてんのよ!快のバカ!エッチ!」
反応も出来ないまま怜奈の平手打ちが頬に飛んでくる。その尋常ならざる異能力者のビンタの痛みに耐えながら快はふらふらと立ち上がる。
「と、とりあえずボールを探さなきゃな」
「もうないんじゃない?」
半分諦め腰の2人に吉報でも入るかのように食堂の奥で濃厚なキスをしているカップルが目に入る。
「んだよあいつら。こんなときに」
こちらに気づかないほどそっちの世界に入り込んでるようだ。だが、2人のポケットが妙に膨らんでいることに快は目を付けた。
「怜奈、超越」
「え?あ、うん。えーと一個づつ持ってるねボール。どうするの?」
高めた視力でジャージの繊維の隙間からポケットの中身を見抜いた怜奈は快の耳元で囁く。
「あいつらがスタジアムに戻ったタイミングで奪う。バレねえようにつけるぞ」
正面奪取を望まずに、わざわざ挫折を相手に与えるようなやり方に怜奈は呆れ顔をして快の背を追った。
時は少し遡り──
『そしてたった今!光谷祐希がスタジアムに回帰してきました。残されたボールの数は2個!さぁ誰が来るのか!その時を待ちましょう!』
スタジアムに祐希が戻ってくる。その時既に残ったボールの数は2個で、勝者の大半が決戦の時をまだかまだかと待っていた。
「あと2個か…となると快と怜奈だな。あいつらがぬかるとも思えないし」
電樹は聳え立つ本校舍を眺め言った。その言葉には一切の疑念なく2人を信用してるが故の台詞だ。ゲートに2人の人影が見えたのはそのすぐ後だった。
『あーーっと?今残り2つのボールを持って決戦へ足を進めんとやってきた戦士が2人!』
実里の解説を耳にし、会場中の観客及び生徒の視線がゲートへ集まる。
『3年A組!桧山快!甘海怜奈!』
歓声が巻き起こる。悔し涙を浮かべる者や、快達の出場に不満を溢す者も。彼らを背負う戦士が今ここに集結した。快と怜奈はガラスで構成されたボールの設置場所に手に持つそれを嵌め込む。
『それでは改めて!決勝トーナメントへ進出する選手を発表します!』
暗殺者・灰崎黒志
妖怪・墓場霊太
悪鬼・伸代柔也
魔術師・結城界都
賢者・永野望美
奇跡人・幸城運聖
踊り子・花形桜
雷獣・宮川電樹
氷結機械・雪原冬真
黒薔薇・薔薇解華
宝玉殿・小塚大也
歌姫・有都色音
神童・甘海怜奈
堕天使・光谷祐希
火の鳥・桧山快
演武魔・笹草菜々
マスター・遊佐梳賦斗
生徒会長・浅川政太郎
副会長・福光副子
書記・神沼真樹
以上20名
「生徒会…!そりゃ出るよな」
電樹はニヤニヤ笑いながら言う。最後の3人は電光掲示板に綴られた通りに生徒会だ。決して異能力者であったりするわけではないが、生徒達からの人望は厚い。選挙制ではなく生徒会は理事長が選考したため、黒い噂は絶えないが何を仕掛けてくるかわからない組織だ。
『では30分ほど休憩を挟み決勝トーナメントを開始致します!選手は準備をしていてくださーい』
まだ、知らない。悪の胎動を。ただ2人を除いて。遥かの天空に轟く雷鳴は、依然として唸り続けていた。
休憩中、別館にて先取は鳥束と対峙していた。来る未来を予測し、今がその結果だ。
「僕の見た未来は変えられない。つまり確定事項なんです。先生には言っておくべきだと判断したので」
「間違いないのかい?いや、聞く必要もないか」
確定した未来を秒、分、時間の単位ごとに見ることができる。未来は変えられず、死が待つのならば受け入れるしかない。それが先取の異能力、”予知”だ。
「ただ不確定要素もあります。原理は分かりませんが見れないんです。その先を」
この未来を見た際に、感じた違和感と異能の不調。鳥束には思い当たる節があった。
「異能力の干渉…いや、異能残留か?何者かが君の異能力を操作している、そう捉えていいかもしれない。その作用で君の予知にモヤがかかっていると、僕は思うよ」
異能残留、という言葉に馴染みがなかったが先取はそれを敢えてスルーし、窓の外に広がる晴天を睨む。
「とにかく奴らは確実に現れます。その先が見えない以上、抗うしかない。未来で聞いた奴らの総称…」
「起源種…」
先取の言葉に続いて鳥束はその名を小さく呟いた。どこか狂気も感じる空を睨み、未来を案じる。この体育大会で全ての悪が、動き出す。
──体育大会編、本格スタート──
散り散りになった16個のボールの内13個は既にスタジアムの大会本部に集束していた。残り数が表示されている液晶見ながら電樹が言った。
「快と祐希、それと怜奈がまだ来てませんね。彼らに限ってしくじるとは思いませんが…」
「ま、あいつらのことだ。どっかでぶつかって…小競り合ってるんじゃねえの?」
冬真が電樹を横目で見る。晴天と、その先で轟く雷鳴。その距離はあまりにも遠く、雷鳴はスタジアムには届かない。だがその禍々しい曇天は少しずつ、影響を与えていった──
一方で電樹の予想は的中しており──
──別館、大図書館
三人は億を軽く凌駕する量の書籍を揃えた大図書館で熱戦を繰り広げていた。古典から現代文学、ライトノベルにコミックまでを余すことなく取り揃え、図書常任委員はおろか、生徒会、さらには理事長までもがその数をまともに数えたことがない数に至っちゃ謎多き部屋だ。隠し扉があって政府しか知らない部屋に繋がってるんじゃないかと、都市伝説めいた噂までも飛び交った時期あった。そんな神聖なる書庫を荒らしに荒らして3人は飛んだり跳ねたりする。
「その足りない脳味噌ッ、図鑑でも読んで補ったらどうだい?」
祐希は図鑑が並ぶ本棚から2冊極太の物を取り出し、快の脳天めがけて投げつける。快はそれを炎で受け止め、図鑑は黒焦げになり地に堕ちる。
「お前こそ人様に対する態度がなってねえよな?心理学の本でも読んで気ィ使えるようになれよ!」
お返しと言わんばかりに快も心理学の本を投げ返す。祐希はひらりとかわし、本棚に全体重をかけ、おもっくそ押し倒す。
「余計なお世話なんっだよ!!」
「ギッ」
本棚と大量の本の雪崩に押し潰されそうになり、快は反射的に手を伸ばす。
「……もう、2人してこんな子供みたいな喧嘩して、ボールってこれだよね?じゃ、私は一足お先に…」
漁夫の利、という言葉がある。二者が奪いあっているものを第三者が奪い取るなどと、争いを有効活用する諺だ。ボールを巡り、快と祐希を踏み台にし、怜奈はボールを掠めとる。だが、2人もこれで黙っているわけではない。
「おいっ!待て!」
木製の本棚を燃やし尽くした快は灰塵となった本棚を軽々持ち上げ怜奈に炎を放つ。
「おしっ!……って、ん?」
猛々しくうねりながら燃え盛る炎は思ってた以上に早々に消失した。
「そんな簡単に渡さないのは私だって同じなんだから!」
冬真の氷結だ。灼熱の炎が一転、周囲は冷気に包まれる。氷でドアを固めて怜奈は逃げるようにその場を去る。
「ふぅ…これで私の出場は安全圏内…」
勝利を確信したところでふと、立ち止まる。焦げ臭い。まさかと思い怜奈は図書館のドアを振り返る。僅かだが水が流れている。やがてドアを埋め尽くす白銀の氷はゆっくりとその形を失っていく。
「冬真ほど冷たくねえぞ!」
「それと、壁も凍らせなかったのは失態だったね」
ドアの右側にある壁が、溶かされたのとほぼ同時に音を立てて崩れた。
「うっそでしょ?どうやって……そっか光速!」
快が氷を溶かせたのは説明がつくが祐希が壁を破壊できる理由を一瞬、怜奈は見失ったがすぐに考えをまとめる。祐希の異能力は敵に快楽を与えながら意識を沈ませる、だがそれ以前に《閃光》だ。それ以上のことができるのは必然的である。だがあまりにもい普段使用しない技の為、怜奈の頭からはすっかり抜けていた。
「大正解」
電樹と同じ原理で超高速の蹴りはその速さが力に直結する。それ故に学校の壁くらい一撃で破れる。
「素直に渡せ!怜奈!」
快は全身から炎を噴出し、怜奈に接近する。
(──近づけない!)
快はそのまま空中で一回身を翻し、炎の鎧を纏ったまま怜奈に突進する。怜奈は自ら快と自分を結ぶ一直線上に入り、界都の結界を張る。
「脆い!」
快は結界を炎を纏った拳で破壊し、身体を焦がしたまま怜奈にタックルを食らわせる。
「あっっつ!!」
「うおおおぉぉぉ!」
怜奈は超越を使って脚力を上昇させ踏みとどまるが、快の勢いは殺せていない。ずるずると、足が後方へ下がっていく。怜奈が強硬手段を覚悟した時、
「とりあえずボールは頂いて、2人は仲良く食堂へゴー!」
祐希が快の臀部を蹴り飛ばす。光速の蹴撃を受けた快と怜奈は一塊になったまま、弾丸の様に食堂へ吹き飛んでいく。
「ぐぁっ…」
「いっ!」
壁に衝突し、2人に瓦礫が降り注ぐ。快は一旦状況と体制を整える為に灯していた炎を消す。消したところで右手に触れる柔らかな感触に違和感を覚える。あまりに人生で触れられるのは数少ない、そんな感じの感触だ。熱で頭がボーッとしていた為、その感触の正体には瞬時に辿り着けず、確かめる様にもう一揉み。
「あ、あのさぁ…俺ひょっとして今…」
ようやくその柔らかなものの正体を察して快は恐る恐る怜奈に尋ねる。
「ちょっと!なにしてんのよ!快のバカ!エッチ!」
反応も出来ないまま怜奈の平手打ちが頬に飛んでくる。その尋常ならざる異能力者のビンタの痛みに耐えながら快はふらふらと立ち上がる。
「と、とりあえずボールを探さなきゃな」
「もうないんじゃない?」
半分諦め腰の2人に吉報でも入るかのように食堂の奥で濃厚なキスをしているカップルが目に入る。
「んだよあいつら。こんなときに」
こちらに気づかないほどそっちの世界に入り込んでるようだ。だが、2人のポケットが妙に膨らんでいることに快は目を付けた。
「怜奈、超越」
「え?あ、うん。えーと一個づつ持ってるねボール。どうするの?」
高めた視力でジャージの繊維の隙間からポケットの中身を見抜いた怜奈は快の耳元で囁く。
「あいつらがスタジアムに戻ったタイミングで奪う。バレねえようにつけるぞ」
正面奪取を望まずに、わざわざ挫折を相手に与えるようなやり方に怜奈は呆れ顔をして快の背を追った。
時は少し遡り──
『そしてたった今!光谷祐希がスタジアムに回帰してきました。残されたボールの数は2個!さぁ誰が来るのか!その時を待ちましょう!』
スタジアムに祐希が戻ってくる。その時既に残ったボールの数は2個で、勝者の大半が決戦の時をまだかまだかと待っていた。
「あと2個か…となると快と怜奈だな。あいつらがぬかるとも思えないし」
電樹は聳え立つ本校舍を眺め言った。その言葉には一切の疑念なく2人を信用してるが故の台詞だ。ゲートに2人の人影が見えたのはそのすぐ後だった。
『あーーっと?今残り2つのボールを持って決戦へ足を進めんとやってきた戦士が2人!』
実里の解説を耳にし、会場中の観客及び生徒の視線がゲートへ集まる。
『3年A組!桧山快!甘海怜奈!』
歓声が巻き起こる。悔し涙を浮かべる者や、快達の出場に不満を溢す者も。彼らを背負う戦士が今ここに集結した。快と怜奈はガラスで構成されたボールの設置場所に手に持つそれを嵌め込む。
『それでは改めて!決勝トーナメントへ進出する選手を発表します!』
暗殺者・灰崎黒志
妖怪・墓場霊太
悪鬼・伸代柔也
魔術師・結城界都
賢者・永野望美
奇跡人・幸城運聖
踊り子・花形桜
雷獣・宮川電樹
氷結機械・雪原冬真
黒薔薇・薔薇解華
宝玉殿・小塚大也
歌姫・有都色音
神童・甘海怜奈
堕天使・光谷祐希
火の鳥・桧山快
演武魔・笹草菜々
マスター・遊佐梳賦斗
生徒会長・浅川政太郎
副会長・福光副子
書記・神沼真樹
以上20名
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電樹はニヤニヤ笑いながら言う。最後の3人は電光掲示板に綴られた通りに生徒会だ。決して異能力者であったりするわけではないが、生徒達からの人望は厚い。選挙制ではなく生徒会は理事長が選考したため、黒い噂は絶えないが何を仕掛けてくるかわからない組織だ。
『では30分ほど休憩を挟み決勝トーナメントを開始致します!選手は準備をしていてくださーい』
まだ、知らない。悪の胎動を。ただ2人を除いて。遥かの天空に轟く雷鳴は、依然として唸り続けていた。
休憩中、別館にて先取は鳥束と対峙していた。来る未来を予測し、今がその結果だ。
「僕の見た未来は変えられない。つまり確定事項なんです。先生には言っておくべきだと判断したので」
「間違いないのかい?いや、聞く必要もないか」
確定した未来を秒、分、時間の単位ごとに見ることができる。未来は変えられず、死が待つのならば受け入れるしかない。それが先取の異能力、”予知”だ。
「ただ不確定要素もあります。原理は分かりませんが見れないんです。その先を」
この未来を見た際に、感じた違和感と異能の不調。鳥束には思い当たる節があった。
「異能力の干渉…いや、異能残留か?何者かが君の異能力を操作している、そう捉えていいかもしれない。その作用で君の予知にモヤがかかっていると、僕は思うよ」
異能残留、という言葉に馴染みがなかったが先取はそれを敢えてスルーし、窓の外に広がる晴天を睨む。
「とにかく奴らは確実に現れます。その先が見えない以上、抗うしかない。未来で聞いた奴らの総称…」
「起源種…」
先取の言葉に続いて鳥束はその名を小さく呟いた。どこか狂気も感じる空を睨み、未来を案じる。この体育大会で全ての悪が、動き出す。
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