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40.悪役令嬢っぽい、悪役令嬢っぽいわ。
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まだ、少し幼さが残っているが美形は得だと思う。
全体に顔立ちが整い、鼻筋が美しく、小顔で引き締まっており、まつ毛も長く、ブラウンの目に鮮やかな金髪を持つのが第一王子オリバーだ。
あの日、我儘に育てられた王子は7歳で婚約者候補を選ぶ会場を逃げ出した。
どうして逃げ出したのかは知らないが、そこで私にぶつかって額に5針も縫う怪我を負った。
もう5年半も前のことだ。
婚約者に指名されても、謝罪どころか、一度も会いにくることすらなかった。
普通は来るよね!
私は毎年5月と10月にオリバー王子にお会いしたいという手紙を書き続けている。
けど、手紙すら返ってきたことがない。
そんな奴だから、会いたいなんて思っていないけどね!
私を見る目はやはり冷たい。
急いで会う必要もないけど、ここに呼ばれた以上は、あいさつもせずに帰るなどできるハズもない。
王子に自制心を求めたいところだが無理だろう。
私が婚約者である為に王になれないと噂され、『駄目王子様』と呼ばれては酷く拗ねている。
去年、王子は10歳になった舞踏会デビューを果たした時もダンスパートナーがすべて弟のお下がりに怒ったらしい。
「何故、俺が弟のお下がりの女性しか踊れぬのだ」
「王子、どうかご勘気をお鎮め下さい」
「俺は笑い者にされたのだぞ」
「すべては国王の意志であります」
「俺は弟より優れている。すべてに勝っている。そうなるべく努力してきた。何故だ!」
「国王の御心は到底はかりしれません。しかし、婚約者と噂されるエリザベート殿はやって来られませんでした。偽装婚約であったという噂は明らかでございます。今、しばらくご辛抱下さい」
「そうか、そうだな!」
それでも私、エリザベートが晩餐会、舞踏会、お茶会に呼ばれなかったことを喜んでいたと報告書には書かれていた。
従者と侍女は王子への不満を食堂で愚痴っている。
愚痴を聞いてくれる料理人が情報源らしく、こづかい稼ぎで噂を流している。
こちらと同じことを考える誰かがいるのだろう。
もちろん、我が家の料理には秘伝が多く、そんな料理人を飼っておけない。
我が家のスパイは馬の世話をする馬飼頭とその下人だ。
従者や侍女の愚痴をせっせと情報屋に売っている。
向こうの誰かも、私が王宮の情報を買っているのを知っている。
王子を怒らせて何をさせたい。
その王子は私をどう迎えてくれるのかしら?
「姉様、楽しむのはよろしいですが悪い顔になっていますよ」
「あらぁ、いけない」
「アンドラはどう思う? 王子は馬鹿なのか、馬鹿なふりをしているのか?」
「さぁ、判りません」
◇◇◇
王子の前に小さな女の子が仁王立ちしている。
7歳の子は幼女と表現できる可愛らしさが残っており、ドレスを着ると背伸びをしたような違和感がぬぐえないが、それはそれで可愛いと思う。
10歳くらいになると物の分別ができるようになるのか、身なり仕草が様になってくる。
その彼女らは王子の背中に隠れている。
幼女に囲まれているオリバー王子は、聖母マリア様のように慈悲と慈愛に満ちた笑みで愛と幸せを幼女達に運んでいるように見えるかも?
でも、ぶっちゃけ保育園の養父さんのようだ。
私は幼い少女達に囲まれたオリバー王子と対面する。
「王子、赤い髪で赤いドレスの方をご存知ですか?」
聞こえるように聞くなど意地が悪い。
ツインテールが似合う幼い子だけど、しっかり女の子しているらしい。
少しキツメの眼つきが私と似ていて、強気な所もそっくりだ。
そういう子は嫌いじゃない。
裏でこそこそと隠れている子の方が嫌いだ。
影口に花を咲かせ、様々な嫌がらせを影で仕掛ける。
在らぬ噂を立てて偽サイトに写真を載せた子もいたな!
そして、人が困っているのを見てくすくすと笑っている。
王子の背中に隠れている子はそちら側の子供達だろう。
そんな少女達を無視してあいさつをした。
「お久しぶりです。オリバー王子様、エリザベートでございます。この5年半、王子のことは一日千秋の思いで待ち焦がれて、忘れた日は一日とてございません」
「知らんな! そのような名前など聞いたこともない」
「そうでございますか、それは残念でございます。では、改めてごあいさつさせて頂きます。ジョルト・ファン・ヴォワザン伯爵の娘、オリバー王子の婚約者であるエリザベートでございます」
「俺の許可なく、婚約者など語るな!」
「承知いたしました」
「その額の傷は嫌味のつもりか? すぐに消せ!」
「申し訳ございません。これは王子より頂いた大切なものでございます」
「知らん。消せと言っておる」
「王宮で受けた傷は軽々しく消すことはできません。どうか国王よりご許可を頂いて下さい。それは王子の方がよくお知りのハズです」
ちぃ、王子が拗ねたように顔を逸らした。
おそらく、すでに頼んだ後なのだろう。
裏表のないのは悪いことではないが、それで王が務まるのだろうか?
海千山千の貴族達と対峙できるとは思えない。
ワザと自分が馬鹿と触れ回りたいのでないなら別の話だけど違うよね。
これは王子への罰なのだから軽々しく解除できないことを皆も知っている。
もう少し考えて言葉を選べよ。
嘘でもここは好意的に接して、私の美しい顔に傷があるのは痛々しいと言えば、王に傷を消すように頼む口実にもできる。
でも、直接的に『傷を消せ!(婚約を解消しろ!)』と言われて、「はい、判りました」と答えられる訳がない。
でも、こういう奴だった。
自分の考えていることが常に正義と思っており、古い伝統とか、慣例を嫌う。
慣例に従えば、私と婚約している限り、オリバー王子は王位に付けない。
そんな辺りが原因なのだろうか?
古い伝統とか、慣例を嫌う割に、王子としての権威を振り回すのが矛盾しているのだけれど、それに気がつかないのが愚かだ。
「貴方、王子の命令が聞けないというの!」
「失礼ですが、どちらのご令嬢ですか?」
「聞いて驚きなさい。我が父はオードリー侯爵よ。判ったならば、下賤の者は従えばいいのよ」
おぉ、初代王の妹の家系か!
さぞぉ、高貴な姫だったのだろう。
王国宰相のアポニー家と同格の家柄だ。
但し、その後継ぎ達に優秀な者が少なかったのか、アポニー家ほど権威を残していない。
家柄だけが突出している。
「お初にお目に掛かります。エラ嬢」
「あら、名乗ってもいないのに私のことを知っているのね!」
「当然でございます」
「判っているじゃない。なら、王子の言ったことを実行しなさい」
「それはできません」
「私の命令が聞けないのぉ?」
「申し訳ございません」
「田舎貴族はなってないわね」
「はい、我が家は田舎者です。その田舎貴族を正室に向え、オードリー侯爵家のご令嬢が側室候補でよろしいのでしょうか?」
「そんな訳ないでしょう。オリバー王子の正室は私に決まっております」
「王命でございます」
「そんなの、覆してみせるわ」
「それはヴォワザン家を敵に回すということになりますよ」
「当然よ。一介の貴族に遜る訳がないでしょう。私に正室の座を譲りなさい」
「できません」
「後悔するわよ!」
「どうか御父上様にエリザベートがよろしくとお伝え下さい」
「当然伝えるわ。覚悟していなさい」
3日後にオードリー侯爵家から詫び状が送られてきた。
オードリー侯爵家の者は役職らしい役職についている者は少ない。
しかも国王と仲も悪い。
王族を罰するなど体裁の悪いことはしないが、国王と疎遠だった。
そう言った意味でオードリー侯爵家は怖くない。
その日に内に商人を使って借財の回収に向わせ、オードリー侯爵家と関わり合いがある商人に香辛料を売らないように通達を送った。
すると、まるで飛び立つのを待っていた大鳥の群れが一斉に飛び立っていったのである。
びっくりしたのはオードリー侯爵であった。
皆、オードリー侯爵家と手を切れる機会を待っていたようだ。
今回、我が家が後ろ盾になると名乗ったので渡りに舟だった。
借財で首が回らなくなった。
その借財は踏み倒せるが、明日からの金がない。
予定していた舞踏会を開くことができなくなる。
しかし、どの商人もオードリー侯爵の金の無心に応じないのだ。
オードリー侯爵は慌てて詫び状を送ってきたのだ。
使者は指定した通りにエラ嬢がやってきた。
「エリザベート、父上からの手紙を持ってきたわ」
「…………」
「受け取りなさい」
「気安く、エリザベートなどと呼ばないで。それが嫌なら帰ってくれて結構よ」
「エリザベート…………様。この手紙を受け取って下さい」
「いいでしょう。では、王子の側室でよろしいのね」
「いいえ、側室なんて嫌です。ですから、王子は諦めます」
「そう、他の子はどうするのかしら?」
「知りません」
「じゃあ、お願いするわ。他の子にも伝えておいてくれる?」
「どうして私が!」
「嫌なの?」
「いいえ、やります」
「では、最後に手紙の最後の一文を貴方の口から聞きたいわ」
手紙を返してエラ嬢に見せる。
しばらく黙ったままで固まっていた。
侯爵家のプライドが崩れてゆく。
「嫌ならお帰り下さい」
「いいえ、言います。どうかオードリー侯爵家…………オードリー侯爵家に援助をお願いします」
「ええ、もちろんよ。エラちゃんとわたくしはお友達じゃない」
「あ…………りがとうございます」
顔を歪めて、我慢しながら感謝するエラちゃんがかわいかった。
私、悪役令嬢っぽい、悪役令嬢っぽいよね!
全体に顔立ちが整い、鼻筋が美しく、小顔で引き締まっており、まつ毛も長く、ブラウンの目に鮮やかな金髪を持つのが第一王子オリバーだ。
あの日、我儘に育てられた王子は7歳で婚約者候補を選ぶ会場を逃げ出した。
どうして逃げ出したのかは知らないが、そこで私にぶつかって額に5針も縫う怪我を負った。
もう5年半も前のことだ。
婚約者に指名されても、謝罪どころか、一度も会いにくることすらなかった。
普通は来るよね!
私は毎年5月と10月にオリバー王子にお会いしたいという手紙を書き続けている。
けど、手紙すら返ってきたことがない。
そんな奴だから、会いたいなんて思っていないけどね!
私を見る目はやはり冷たい。
急いで会う必要もないけど、ここに呼ばれた以上は、あいさつもせずに帰るなどできるハズもない。
王子に自制心を求めたいところだが無理だろう。
私が婚約者である為に王になれないと噂され、『駄目王子様』と呼ばれては酷く拗ねている。
去年、王子は10歳になった舞踏会デビューを果たした時もダンスパートナーがすべて弟のお下がりに怒ったらしい。
「何故、俺が弟のお下がりの女性しか踊れぬのだ」
「王子、どうかご勘気をお鎮め下さい」
「俺は笑い者にされたのだぞ」
「すべては国王の意志であります」
「俺は弟より優れている。すべてに勝っている。そうなるべく努力してきた。何故だ!」
「国王の御心は到底はかりしれません。しかし、婚約者と噂されるエリザベート殿はやって来られませんでした。偽装婚約であったという噂は明らかでございます。今、しばらくご辛抱下さい」
「そうか、そうだな!」
それでも私、エリザベートが晩餐会、舞踏会、お茶会に呼ばれなかったことを喜んでいたと報告書には書かれていた。
従者と侍女は王子への不満を食堂で愚痴っている。
愚痴を聞いてくれる料理人が情報源らしく、こづかい稼ぎで噂を流している。
こちらと同じことを考える誰かがいるのだろう。
もちろん、我が家の料理には秘伝が多く、そんな料理人を飼っておけない。
我が家のスパイは馬の世話をする馬飼頭とその下人だ。
従者や侍女の愚痴をせっせと情報屋に売っている。
向こうの誰かも、私が王宮の情報を買っているのを知っている。
王子を怒らせて何をさせたい。
その王子は私をどう迎えてくれるのかしら?
「姉様、楽しむのはよろしいですが悪い顔になっていますよ」
「あらぁ、いけない」
「アンドラはどう思う? 王子は馬鹿なのか、馬鹿なふりをしているのか?」
「さぁ、判りません」
◇◇◇
王子の前に小さな女の子が仁王立ちしている。
7歳の子は幼女と表現できる可愛らしさが残っており、ドレスを着ると背伸びをしたような違和感がぬぐえないが、それはそれで可愛いと思う。
10歳くらいになると物の分別ができるようになるのか、身なり仕草が様になってくる。
その彼女らは王子の背中に隠れている。
幼女に囲まれているオリバー王子は、聖母マリア様のように慈悲と慈愛に満ちた笑みで愛と幸せを幼女達に運んでいるように見えるかも?
でも、ぶっちゃけ保育園の養父さんのようだ。
私は幼い少女達に囲まれたオリバー王子と対面する。
「王子、赤い髪で赤いドレスの方をご存知ですか?」
聞こえるように聞くなど意地が悪い。
ツインテールが似合う幼い子だけど、しっかり女の子しているらしい。
少しキツメの眼つきが私と似ていて、強気な所もそっくりだ。
そういう子は嫌いじゃない。
裏でこそこそと隠れている子の方が嫌いだ。
影口に花を咲かせ、様々な嫌がらせを影で仕掛ける。
在らぬ噂を立てて偽サイトに写真を載せた子もいたな!
そして、人が困っているのを見てくすくすと笑っている。
王子の背中に隠れている子はそちら側の子供達だろう。
そんな少女達を無視してあいさつをした。
「お久しぶりです。オリバー王子様、エリザベートでございます。この5年半、王子のことは一日千秋の思いで待ち焦がれて、忘れた日は一日とてございません」
「知らんな! そのような名前など聞いたこともない」
「そうでございますか、それは残念でございます。では、改めてごあいさつさせて頂きます。ジョルト・ファン・ヴォワザン伯爵の娘、オリバー王子の婚約者であるエリザベートでございます」
「俺の許可なく、婚約者など語るな!」
「承知いたしました」
「その額の傷は嫌味のつもりか? すぐに消せ!」
「申し訳ございません。これは王子より頂いた大切なものでございます」
「知らん。消せと言っておる」
「王宮で受けた傷は軽々しく消すことはできません。どうか国王よりご許可を頂いて下さい。それは王子の方がよくお知りのハズです」
ちぃ、王子が拗ねたように顔を逸らした。
おそらく、すでに頼んだ後なのだろう。
裏表のないのは悪いことではないが、それで王が務まるのだろうか?
海千山千の貴族達と対峙できるとは思えない。
ワザと自分が馬鹿と触れ回りたいのでないなら別の話だけど違うよね。
これは王子への罰なのだから軽々しく解除できないことを皆も知っている。
もう少し考えて言葉を選べよ。
嘘でもここは好意的に接して、私の美しい顔に傷があるのは痛々しいと言えば、王に傷を消すように頼む口実にもできる。
でも、直接的に『傷を消せ!(婚約を解消しろ!)』と言われて、「はい、判りました」と答えられる訳がない。
でも、こういう奴だった。
自分の考えていることが常に正義と思っており、古い伝統とか、慣例を嫌う。
慣例に従えば、私と婚約している限り、オリバー王子は王位に付けない。
そんな辺りが原因なのだろうか?
古い伝統とか、慣例を嫌う割に、王子としての権威を振り回すのが矛盾しているのだけれど、それに気がつかないのが愚かだ。
「貴方、王子の命令が聞けないというの!」
「失礼ですが、どちらのご令嬢ですか?」
「聞いて驚きなさい。我が父はオードリー侯爵よ。判ったならば、下賤の者は従えばいいのよ」
おぉ、初代王の妹の家系か!
さぞぉ、高貴な姫だったのだろう。
王国宰相のアポニー家と同格の家柄だ。
但し、その後継ぎ達に優秀な者が少なかったのか、アポニー家ほど権威を残していない。
家柄だけが突出している。
「お初にお目に掛かります。エラ嬢」
「あら、名乗ってもいないのに私のことを知っているのね!」
「当然でございます」
「判っているじゃない。なら、王子の言ったことを実行しなさい」
「それはできません」
「私の命令が聞けないのぉ?」
「申し訳ございません」
「田舎貴族はなってないわね」
「はい、我が家は田舎者です。その田舎貴族を正室に向え、オードリー侯爵家のご令嬢が側室候補でよろしいのでしょうか?」
「そんな訳ないでしょう。オリバー王子の正室は私に決まっております」
「王命でございます」
「そんなの、覆してみせるわ」
「それはヴォワザン家を敵に回すということになりますよ」
「当然よ。一介の貴族に遜る訳がないでしょう。私に正室の座を譲りなさい」
「できません」
「後悔するわよ!」
「どうか御父上様にエリザベートがよろしくとお伝え下さい」
「当然伝えるわ。覚悟していなさい」
3日後にオードリー侯爵家から詫び状が送られてきた。
オードリー侯爵家の者は役職らしい役職についている者は少ない。
しかも国王と仲も悪い。
王族を罰するなど体裁の悪いことはしないが、国王と疎遠だった。
そう言った意味でオードリー侯爵家は怖くない。
その日に内に商人を使って借財の回収に向わせ、オードリー侯爵家と関わり合いがある商人に香辛料を売らないように通達を送った。
すると、まるで飛び立つのを待っていた大鳥の群れが一斉に飛び立っていったのである。
びっくりしたのはオードリー侯爵であった。
皆、オードリー侯爵家と手を切れる機会を待っていたようだ。
今回、我が家が後ろ盾になると名乗ったので渡りに舟だった。
借財で首が回らなくなった。
その借財は踏み倒せるが、明日からの金がない。
予定していた舞踏会を開くことができなくなる。
しかし、どの商人もオードリー侯爵の金の無心に応じないのだ。
オードリー侯爵は慌てて詫び状を送ってきたのだ。
使者は指定した通りにエラ嬢がやってきた。
「エリザベート、父上からの手紙を持ってきたわ」
「…………」
「受け取りなさい」
「気安く、エリザベートなどと呼ばないで。それが嫌なら帰ってくれて結構よ」
「エリザベート…………様。この手紙を受け取って下さい」
「いいでしょう。では、王子の側室でよろしいのね」
「いいえ、側室なんて嫌です。ですから、王子は諦めます」
「そう、他の子はどうするのかしら?」
「知りません」
「じゃあ、お願いするわ。他の子にも伝えておいてくれる?」
「どうして私が!」
「嫌なの?」
「いいえ、やります」
「では、最後に手紙の最後の一文を貴方の口から聞きたいわ」
手紙を返してエラ嬢に見せる。
しばらく黙ったままで固まっていた。
侯爵家のプライドが崩れてゆく。
「嫌ならお帰り下さい」
「いいえ、言います。どうかオードリー侯爵家…………オードリー侯爵家に援助をお願いします」
「ええ、もちろんよ。エラちゃんとわたくしはお友達じゃない」
「あ…………りがとうございます」
顔を歪めて、我慢しながら感謝するエラちゃんがかわいかった。
私、悪役令嬢っぽい、悪役令嬢っぽいよね!
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