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26.いろんな名前で呼ばれています。
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目覚めて5年半が過ぎた。
優雅な令嬢生活はどこに消えたのかと首を捻る?
1年の半分は野営ですよ。
全然、お嬢様じゃない。
そのまた半分がビジネス!
残りがお嬢様の舞踏会とお茶会です。
しくしく、ブラック企業より厳しい。
その合間に書類整理をしている。
「姉様、優雅な生活とはどんなものですか?」
「好きなだけお茶を飲み、本を読み、好きなだけおしゃべりをする生活かしら」
「母上様のような生活ですね」
「言われてみればそうね。でも、楽しそうに見えないのはどうしてかしら?」
「それは姉様に原因があると思います」
母上の話はここまでにしましょう。
決して、色々な愚痴を思い出したくない訳じゃないのよ。
嫌なことより楽しいことを話す方が健康的と思わない。
話を変えましょう。
「それはともかくとして、父上はレベルいくつなのかしら?」
「それは僕も気になっていました」
「見た感じ、わたくしらより低い気がするのよ」
「そんなことはないでしょう」
「ヴァルテル。父上も僕と同じように育てられたのよね?」
「先代のヴァルテル様より、そう聞き及んでおります」
ヴァルテルの名は代々引き継がれてゆくらしい。
私とアンドラの従者が次のヴァルテル候補らしい。
私らの特訓はレベル上げより、ステータス上げを優先しているので、まだレベル25に留まっている。
従者や侍女は私らの側を外れ、森の奥で猛特訓を受けており、不幸にも一人が大怪我をして脱落した。
残った者で次世代のヴァルテル、あるいはヴァルジーを競っている。
「ほっとしました。父上様も同じようにご苦労されたのですね!」
「いいえ、少し異なります。旦那様は10歳からと伺っております。しかし、お嬢様、アンドラ様は時間がございません。訓練の内容も5倍増しにさせて頂いております」
「やっぱりね!」
「お嬢様は『ヴォワザン家が滅ぶ』と神託されました。私にできますことはお嬢様、アンドラ様を鍛えることしかできません。時間の余す限り、鍛えさせて頂きます」
のぉ~~~う!
下手に『ヴォワザン家が滅ぶ』とか言わなきゃよかった。
この先も私達の生活は滅茶苦茶ハードってことだ。
1月、6月は社交シーズン、舞踏会で大忙しだ。
お茶会と舞踏会の数が増えてゆく、誰か母上を止めて!
「エリザベート、アンドラ、今日はマキスネ男爵のお茶会よ」
「母上、わたくしは忙しいのでどうかお一人で」
「何を言っているの? 貴方は連れて来てほしいと言われたのよ。男爵家ですけれど、王族よ。断れる訳がないじゃない。早く準備しなさい」
その合間を縫って、私は王都の商人と取引を進め、アンドラは信徒(貧民)キャンプの整備を進めている。
信徒(貧民)キャンプも立派になった。
もう町だ。
商業地、手工業地、住居地、キャンプ地の4つの区画に分かれている。
商業地では卸売をおこない、安い自作作物、香辛料、安い布の販売をしている。
キャンプ地には農地を作り、麦・芋・野菜・麻・ハーブ・唐辛子など栽培し、地産地消を心掛けて貰っている。
信徒の義務として、奉仕か、生活クエストを受けて貰う
衣食住のすべてタダだが、無償ではない。
無料の炊き出し食堂を行っていると料理人っぽい人が育ってきたので、パン工房を作り、パン菓子に続いて、クッキー工房や砂糖菓子工房を作ってゆく。
自立した人には町で店を持って貰うのもいいだろう。
マリアがパン菓子売りをやっていたから、これもパクリだ。
もちろん、私が作るパン菓子はマリアのような庶民に売る菓子パンではない。
あんまん、クリームパン、ジャムパン、メロンパン、そして、生クリームたっぷりのクレープだ。
輸入も順調に伸び、安い砂糖も入るようになってきた。
でも、まだ高い。
この高い砂糖を使った菓子のターゲットは甘味に飢えた商人らだ。
もちろん、庶民用の安い菓子も作っているよ。
こちらは小麦を加工した水飴を使用している。
上々の売り上げだ。
その店を経営しているのも、信徒(元貧民)だったりする。
農業ができる者は自栽培、手先の器用な者は手工業、料理が得意な者は料理人、数学を覚えた者は店員、商才がある者は融資して店を持たせている。
出店させた店は今のところ服屋とパン菓子屋のみだ。
王都の町も大きくなってきている。
悪臭撲滅!
清掃クエストを3年も進めると町も少し綺麗になってきた。
公共トイレが整備され、清掃クエストに冒険者に並ぶ、5歳以上なら立派な冒険ギルド会員になれるように変更して貰った。
手に職を持てない不器用な信徒(貧民)でも清掃クエストなら受けることができる。
「聖女様、ようこそお越し下さいました」
「聖女じゃありません。伯爵令嬢です」
「今日はどのような御用でしょうか?」
「新しいパンを教えようと思います。巧く作れるようになったらパン菓子店に出すつもりです。そのつもりで覚えて下さい」
「判りました」
そんな忙しい日々を終えると、2~4月、7~9月の訓練期を迎える。
最初の1ヶ月は猛特訓を行い、残りの2ヶ月は自領、南方諸領、南領の魔物駆除に足を運んで兵を鍛える。
その合間に田畑の視察を行う。
肥料作りの公衆トイレが作られて、村の衛生もよくなった。
次は公衆浴場を作って行きたい。
あっ、王都の町とキャンプにも作ったよ。
うん、映画から拝借して無料公衆浴場を『テルマエ』と名付けた。
他の貴族も競って作ってくれないかな?
1つじゃ足りないよ。
南部では、子供も多くなってきた。
教会から出産祝い、幼児手当、修学補助が支給されるようになって、『産めよ、増やせよ』の第一次ベビーブームだ。
親や兄の人質とでも思っておこう。
「姫様来た!」
「しめさまだ」
「伯爵令嬢です」
「はゃくしゃく?」
「こらぁ、お嬢様の衣服に触れてはなりません」
「メルルが怒った」
「鬼のメルルだ」
「私は鬼じゃありません。捕まえてお尻ぺんぺんです」
「逃げろ!」
私が身に纏っているのは、真っ赤に染めた華やかバトルドレスだ。
その華やかさから冒険者らが姫と呼ぶから、子供達まで『姫様』と呼ぶようになってしまった。
そこで討伐隊の先頭に立ち指揮杖を振る。
5月、10月は自領から南方諸領、南領を回って王都に戻る。
交易会、南方教会、南方貴族の調整を行う。
速度重視ならクレタ港からヴォワザン領を通って王都を目指すのが近道になる。
しかし、陸路の上、魔の森を横切る危ないルートだ。
安全に輸送するなら、海岸沿いをクレタ港からコンベ港まで船で輸送する方が安全であった。
その為に海岸部から発展していった。
商人イレーザとの打ち合わせも、この時期にまとめて行うことが多い。
今年は少し早い時期に会っている。
「これはエリザベート様、会うたびにお美しなられて女神のようです!」
「まだ幼少期です。その言葉は早いでしょう」
「初めてお会いした時は天使のよう愛らしく、私は神の使いを見る思いでした。今では女神本人ではないかと思うくらいです」
「ありがとうございます。でも、褒めて頂いても何もでませんわよ」
「いいえ、すでに過分なる祝福を頂いております。新造艦と新兵器、確かに頂きました」
「あれはただのおもちゃです。火杖や雷杖の方が威力もありますよ」
「いいえ、あの飛距離は火杖にはありません。あの大砲は革新的な武器でございます。これで海賊も怖くありません」
「それは貴方が火薬を持って帰って来たからです」
「誰があのような武器になると考えるでしょうか? 何もかも女神の祝福でございます」
イレーザは終始興奮していた。
これまで香辛料の交易は東のオリテラ帝国から西のイースラ諸王国、そこから北のプロイス王国を経由して、北方交易で輸入していた。
ところが、オリテラ帝国から直接購入するようになるとイースラ諸王国の香辛料は売れなくなった。
そこでイースラ諸王国の商人らはイレーザの交易船を襲う海賊行為をするようになってきた。
以前に乗組員の半数を失う事件もあった。
3ヶ月前も横腹にぶつけられて4番艦が中破の損害を受けてドックに入った。
海賊達が憎くて仕方ない。
そこで新造艦を6ヶ月も早く引き渡すことにした。
慣熟航行なしのぶっつけ本番だ。
船乗りらはこれで一泡吹かせると喜んでいる。
私が勝利の女神に見えるらしい。
「女神に乾杯!」
みんな、好き勝手に呼んでいるわ!
優雅な令嬢生活はどこに消えたのかと首を捻る?
1年の半分は野営ですよ。
全然、お嬢様じゃない。
そのまた半分がビジネス!
残りがお嬢様の舞踏会とお茶会です。
しくしく、ブラック企業より厳しい。
その合間に書類整理をしている。
「姉様、優雅な生活とはどんなものですか?」
「好きなだけお茶を飲み、本を読み、好きなだけおしゃべりをする生活かしら」
「母上様のような生活ですね」
「言われてみればそうね。でも、楽しそうに見えないのはどうしてかしら?」
「それは姉様に原因があると思います」
母上の話はここまでにしましょう。
決して、色々な愚痴を思い出したくない訳じゃないのよ。
嫌なことより楽しいことを話す方が健康的と思わない。
話を変えましょう。
「それはともかくとして、父上はレベルいくつなのかしら?」
「それは僕も気になっていました」
「見た感じ、わたくしらより低い気がするのよ」
「そんなことはないでしょう」
「ヴァルテル。父上も僕と同じように育てられたのよね?」
「先代のヴァルテル様より、そう聞き及んでおります」
ヴァルテルの名は代々引き継がれてゆくらしい。
私とアンドラの従者が次のヴァルテル候補らしい。
私らの特訓はレベル上げより、ステータス上げを優先しているので、まだレベル25に留まっている。
従者や侍女は私らの側を外れ、森の奥で猛特訓を受けており、不幸にも一人が大怪我をして脱落した。
残った者で次世代のヴァルテル、あるいはヴァルジーを競っている。
「ほっとしました。父上様も同じようにご苦労されたのですね!」
「いいえ、少し異なります。旦那様は10歳からと伺っております。しかし、お嬢様、アンドラ様は時間がございません。訓練の内容も5倍増しにさせて頂いております」
「やっぱりね!」
「お嬢様は『ヴォワザン家が滅ぶ』と神託されました。私にできますことはお嬢様、アンドラ様を鍛えることしかできません。時間の余す限り、鍛えさせて頂きます」
のぉ~~~う!
下手に『ヴォワザン家が滅ぶ』とか言わなきゃよかった。
この先も私達の生活は滅茶苦茶ハードってことだ。
1月、6月は社交シーズン、舞踏会で大忙しだ。
お茶会と舞踏会の数が増えてゆく、誰か母上を止めて!
「エリザベート、アンドラ、今日はマキスネ男爵のお茶会よ」
「母上、わたくしは忙しいのでどうかお一人で」
「何を言っているの? 貴方は連れて来てほしいと言われたのよ。男爵家ですけれど、王族よ。断れる訳がないじゃない。早く準備しなさい」
その合間を縫って、私は王都の商人と取引を進め、アンドラは信徒(貧民)キャンプの整備を進めている。
信徒(貧民)キャンプも立派になった。
もう町だ。
商業地、手工業地、住居地、キャンプ地の4つの区画に分かれている。
商業地では卸売をおこない、安い自作作物、香辛料、安い布の販売をしている。
キャンプ地には農地を作り、麦・芋・野菜・麻・ハーブ・唐辛子など栽培し、地産地消を心掛けて貰っている。
信徒の義務として、奉仕か、生活クエストを受けて貰う
衣食住のすべてタダだが、無償ではない。
無料の炊き出し食堂を行っていると料理人っぽい人が育ってきたので、パン工房を作り、パン菓子に続いて、クッキー工房や砂糖菓子工房を作ってゆく。
自立した人には町で店を持って貰うのもいいだろう。
マリアがパン菓子売りをやっていたから、これもパクリだ。
もちろん、私が作るパン菓子はマリアのような庶民に売る菓子パンではない。
あんまん、クリームパン、ジャムパン、メロンパン、そして、生クリームたっぷりのクレープだ。
輸入も順調に伸び、安い砂糖も入るようになってきた。
でも、まだ高い。
この高い砂糖を使った菓子のターゲットは甘味に飢えた商人らだ。
もちろん、庶民用の安い菓子も作っているよ。
こちらは小麦を加工した水飴を使用している。
上々の売り上げだ。
その店を経営しているのも、信徒(元貧民)だったりする。
農業ができる者は自栽培、手先の器用な者は手工業、料理が得意な者は料理人、数学を覚えた者は店員、商才がある者は融資して店を持たせている。
出店させた店は今のところ服屋とパン菓子屋のみだ。
王都の町も大きくなってきている。
悪臭撲滅!
清掃クエストを3年も進めると町も少し綺麗になってきた。
公共トイレが整備され、清掃クエストに冒険者に並ぶ、5歳以上なら立派な冒険ギルド会員になれるように変更して貰った。
手に職を持てない不器用な信徒(貧民)でも清掃クエストなら受けることができる。
「聖女様、ようこそお越し下さいました」
「聖女じゃありません。伯爵令嬢です」
「今日はどのような御用でしょうか?」
「新しいパンを教えようと思います。巧く作れるようになったらパン菓子店に出すつもりです。そのつもりで覚えて下さい」
「判りました」
そんな忙しい日々を終えると、2~4月、7~9月の訓練期を迎える。
最初の1ヶ月は猛特訓を行い、残りの2ヶ月は自領、南方諸領、南領の魔物駆除に足を運んで兵を鍛える。
その合間に田畑の視察を行う。
肥料作りの公衆トイレが作られて、村の衛生もよくなった。
次は公衆浴場を作って行きたい。
あっ、王都の町とキャンプにも作ったよ。
うん、映画から拝借して無料公衆浴場を『テルマエ』と名付けた。
他の貴族も競って作ってくれないかな?
1つじゃ足りないよ。
南部では、子供も多くなってきた。
教会から出産祝い、幼児手当、修学補助が支給されるようになって、『産めよ、増やせよ』の第一次ベビーブームだ。
親や兄の人質とでも思っておこう。
「姫様来た!」
「しめさまだ」
「伯爵令嬢です」
「はゃくしゃく?」
「こらぁ、お嬢様の衣服に触れてはなりません」
「メルルが怒った」
「鬼のメルルだ」
「私は鬼じゃありません。捕まえてお尻ぺんぺんです」
「逃げろ!」
私が身に纏っているのは、真っ赤に染めた華やかバトルドレスだ。
その華やかさから冒険者らが姫と呼ぶから、子供達まで『姫様』と呼ぶようになってしまった。
そこで討伐隊の先頭に立ち指揮杖を振る。
5月、10月は自領から南方諸領、南領を回って王都に戻る。
交易会、南方教会、南方貴族の調整を行う。
速度重視ならクレタ港からヴォワザン領を通って王都を目指すのが近道になる。
しかし、陸路の上、魔の森を横切る危ないルートだ。
安全に輸送するなら、海岸沿いをクレタ港からコンベ港まで船で輸送する方が安全であった。
その為に海岸部から発展していった。
商人イレーザとの打ち合わせも、この時期にまとめて行うことが多い。
今年は少し早い時期に会っている。
「これはエリザベート様、会うたびにお美しなられて女神のようです!」
「まだ幼少期です。その言葉は早いでしょう」
「初めてお会いした時は天使のよう愛らしく、私は神の使いを見る思いでした。今では女神本人ではないかと思うくらいです」
「ありがとうございます。でも、褒めて頂いても何もでませんわよ」
「いいえ、すでに過分なる祝福を頂いております。新造艦と新兵器、確かに頂きました」
「あれはただのおもちゃです。火杖や雷杖の方が威力もありますよ」
「いいえ、あの飛距離は火杖にはありません。あの大砲は革新的な武器でございます。これで海賊も怖くありません」
「それは貴方が火薬を持って帰って来たからです」
「誰があのような武器になると考えるでしょうか? 何もかも女神の祝福でございます」
イレーザは終始興奮していた。
これまで香辛料の交易は東のオリテラ帝国から西のイースラ諸王国、そこから北のプロイス王国を経由して、北方交易で輸入していた。
ところが、オリテラ帝国から直接購入するようになるとイースラ諸王国の香辛料は売れなくなった。
そこでイースラ諸王国の商人らはイレーザの交易船を襲う海賊行為をするようになってきた。
以前に乗組員の半数を失う事件もあった。
3ヶ月前も横腹にぶつけられて4番艦が中破の損害を受けてドックに入った。
海賊達が憎くて仕方ない。
そこで新造艦を6ヶ月も早く引き渡すことにした。
慣熟航行なしのぶっつけ本番だ。
船乗りらはこれで一泡吹かせると喜んでいる。
私が勝利の女神に見えるらしい。
「女神に乾杯!」
みんな、好き勝手に呼んでいるわ!
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