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10.王の棺に手を出してはいけない。
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ずどぉん!
山を崩した魔爆弾で壁ごと吹っ飛ばす。
王の棺を開けない。
そんな面倒なことはしない。
と思っていたが、中々どうして!
神殿を壊すほどの爆薬量でも柱はびくとともしない。
丈夫だった。
でも、隠し扉と思われる三か所が吹き飛んだ。
吹き飛んだが、道は現れない。
止め金具が壊れた感じで倒れ出し、中から大量の土砂が落ちてくる。
その土砂を退けると、上からさらに土砂が落ちてくる。
あぁ、なるほど!
知らない人ならこれで諦める。
大量の土砂を広場に捨てると勝手に消えてくれる。
掘っても上から崩れてきて切りない。
半日ほど続けて、やっと階段らしきモノが出てきた。
そこから一日掛けて掘り進めると階段に続く通路を見つけた。
長い階段を降りてゆく。
扉の先に息を止めるような光景が広がった。
「姉様、これは!」
「これが本物の王の墓ね」
「息が止まりそうです」
「ホントね!」
まるで謁見の間のような長い回廊が続き、その先に王の棺と思われる物が置かれている。
回廊の両脇には金銀財宝が並べられ、壁も柱も金で埋め尽くしている。
こりゃ、ゴールドラッシュになった訳だ。
マリアが合宿から帰って来たときには『夏の夢』になっていたのよ。
決して、王の棺を開けてはいけない。
「ヴァルテル、ここの財宝はどれくらいあるのかしら?」
「はっきりと申せませんが、100年は税収がなくともやってゆけるでしょう」
「財宝のみ持ち出しましょう。王の棺周辺は手を付けないように!」
「宝具が眠っている可能性があると思いますが?」
「トラップもありそうじゃない」
「確かに棺を開けると、屋根が崩れてきそうですな」
「欲を出さないのが一番よ」
後を任せて帰り支度に入った。
私が宝具箱から『清浄の杖』を取り出して装備する。
アンドラの目が『勇気の剣』に釘づけになっていた。
「ヴァルテル、王に献上する宝具を『勇気の剣』、『黄金の鎧』から『祈りの指輪』、『黄金の鎧』に変更します」
「畏まりました」
「アンドラ!」
「はい、姉様!」
私は『勇気の剣』を手に取って放り投げた。
この剣はミスリルをメッキした見た目が美しい剣だが、装備してもアビリティがわずか上昇するだけの駄目剣だった。
財宝の中にあるミスリルを溶かして純粋な剣にする方が貴重で高価な剣になる。
「そのゴミの処分を貴方に任せます」
「姉様、ありがとうございます」
「そんなゴミで喜ぶなんて」
「大切にします」
「どうでもいいわ! 帰りますよ」
「はい」
皆を残して地上に戻った。
◇◇◇
地上に出たのは四日目だ。
太陽が眩しい。
もうすでに三日も費やしてしまった。
ダンジョンを出ると倉庫を任せていた代官が駆け寄ってくる。
「お嬢様、もう無理でございます。冒険ギルドから調査させろと矢の催促が来ております」
そりゃ、そうだ!
未発見のダンジョンは宝の山だ。
それを一人占めしようする我が家は冒険ギルドにとって敵でしかない。
領地を治める領主に訴えて解放するように言ってきたらしい。
「ヴァルテル、財宝を地上に上げるまでどれほど掛かりそう?」
「そうですな、あの量ですから四日は掛かりますな」
「あと四日も無理です」
1日で調査を終えて、2日目から財宝を上げるつもりだったので予定が狂った。
しかも財宝の量が予定より多い。
代官の感触ではギルドの要請を受けた冒険者が明日でも強引にやってきそうだ。
「で、如何なさいますか?」
「オーガーとリザードマンとミノタウロスの討伐部位は100頭近くあったわね」
「ダンジョンに食われる前に確保しております」
「討伐部位を冒険ギルドに持ち込みなさい。今、ダンジョンは危険な状態である。我が兵は魔の森で鍛えた精鋭ゆえになんとか維持しているが、俄かの冒険者がダンジョンに入られては迷惑よ。改めて二日後に議論に応じてあげると言ってきなさい」
「二日後ですか?」
「ミノタウロス50頭以上も出ているのよ! 普通の冒険者では相手にならないでしょう。足を引っ張られて敵わないと怒鳴ってくればいいわ!」
「しかし、冒険ギルドは強引に!」
「それをさせないのが貴方の仕事です。それとも死んでいった者たちの遺族に、貴方の息子達は犬死でしたと、わたくしに報告させるつもりかしら?」
「いいえ、そのようなことは滅相もございません」
「ヴァルテル、財宝の何割かは諦めましょう。四日間で可能な限りの財宝を魔物の腹にしまって集積所に移しておきなさい。魔法袋の数は把握させないように!」
「畏まりました」
「何としても四日の時間を稼ぎなさい」
「しかし、どうやって?」
「それくらいは自分で考えなさい。それができなければ貴方は無能よ」
ミノタウロスの討伐部位を見せれば、準備に時間も掛かるだろう。
これで会議を二日後に送らせることができると思う。
残り二日は代官の努力次第だねぇ~!
山を崩した魔爆弾で壁ごと吹っ飛ばす。
王の棺を開けない。
そんな面倒なことはしない。
と思っていたが、中々どうして!
神殿を壊すほどの爆薬量でも柱はびくとともしない。
丈夫だった。
でも、隠し扉と思われる三か所が吹き飛んだ。
吹き飛んだが、道は現れない。
止め金具が壊れた感じで倒れ出し、中から大量の土砂が落ちてくる。
その土砂を退けると、上からさらに土砂が落ちてくる。
あぁ、なるほど!
知らない人ならこれで諦める。
大量の土砂を広場に捨てると勝手に消えてくれる。
掘っても上から崩れてきて切りない。
半日ほど続けて、やっと階段らしきモノが出てきた。
そこから一日掛けて掘り進めると階段に続く通路を見つけた。
長い階段を降りてゆく。
扉の先に息を止めるような光景が広がった。
「姉様、これは!」
「これが本物の王の墓ね」
「息が止まりそうです」
「ホントね!」
まるで謁見の間のような長い回廊が続き、その先に王の棺と思われる物が置かれている。
回廊の両脇には金銀財宝が並べられ、壁も柱も金で埋め尽くしている。
こりゃ、ゴールドラッシュになった訳だ。
マリアが合宿から帰って来たときには『夏の夢』になっていたのよ。
決して、王の棺を開けてはいけない。
「ヴァルテル、ここの財宝はどれくらいあるのかしら?」
「はっきりと申せませんが、100年は税収がなくともやってゆけるでしょう」
「財宝のみ持ち出しましょう。王の棺周辺は手を付けないように!」
「宝具が眠っている可能性があると思いますが?」
「トラップもありそうじゃない」
「確かに棺を開けると、屋根が崩れてきそうですな」
「欲を出さないのが一番よ」
後を任せて帰り支度に入った。
私が宝具箱から『清浄の杖』を取り出して装備する。
アンドラの目が『勇気の剣』に釘づけになっていた。
「ヴァルテル、王に献上する宝具を『勇気の剣』、『黄金の鎧』から『祈りの指輪』、『黄金の鎧』に変更します」
「畏まりました」
「アンドラ!」
「はい、姉様!」
私は『勇気の剣』を手に取って放り投げた。
この剣はミスリルをメッキした見た目が美しい剣だが、装備してもアビリティがわずか上昇するだけの駄目剣だった。
財宝の中にあるミスリルを溶かして純粋な剣にする方が貴重で高価な剣になる。
「そのゴミの処分を貴方に任せます」
「姉様、ありがとうございます」
「そんなゴミで喜ぶなんて」
「大切にします」
「どうでもいいわ! 帰りますよ」
「はい」
皆を残して地上に戻った。
◇◇◇
地上に出たのは四日目だ。
太陽が眩しい。
もうすでに三日も費やしてしまった。
ダンジョンを出ると倉庫を任せていた代官が駆け寄ってくる。
「お嬢様、もう無理でございます。冒険ギルドから調査させろと矢の催促が来ております」
そりゃ、そうだ!
未発見のダンジョンは宝の山だ。
それを一人占めしようする我が家は冒険ギルドにとって敵でしかない。
領地を治める領主に訴えて解放するように言ってきたらしい。
「ヴァルテル、財宝を地上に上げるまでどれほど掛かりそう?」
「そうですな、あの量ですから四日は掛かりますな」
「あと四日も無理です」
1日で調査を終えて、2日目から財宝を上げるつもりだったので予定が狂った。
しかも財宝の量が予定より多い。
代官の感触ではギルドの要請を受けた冒険者が明日でも強引にやってきそうだ。
「で、如何なさいますか?」
「オーガーとリザードマンとミノタウロスの討伐部位は100頭近くあったわね」
「ダンジョンに食われる前に確保しております」
「討伐部位を冒険ギルドに持ち込みなさい。今、ダンジョンは危険な状態である。我が兵は魔の森で鍛えた精鋭ゆえになんとか維持しているが、俄かの冒険者がダンジョンに入られては迷惑よ。改めて二日後に議論に応じてあげると言ってきなさい」
「二日後ですか?」
「ミノタウロス50頭以上も出ているのよ! 普通の冒険者では相手にならないでしょう。足を引っ張られて敵わないと怒鳴ってくればいいわ!」
「しかし、冒険ギルドは強引に!」
「それをさせないのが貴方の仕事です。それとも死んでいった者たちの遺族に、貴方の息子達は犬死でしたと、わたくしに報告させるつもりかしら?」
「いいえ、そのようなことは滅相もございません」
「ヴァルテル、財宝の何割かは諦めましょう。四日間で可能な限りの財宝を魔物の腹にしまって集積所に移しておきなさい。魔法袋の数は把握させないように!」
「畏まりました」
「何としても四日の時間を稼ぎなさい」
「しかし、どうやって?」
「それくらいは自分で考えなさい。それができなければ貴方は無能よ」
ミノタウロスの討伐部位を見せれば、準備に時間も掛かるだろう。
これで会議を二日後に送らせることができると思う。
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